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8・サブカル女子なので当然一眼レフを持つ(なお腕前は)
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小さめとはいえ、ホールケーキを四等分、そのうちの三つを切り分け差し出された。
「雅ちゃん、プレートの部分はあげるわよ?」
「ただのチョコじゃん」
そう言いながら雅は「どうも」と自分のお祝いププレートを差されたケーキを受け取る。
「さあ、じゃあ頂きましょう」
いただきまーす、と三人は手を合わせ、ケーキにかぶりつく。
「あっ、おいしい」
芙綺が思わず声を上げる。
「まあ、ふつーに美味しいよね」
「普通だなんて。クリーム、凄くおいしい!」
ケーキなんて、ふわふわのクリームしか想像していなかったが、このクリームはとてもどっしりしている。
「あら、芙綺ちゃんはバタークリームが好きなのかしら」
「バター?これが?」
どう見ても普通のクリームのケーキにしか見えないのだが。
「このケーキ屋さんはね、老舗なの。で、昔からあるケーキをちゃんと作っている所なのね。美少女ちゃんは、ケーキあまり食べないのかしら?」
「滅多にない、っていうか。うちは和菓子が多くて」
「そうなの。じゃあ、こっちにいる間は、このお店のケーキを食べたら良いわよ。バタークリームのケーキはどれですか、って聞いたら店員さんが教えてくれるから」
「そうなんですね」
「美少女、ケーキとか食べないからその体型なんかな」
雅の問いに、芙綺は首を横に振った。
「単純にサッカーしてるからよ。サッカー大好きだもん」
芙綺は元々、地元のサッカークラブのユースに所属していた。
だが、親の反対などがあり、三年前、小学校を卒業すると同時に辞めさせられた。
「そういやサッカー選手のコブラがなんとかって言ってたね」
「イブラね。イブラヒモビッチ。メチャカッコイイの」
「ほう。どんなの?」
芙綺がスマホを取り出すと、壁紙はしっかりその人だった。
「髭のおじさんじゃん。しかもなんかいかつい。本当にサッカー選手?」
「格闘家みたいな体してるよ。見て見て」
そういって動画サイトを開き、お気に入りのゴール集を見せる。
「やっぱ格闘家じゃん」
「サッカー選手だって。確かにめちゃめちゃ強いけど」
(サッカーかあ。そういや、推しもサッカー好きだったな)
雅はふと、推しの事を思い出したのだった。
「でも、ウィステリアってサッカー部ないんでしょ?部活はどうするの?」
雅の問いに、芙綺は頷いた。
「学院長が考えてくれてる。この地域にサッカーチームあるでしょ?そこのユースと一緒に練習できるかもしれなくって」
「ああ、ケートスね!へえ、本格的!」
ケートスはこの地域にある、現在二部リーグに所属する『長州ケートス』というクラブだ。
「ケートスは、女子のチームをそろそろ作りたいって考えてたみたいなのね。丁度今年から、試験的に開始するらしいから、そっちに通うかも」
「ケートスなら、報国院の子が沢山居るわね。報国院もサッカー部はないのよ」
雅の母の言葉に、そうなんだ、と雅と芙綺は驚いた。
「でもそうかも。報国院って基本、体育会系じゃないもんね。むしろウィステリアの方がそれっぽい」
男子校である報国院は、実は理文系であって、体育会系はそこまで盛んじゃない。
むしろ女子校であるウィステリアの方が力を入れている。
スポーツ専用のグラウンドがいくつもあるし、プールもある。
「雅は部活は文化部?」
芙綺の問いに「そのつもり」と雅は答えた。
「っていうか、ウィステリアって文化部の数が少ない分、逆に予算はつぎ込んでくれてるんだって」
「え、なんで?数が少ないのに?」
すると雅の母が答えた。
「数が少ないから、少数精鋭を育てるっていう方針なのよ。雅ちゃん、ウィステリアの旧館は見た?レンガ造りの、お洒落な建物」
「見ました!凄くお洒落で素敵でした!」
思わず桜とあわせて写真をとってしまったくらいに、素敵なレンガ造りの建物があった。
そこで芙綺は雅と出逢ったのだ。
「あの建物が旧館ね。ずっと昔、女学校だった頃に建てられてずっと大事に守られてきたのよ。戦時中は軍が使ったり。学校が大きくなってからは校舎として使われていなかったんだけど、いまは建物全部が文化部専用の部室なのよ」
「そうなんですか」
なんだか羨ましいな、と芙綺は思った。
「いいなー、あんな素敵な建物に入れるなら、あたしも文化部に入りたくなっちゃう」
「入ったら良いわよ?時々しか活動していない部活ってあるもの。探してみたら良いわ」
部活なんて全く考えていなかったが、それも面白そうだなと芙綺は思った。
「ねえ雅、雅は何のクラブに入るの?」
「ワイ?映像研究部」
「なんかごつい名前ね」
「俗にいう写真部とか、アニメとかの映像を扱ったりする部なのよ。この子、カメラが好きだから。入学のお祝いもカメラだったのよ」
「へえ、なんかカッコいい趣味だね」
芙綺に褒められるも、雅は「ハハ……」と微妙な笑いで誤魔化してしまう。
(言えぬ。推しを撮りまくりたくて写真をやっているなど言えぬ)
「たいした技術もないのにスマヌ」
「なんで謝ってるの?」
「なんとなく」
変なの、と芙綺は笑った。
「雅ちゃん、プレートの部分はあげるわよ?」
「ただのチョコじゃん」
そう言いながら雅は「どうも」と自分のお祝いププレートを差されたケーキを受け取る。
「さあ、じゃあ頂きましょう」
いただきまーす、と三人は手を合わせ、ケーキにかぶりつく。
「あっ、おいしい」
芙綺が思わず声を上げる。
「まあ、ふつーに美味しいよね」
「普通だなんて。クリーム、凄くおいしい!」
ケーキなんて、ふわふわのクリームしか想像していなかったが、このクリームはとてもどっしりしている。
「あら、芙綺ちゃんはバタークリームが好きなのかしら」
「バター?これが?」
どう見ても普通のクリームのケーキにしか見えないのだが。
「このケーキ屋さんはね、老舗なの。で、昔からあるケーキをちゃんと作っている所なのね。美少女ちゃんは、ケーキあまり食べないのかしら?」
「滅多にない、っていうか。うちは和菓子が多くて」
「そうなの。じゃあ、こっちにいる間は、このお店のケーキを食べたら良いわよ。バタークリームのケーキはどれですか、って聞いたら店員さんが教えてくれるから」
「そうなんですね」
「美少女、ケーキとか食べないからその体型なんかな」
雅の問いに、芙綺は首を横に振った。
「単純にサッカーしてるからよ。サッカー大好きだもん」
芙綺は元々、地元のサッカークラブのユースに所属していた。
だが、親の反対などがあり、三年前、小学校を卒業すると同時に辞めさせられた。
「そういやサッカー選手のコブラがなんとかって言ってたね」
「イブラね。イブラヒモビッチ。メチャカッコイイの」
「ほう。どんなの?」
芙綺がスマホを取り出すと、壁紙はしっかりその人だった。
「髭のおじさんじゃん。しかもなんかいかつい。本当にサッカー選手?」
「格闘家みたいな体してるよ。見て見て」
そういって動画サイトを開き、お気に入りのゴール集を見せる。
「やっぱ格闘家じゃん」
「サッカー選手だって。確かにめちゃめちゃ強いけど」
(サッカーかあ。そういや、推しもサッカー好きだったな)
雅はふと、推しの事を思い出したのだった。
「でも、ウィステリアってサッカー部ないんでしょ?部活はどうするの?」
雅の問いに、芙綺は頷いた。
「学院長が考えてくれてる。この地域にサッカーチームあるでしょ?そこのユースと一緒に練習できるかもしれなくって」
「ああ、ケートスね!へえ、本格的!」
ケートスはこの地域にある、現在二部リーグに所属する『長州ケートス』というクラブだ。
「ケートスは、女子のチームをそろそろ作りたいって考えてたみたいなのね。丁度今年から、試験的に開始するらしいから、そっちに通うかも」
「ケートスなら、報国院の子が沢山居るわね。報国院もサッカー部はないのよ」
雅の母の言葉に、そうなんだ、と雅と芙綺は驚いた。
「でもそうかも。報国院って基本、体育会系じゃないもんね。むしろウィステリアの方がそれっぽい」
男子校である報国院は、実は理文系であって、体育会系はそこまで盛んじゃない。
むしろ女子校であるウィステリアの方が力を入れている。
スポーツ専用のグラウンドがいくつもあるし、プールもある。
「雅は部活は文化部?」
芙綺の問いに「そのつもり」と雅は答えた。
「っていうか、ウィステリアって文化部の数が少ない分、逆に予算はつぎ込んでくれてるんだって」
「え、なんで?数が少ないのに?」
すると雅の母が答えた。
「数が少ないから、少数精鋭を育てるっていう方針なのよ。雅ちゃん、ウィステリアの旧館は見た?レンガ造りの、お洒落な建物」
「見ました!凄くお洒落で素敵でした!」
思わず桜とあわせて写真をとってしまったくらいに、素敵なレンガ造りの建物があった。
そこで芙綺は雅と出逢ったのだ。
「あの建物が旧館ね。ずっと昔、女学校だった頃に建てられてずっと大事に守られてきたのよ。戦時中は軍が使ったり。学校が大きくなってからは校舎として使われていなかったんだけど、いまは建物全部が文化部専用の部室なのよ」
「そうなんですか」
なんだか羨ましいな、と芙綺は思った。
「いいなー、あんな素敵な建物に入れるなら、あたしも文化部に入りたくなっちゃう」
「入ったら良いわよ?時々しか活動していない部活ってあるもの。探してみたら良いわ」
部活なんて全く考えていなかったが、それも面白そうだなと芙綺は思った。
「ねえ雅、雅は何のクラブに入るの?」
「ワイ?映像研究部」
「なんかごつい名前ね」
「俗にいう写真部とか、アニメとかの映像を扱ったりする部なのよ。この子、カメラが好きだから。入学のお祝いもカメラだったのよ」
「へえ、なんかカッコいい趣味だね」
芙綺に褒められるも、雅は「ハハ……」と微妙な笑いで誤魔化してしまう。
(言えぬ。推しを撮りまくりたくて写真をやっているなど言えぬ)
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「なんで謝ってるの?」
「なんとなく」
変なの、と芙綺は笑った。
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