反芻

にっしょん

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汗をかいた

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グラスに、溶けて小さくなった丸氷、加水され角の丸くなった優しい味わいのウイスキー。ふんわりとした薫を楽しみながら、口の中で液体を転がし、冷たさを奪ってゆく。
カウンターにグラスを置き、私に身体をひろげにっこりと微笑む彼に向き直る。腕に飛び込むように、彼の座る椅子に自分の椅子を寄せ、彼の太腿に手をついて、背を伸ばすように唇を重ねる。
下から見上げるように、唇を重ね、舌を絡ませ、何度も吸い付く。短くはねる吐息が熱い。
もっと…と、身を乗り出し椅子から落ちそうになる。彼の腕が私をしっかりと支えた。そのまま腕は背中を通りお尻を回って太腿の下から私を持ち上げる。軽々と彼の膝に乗せられ、密着するように寄せられる。
目線が高くなった私は、彼の顎を両手で支え、今度は上から唇をかぶせる。唇を割って舌がはいってくる。こじ開けられるような感覚にきゅーっと苦しくなるのを感じる。
薄目を開けて表情を見ると、彼の瞼はしっかりと閉じられていた。息をつきながら唇を離すと、ぱちっと開いた目に真っ直ぐ射抜かれてしまった。
堪らず、ずるずると彼の膝から降りる。彼に背を向け、時計を見るフリをしてベッドへ目線を飛ばす。少し項垂れた様子を見せてから、ぱっと彼を振り向くと、椅子から立ち上がり両手を私に伸ばしていた。

「ベッド行こっか」

正面から私の肩にそっと両手を乗せ、優しく押し歩く。そろそろと後退りしながら、ベッドを背に彼を見上げる。空を探る手がマットレスに触れたところで、彼の左手が私の腰を支え、右手が肩をゆっくりと、しかし強く押し、ベッドに仰向けに押し倒される。
くらい部屋の中でカウンターの灯を背に、にっこりと微笑む彼の唇が、細く息を弾ませる私の唇を塞いでいく。
ベッドの角で、覆い被さるように、右手でくしゃくしゃと髪をないまぜながら、執拗に舌を絡ませてくる。
息ができなくて苦しい…と、ふと唇が離れ急に腰を浮かされた。ころんと、ベッドの中央にうつ伏せに転がされる。

お腹の下から腕を回され、お尻を突き上げるように浮かされる。恥ずかしい、と思う間もなく首に手を当てられ、頭を持ち上げられた。ふるふると震えながら四つん這いにされている。普段と違って、強引な所作に興奮が抑えきれない。
馬乗りのような格好で後ろから覆い被さる彼が、首筋から耳にかけて唇をあててくる。唇に吸われ、舌先で舐められ、耳が熱くなる。体に沿うように撫でる手が、シャツをめくり、カップの隙間に指をねじ込んできた。優しく、でも絶え間なく舌と指で刺激され、脚に力が入ってしまう。ビクビクと、半ば痙攣するように下半身が反応してしまっている。

急に体重をかけられ、ぺしゃんと潰されてしまう。あっ、と息が出ていき、押さえつけられる感覚にうまく吸い戻せない。熱くて固い塊が、太腿に押し付けられるのを感じた。彼は身体を浮かせ私の体を楽にしてくれたが、私は興奮で苦しくて上手に息ができないままでいる。
ぴちゃぴちゃと音を立てて耳を舐められる。カップの隙間で指が絶え間なく擦られ、固くされてゆく。ホックを外さないところがいじらしい。舌先で舐められていた耳を急に吸われ、あぁっ、と音が漏れてしまう。何度も吸われ舐められを繰り返して、声が我慢できない。
胸は揉まれ擦られ、カップがもう支えることをやめている。耳にあてられていた口が首へと移動する。首を強く吸われ、彼のものにされているのが分かる。痛いほど強く吸われている最中に、ばちんっと胸の締め付けが解放された。
シャツごと首元までたくし上げられたが、脱がしてはくれない。細い指が肩から背中、腰までなぞる。お腹に回ってきた指はそのまま、何にも守られていない胸を優しく包み込んだ。さっきまで指がなぞっていた肌を、湿った舌が這ってゆく。

舌が首筋まで到達したところで、軽く上体を起こされブラジャーとシャツが床に落ちる。そのまま仰向けに転がされ、ずっと指で刺激されていた胸が唇に吸われる。自然と浮き上がる腰は両手で押さえられ、もがくにもがけないまま舌と唇が胸を、肌を欲しいままにむさぼっていく。するすると、腰を押さえる手が下着をずらしていく傍ら、薄く柔らかい皮膚の上から内臓を押すように舌が強くあてがわれた。圧迫感に脳がとろけそうになる。足先まで布が通り過ぎ、私が纏うものは何もなくなってしまった。
腰とベッドの隙間に、無造作に放り投げられていたクッションが挟み込まれる。太腿がゆっくりと両手で押され、開かされる。いじらしく、足の付け根に舌を這わされていた。彼が吸い付く表情が見たくて、自分で枕を引き寄せ頭の位置を少しだけ高くする。見下ろすと、どこか冷たい流れた目が肌の間に見えた。

割れ目に舌が触れる。思わず腰が浮き、音なのか吐息なのか自分でも判別がつかない嬌声が口からこぼれた。それでもちらりと彼に目を向ける。自らの指を口に含んだところを見てしまった。いれられる、そう思っただけで身体が芯から熱くなってくる。割れ目を上からなぞられ、ぷつっと、長い指先が入り口をあける。唇で豆を軽く吸われる。耐えられない、声が抑えられない、両手は行くあてを必死に探し、枕の裾とシーツを力一杯握っている。
中は既にどろどろで、指が何本入っているのかも分からない。けれど、動かされるたびに壁を押す刺激が頭をチカチカさせる。段々と中をかき回す刺激が強くなり、舌で豆をぐちゃぐちゃに擦られる。腰は浮きっぱなしで、足がガクガクと震える。喘ぎ声はもう抑えるということを忘れ、肩で息をしている。

堪らなくなって、彼に触れたくて、手を伸ばした時、ふっと舌の動きが優しくなり、指が私の中から出て行ってしまった。腰が落ち、足の震えは細かいものに変わり、伸ばした手はだらしなくベッドに落ちた。息を整えるように、大きく肺に空気を入れる。
表情を見ようと頭を上げようとする。舌がまた乱暴に水音をたて、長い指が容赦なく根元まで押し込まれ中をかき回した。一瞬で快感へとのまれる。頭がチカチカして言葉にならない喘ぎが荒い息とともにこぼれていく。
そんなことが何回も繰り返された。繰り返すたびにこぼれる声が大きくなり、ガクガクと震える足は見せつけるように開いていく。どんどん頭が真っ白になっていくのを感じる。

「もう、だめっ、お願い…」

何度目かに、離れていく指を追いかけるように腰をあてがう。すると、それまでより更に激しく舌で嬲られ唇で吸われ指でかき回された。波が押し寄せてくる。呻きとも喘ぎともつかないような、嬌声ともいえない、叫びのような声をもらしながら絶頂へと達した。足だけでなく下半身が痙攣している。
しかし、まだ彼は舌も手も止めてくれない。跳ね上がる腰に合わせて片手で私の体を支えながら絶え間なく刺激を続けてくる。息が止まるかと思った。どれくらいイかされつづけていたのか、ぷはっと彼が顔を離し、私の浮き上がった下半身をゆっくりとベッドに下ろす。

彼が体重をかけて、一瞬強く抱きしめられた。彼の身体に回そうとした腕を途中で掴まれてしまう。私の右手をそっと、固くなった熱の塊にあてがう。目線を合わせ、にっこりと微笑みを向けてくれる。軽くキスをして、彼の下着に手をかける。上体を起こす反動で、シャツも首を通した。お互いに纏うものがなくなり、またキスをする。
ゆっくりと仰向けに押し倒され、彼は屈んで、また唇を重ねてきた。彼の首に腕を回し舌を絡めていると、熱く濡れた固いそれが割れ目を沿うようにあてがわれた。探るように割れ目を上下に何度もなぞる。絡めていた舌を離し、唇をそっと重ねると、静かにそれの先がはいってきた。

思わず唇を離し呻きをもらしてしまう。「痛くない?」と確かめながら、少しずつ出し入れする幅を広げていく。「痛くない、気持ちいい」と、吐息まじりに返しながら、両腕を必死に彼の背中に回す。彼が一際大きく腰を引いたそのすぐ後に、奥までそれが突き破ってくる。お互いの肌が密着するほど、根元まで深く押し込まれている。

それからはもう訳がわからなかった。
激しく肉が打ちつけられ、突き上げられるたびに息が抜けていく。ぐちゃぐちゃという水音と、自分の叫ぶような喘ぎ声と、彼の荒い息が、耳に入っているような入っていないような。何度も何度もキスをしたが、動きが激しくゆっくり絡むようなキスはできない。もうどこを見てるのかも分からなかった。

腕を引っ張られ、彼が背中を支えて私の上体を起こした。対面座位の形で強く強く抱きしめられる。彼が腕を緩めたタイミングで、両手で彼の顎を持ち上げ荒く息をはく唇を、自分の唇で塞ぎ舌を絡めた。息が苦しくなって唇を離すと、また強く抱きしめた彼が耳元で囁く。

「うしろむきになれる?」

軽くキスをして、腰を浮かせ、ずっと繋がっていた体を離す。よたよたと彼に背を向け、自ら四つん這いになる。覆い被さる彼のそれを手で探り、割れ目に押し付けるように引き寄せた。お互いどろどろになっている。いれることは造作もない。今度は一気に奥まで突き抜かれた。
思わず腕が崩れる。ベッドに顔を擦り付けるように、這いつくばり、舌を出してなんとか息を吸う。先ほどまでとは違う、強い刺激に、腰から背中、頭までがビリビリとした感覚になる。突かれるたび、電流が走ったように快感が押し寄せる。

彼が指で膝をトントンと叩いた。私は突き上げていた腰を落とし、四つん這いをやめ、ベッドへ完全にうつ伏せとなった。私に覆い被さる彼は、激しく出し入れを繰り返し、荒い息を耳元に吹きかけてくる。奥にぶつかり、擦られ、また突き破られ…何度も繰り返し頭が真っ白になっていく。ただ気持ちいい、という快感と好きという愛情が麻薬のように私を溶かしていく。

「出そう…」

吐息の中に音が混ざる。いいよ、と答えるかわりに「好きだよ」と呟いた。ずるっと、私の中からそれが抜かれ、背中に熱い液体が浴びせられる。暫く後、彼が息を整えながら頬に軽くキスをして「動かないでね」と囁いた。痙攣を押さえるようゆっくりと息を吸う私の背中に、彼がティッシュを優しくなぞってくれる。
上体を起こし、ベッドのふちに座る彼に顔を近づける。優しく、味わうようにキスを交わした。さっきまで私がうつ伏せていた場所に、彼が身体を倒した。少し驚いたような顔をする。

「いっぱい汗かいたね」

そう言ってにっこりと微笑む顔が、カウンターの薄明かりに照らされていた。
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