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二人でお料理
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一時間後。危険地帯を抜けた俺達はすぐに壊れかけの馬車を停め、ひとまずそこから降りることにした。
「いやー、ひどい目に会ったな。でも、何事も無くてよかったよかった!」
俺は魂が抜けたようになっているシエナとメリッサに声をかける。
え? お気楽過ぎる? こういうときは意図的にテンションを上げるのが重要だと思うのだ。
「……どちらかというと……ひどい目に会わされた、というのが正しいと思いますわ……。冗談抜きで、馬車の移動中に死ぬかと……」
「エリック様。次からは私達が修理しますのでこの馬車にはお手を触れないようお願いしますね」
「…………はい」
シエナに釘を刺された俺は一瞬でテンションアゲアゲからテンションサゲサゲへとチェンジし、しょんぼりする。
まあ……これは俺に全責任があるからな。何も言えませんよ。
その後。今日はここで野営をすることになった。まあ、日もそろそろ暮れそうだったし、そもそも馬車が壊れかけていて動かせそうになかったからな。
『馬車に触れるな』と言われた俺は、修理はシエナとメリッサに任せることにし、残ったスズナと一緒にテント張った後、晩御飯の準備に取り掛かることにする。
「……なんというか、いきなり白金伝説の無人島金無し生活みたいな感じやな。もしくはゲームのモンスター狩人みたいな。どちらにしてもウチ、ワクワクしてきたで!」
「……ふむ。スズナが何を言っているか分からんが、喜んでくれているなら良かったよ」
聞き慣れない単語を軽く聞き流して、俺はまずは焚き木に火をつける。
「《ファイアー》!」
瞬間。前に突き出していた左手から小さな火の玉が出現し……『ボアッ!』という音と共に一瞬で木に火がつく。
「なんかえらい可愛らしい火やな。ウチのイメージやともっと大きな火の玉が出てくる感じやったわ」
スズナは謎のがっかり感を出してくる。
「……いや、木に火をつけるだけだぞ? 攻撃魔術みたいな威力を出したら一瞬で炭になる。何事も加減というのが必要なんだよ」
今も時たま加減を間違っている自分のことは棚に上げているが……まあ、『そうなんやな』と彼女はうなずいているし、これでいいのだ。
で、火を付け終わった俺達は、次に適当な場所で食材を切ったり味付けをする。
トントントン……トントントン……
「……ほう。スズナって結構料理できるんだな。手際よく野菜を切っているし、なんというか、やり慣れた感じがするぞ」
「お、せやろせやろ? この世界に来るまではウチ大学生やったんやけどな? 大学が実家から遠くて下宿で暮らしていたんや。やから、ご飯とか自分で作らないといけなくってなぁ……最初は面倒くさかったんやけど、徐々にハマっていって……今では料理大好き人間やで!」
「なるほどなぁ……。必要に迫られて仕方無しにやっていたけど、いつの間にかハマっていくっていうのは結構ある話だもんな。俺もそれで料理が上手くなった口だからよく分かる」
「なんや、エリックも一緒かいな! なんかウチら、結構気が合うとちゃう? これから上手くやっていけそうやな!」
スズナが嬉しそうに背中をバンバンと叩いてくる。
俺としても、スズナと話すのは楽しい。時折意味の分からない単語を出してくるから訳が分からなくなることもあるが、それはそれで楽しいしな。今のところ、ほとんど聞き流しているが……もう少し時間がある時にじっくり質問してみたいところだ。
そんな感じでおしゃべりしながら料理をして……あっという間に今日の晩御飯が完成した。
「うん。なかなかいい出来じゃないか? スズナも一緒に作ってくれてありがとうな。おかげでかなり早く料理が完成したよ」
「ええよええよ。ウチとしてもエリックと一緒で楽しかったし! じゃあ、あとはウチがいい感じのところに料理を運んだりしているから、エリックはシエナさんたちを呼んできてや!」
「おう!」
そういうわけで、俺はシエナとメリッサを呼びに行くことになった。
◇◇◇
「シエナー、メリッサ―、ご飯できたぞー」
馬車を停めているところまで行って、修理作業を行っている彼女たちに声を掛ける。
「……あら。予想より早いですわね。分かりましたわ。えーっと、トンカチをここに置いて……はい、わたくしのほうはいつでも行けますわ! シエナさんはどうですの?」
「私の方も大丈夫です。ではエリック様。行きましょうか」
色々と作業をして汚れている彼女たちはそのまま食事をするところまで行こうとしていたのだが……流石にそれは不味いだろうということで呼び止める。
「ちょっと待った。お前達、顔とか結構油汚れがついているぞ? えーっとハンカチハンカチ……」
ズボンのポケットをまさぐってハンカチを取り出し、二人の顔をきれいに拭く。
「俺とスズナしかいないとはいえ、身だしなみはきちんとすること! それに、こんなに綺麗な顔を汚したままとかもったいないぞ? ……うん、よし! これでいいか。あー、あと手も汚れているよな。ちょっと待っててくれ」
二人の顔についていた油汚れをある程度取り終えた俺は、馬車に戻ってタオルを取り出し、水でそれを濡らして……彼女たちに渡す。
「ほら、これで手を綺麗にして。そんな汚れた手でご飯を食べたら腹を壊すかもしれないだろ? ……よしよし! きれいになったな。……ほいっ! じゃあ行くか!」
二人から汚れたタオルを受け取り、それを馬車の適当な位置へと放り込んでいざ食事場だ! と思ったのだが……シエナとメリッサが俺の服の袖を掴んできて前に進めなくなる。
「いやー、ひどい目に会ったな。でも、何事も無くてよかったよかった!」
俺は魂が抜けたようになっているシエナとメリッサに声をかける。
え? お気楽過ぎる? こういうときは意図的にテンションを上げるのが重要だと思うのだ。
「……どちらかというと……ひどい目に会わされた、というのが正しいと思いますわ……。冗談抜きで、馬車の移動中に死ぬかと……」
「エリック様。次からは私達が修理しますのでこの馬車にはお手を触れないようお願いしますね」
「…………はい」
シエナに釘を刺された俺は一瞬でテンションアゲアゲからテンションサゲサゲへとチェンジし、しょんぼりする。
まあ……これは俺に全責任があるからな。何も言えませんよ。
その後。今日はここで野営をすることになった。まあ、日もそろそろ暮れそうだったし、そもそも馬車が壊れかけていて動かせそうになかったからな。
『馬車に触れるな』と言われた俺は、修理はシエナとメリッサに任せることにし、残ったスズナと一緒にテント張った後、晩御飯の準備に取り掛かることにする。
「……なんというか、いきなり白金伝説の無人島金無し生活みたいな感じやな。もしくはゲームのモンスター狩人みたいな。どちらにしてもウチ、ワクワクしてきたで!」
「……ふむ。スズナが何を言っているか分からんが、喜んでくれているなら良かったよ」
聞き慣れない単語を軽く聞き流して、俺はまずは焚き木に火をつける。
「《ファイアー》!」
瞬間。前に突き出していた左手から小さな火の玉が出現し……『ボアッ!』という音と共に一瞬で木に火がつく。
「なんかえらい可愛らしい火やな。ウチのイメージやともっと大きな火の玉が出てくる感じやったわ」
スズナは謎のがっかり感を出してくる。
「……いや、木に火をつけるだけだぞ? 攻撃魔術みたいな威力を出したら一瞬で炭になる。何事も加減というのが必要なんだよ」
今も時たま加減を間違っている自分のことは棚に上げているが……まあ、『そうなんやな』と彼女はうなずいているし、これでいいのだ。
で、火を付け終わった俺達は、次に適当な場所で食材を切ったり味付けをする。
トントントン……トントントン……
「……ほう。スズナって結構料理できるんだな。手際よく野菜を切っているし、なんというか、やり慣れた感じがするぞ」
「お、せやろせやろ? この世界に来るまではウチ大学生やったんやけどな? 大学が実家から遠くて下宿で暮らしていたんや。やから、ご飯とか自分で作らないといけなくってなぁ……最初は面倒くさかったんやけど、徐々にハマっていって……今では料理大好き人間やで!」
「なるほどなぁ……。必要に迫られて仕方無しにやっていたけど、いつの間にかハマっていくっていうのは結構ある話だもんな。俺もそれで料理が上手くなった口だからよく分かる」
「なんや、エリックも一緒かいな! なんかウチら、結構気が合うとちゃう? これから上手くやっていけそうやな!」
スズナが嬉しそうに背中をバンバンと叩いてくる。
俺としても、スズナと話すのは楽しい。時折意味の分からない単語を出してくるから訳が分からなくなることもあるが、それはそれで楽しいしな。今のところ、ほとんど聞き流しているが……もう少し時間がある時にじっくり質問してみたいところだ。
そんな感じでおしゃべりしながら料理をして……あっという間に今日の晩御飯が完成した。
「うん。なかなかいい出来じゃないか? スズナも一緒に作ってくれてありがとうな。おかげでかなり早く料理が完成したよ」
「ええよええよ。ウチとしてもエリックと一緒で楽しかったし! じゃあ、あとはウチがいい感じのところに料理を運んだりしているから、エリックはシエナさんたちを呼んできてや!」
「おう!」
そういうわけで、俺はシエナとメリッサを呼びに行くことになった。
◇◇◇
「シエナー、メリッサ―、ご飯できたぞー」
馬車を停めているところまで行って、修理作業を行っている彼女たちに声を掛ける。
「……あら。予想より早いですわね。分かりましたわ。えーっと、トンカチをここに置いて……はい、わたくしのほうはいつでも行けますわ! シエナさんはどうですの?」
「私の方も大丈夫です。ではエリック様。行きましょうか」
色々と作業をして汚れている彼女たちはそのまま食事をするところまで行こうとしていたのだが……流石にそれは不味いだろうということで呼び止める。
「ちょっと待った。お前達、顔とか結構油汚れがついているぞ? えーっとハンカチハンカチ……」
ズボンのポケットをまさぐってハンカチを取り出し、二人の顔をきれいに拭く。
「俺とスズナしかいないとはいえ、身だしなみはきちんとすること! それに、こんなに綺麗な顔を汚したままとかもったいないぞ? ……うん、よし! これでいいか。あー、あと手も汚れているよな。ちょっと待っててくれ」
二人の顔についていた油汚れをある程度取り終えた俺は、馬車に戻ってタオルを取り出し、水でそれを濡らして……彼女たちに渡す。
「ほら、これで手を綺麗にして。そんな汚れた手でご飯を食べたら腹を壊すかもしれないだろ? ……よしよし! きれいになったな。……ほいっ! じゃあ行くか!」
二人から汚れたタオルを受け取り、それを馬車の適当な位置へと放り込んでいざ食事場だ! と思ったのだが……シエナとメリッサが俺の服の袖を掴んできて前に進めなくなる。
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