83 / 108
ゆりかご(馬車)
しおりを挟む
「俺達を乗せた馬車は、風の如き速さでアルメルドに向かって突き進む。『パカラッパカラッパカラッ……』。振動は心地よく、まるで赤子をあやすゆりかごのよう。馬車から発せられる音も鼓膜を気持ちよく震わせるもので、睡眠の導入にはもってこいだろう。そんな快適な移動をしながら、俺達は仲睦まじく感動のフィナーレを迎えるのであった」
「…………」
「ふむ。お気に召さなかったか。じゃあ、これはどうだ? 俺達を乗せて走る神速の馬車は――」
「――どれもこれも嘘やないかい!」
馬車に設置しているベルトにしがみつきながら、隣に座っていたスズナがツッコミを入れてくる。
「いや、嘘じゃないだろ。どれもこれも本当の話で――」
「エリックは目が節穴で耳は鼓膜か何かが破れているんですの!? この馬車、今にも壊れそうですわよ!? 補強をしたときに、適当な処置で済ませたからとんでもないことになったじゃないですの!?」
メリッサが涙を流しながら俺を糾弾してくる。
……思い込みでなんとかなると思ったんだが……無理だったか。
さて、そろそろ皆さんに本当の馬車の様子をお届けしよう。はい、どうぞ。
ギギギギバギギゴゴグググギギゴゴゴゴガガガガガガッ!
馬車は子供が無邪気に飛び跳ねるように上下左右に激しく揺れ、どこからともなく聞こえてくる音は断末魔。いやー、地獄ですな。
「あのときはなんとかなると思ったんだ! というか、今まではあの補強でなんとかなっていんたんだ!」
「具体的にはどれくらいもっていたんですの!?」
「二日だ!」
「それはもったって言わないですわぁあああ!」
馬車の音がうるさすぎて大声を出す羽目になる。
なんか、この馬車にずっと乗っていたら俺達の絆に亀裂が入りそう。あっ、馬車にも亀裂が入っているからお互い様だな、ハハッ!
「エリック様! このままだと本当に馬車が壊れてしまいます! 今すぐどこかに止めたいのですが!」
御者をしていたシエナが、俺達の方を振り返りながら意見具申をしてくる。
俺はささっと地図を広げて現在位置を確認し、馬車を止めても良いところかどうかを……あー……今俺達がいる場所は……ヤバいですね!
「馬車の速度を落としてなんとか持ちこたえさせてくれ! ここで止まって修理するのは不味い! 今、俺たちがいるのは強いモンスターが頻出する場所らしい!」
「わ、分かりました!」
シエナとこの馬車に魔術を掛けたメリッサが協力してスピードを落とし、なんとか安全なところまでは馬車がもつように奮闘する。
「エリック! この世界の馬車ってこんなにボロボロなんかいな!? というか、さっきまで走っていた速度って高速道路を走っている自動車並やで!」
激しく振動する馬車に振り落とされないようにしっかりとベルトにしがみついていると、スズナが何故かワクワクしたような顔をしながら話しかけてきた。
……いつ壊れるか分からないというスリルを楽しんでいるのかな? 大した物好きだな。
「いや! ちゃんとしている馬車だぞ! ただ、さっきも言ったが、この馬車は前に一度修理してな! そこでの処置がまずかったらしい! あとコウソクドウロとかジドウシャってなんだ!?」
「この馬車がおかしいだけかいな! でも、遊園地のアトラクションみたいで楽しいわ! えーっと、高速道路っていうのはバカみたいに広くて速度が出せる道や! で、自動車っていうのは、この世界の馬車みたいなもんやで! 馬はいらんくて、馬車本体のみで走っているみたいなイメージや!」
「……すげえじゃねえか!」
雑談に花が咲く。
いやー、『話している場合じゃねぇ!』って感じなんだけど、今は特にすることがないしな。それに、ドラゴンと会敵したときもそうだったが、緊迫する状況になったら喋って適度に緊張を解すのが良いと思うのだ。
そんな感じで、怒鳴り声のような大きさの声を出しながら、スズナとおしゃべりをして……この危機的状況を乗り越えた。
まあ、シエナとメリッサの頑張りのおかげだけどね!
「…………」
「ふむ。お気に召さなかったか。じゃあ、これはどうだ? 俺達を乗せて走る神速の馬車は――」
「――どれもこれも嘘やないかい!」
馬車に設置しているベルトにしがみつきながら、隣に座っていたスズナがツッコミを入れてくる。
「いや、嘘じゃないだろ。どれもこれも本当の話で――」
「エリックは目が節穴で耳は鼓膜か何かが破れているんですの!? この馬車、今にも壊れそうですわよ!? 補強をしたときに、適当な処置で済ませたからとんでもないことになったじゃないですの!?」
メリッサが涙を流しながら俺を糾弾してくる。
……思い込みでなんとかなると思ったんだが……無理だったか。
さて、そろそろ皆さんに本当の馬車の様子をお届けしよう。はい、どうぞ。
ギギギギバギギゴゴグググギギゴゴゴゴガガガガガガッ!
馬車は子供が無邪気に飛び跳ねるように上下左右に激しく揺れ、どこからともなく聞こえてくる音は断末魔。いやー、地獄ですな。
「あのときはなんとかなると思ったんだ! というか、今まではあの補強でなんとかなっていんたんだ!」
「具体的にはどれくらいもっていたんですの!?」
「二日だ!」
「それはもったって言わないですわぁあああ!」
馬車の音がうるさすぎて大声を出す羽目になる。
なんか、この馬車にずっと乗っていたら俺達の絆に亀裂が入りそう。あっ、馬車にも亀裂が入っているからお互い様だな、ハハッ!
「エリック様! このままだと本当に馬車が壊れてしまいます! 今すぐどこかに止めたいのですが!」
御者をしていたシエナが、俺達の方を振り返りながら意見具申をしてくる。
俺はささっと地図を広げて現在位置を確認し、馬車を止めても良いところかどうかを……あー……今俺達がいる場所は……ヤバいですね!
「馬車の速度を落としてなんとか持ちこたえさせてくれ! ここで止まって修理するのは不味い! 今、俺たちがいるのは強いモンスターが頻出する場所らしい!」
「わ、分かりました!」
シエナとこの馬車に魔術を掛けたメリッサが協力してスピードを落とし、なんとか安全なところまでは馬車がもつように奮闘する。
「エリック! この世界の馬車ってこんなにボロボロなんかいな!? というか、さっきまで走っていた速度って高速道路を走っている自動車並やで!」
激しく振動する馬車に振り落とされないようにしっかりとベルトにしがみついていると、スズナが何故かワクワクしたような顔をしながら話しかけてきた。
……いつ壊れるか分からないというスリルを楽しんでいるのかな? 大した物好きだな。
「いや! ちゃんとしている馬車だぞ! ただ、さっきも言ったが、この馬車は前に一度修理してな! そこでの処置がまずかったらしい! あとコウソクドウロとかジドウシャってなんだ!?」
「この馬車がおかしいだけかいな! でも、遊園地のアトラクションみたいで楽しいわ! えーっと、高速道路っていうのはバカみたいに広くて速度が出せる道や! で、自動車っていうのは、この世界の馬車みたいなもんやで! 馬はいらんくて、馬車本体のみで走っているみたいなイメージや!」
「……すげえじゃねえか!」
雑談に花が咲く。
いやー、『話している場合じゃねぇ!』って感じなんだけど、今は特にすることがないしな。それに、ドラゴンと会敵したときもそうだったが、緊迫する状況になったら喋って適度に緊張を解すのが良いと思うのだ。
そんな感じで、怒鳴り声のような大きさの声を出しながら、スズナとおしゃべりをして……この危機的状況を乗り越えた。
まあ、シエナとメリッサの頑張りのおかげだけどね!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる