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10・男子がジュリエットって、どういうことだってばよ
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『ロミオ、どうして君はロミオなんだ、家との縁を切ってその名前をどうか棄てて。それがもし無理なら、オレを愛するとだけ、誓って。君が誓えば、もうオレはキャピュレットではない』
ロミオ―――――と、御堀に言っている男の子。
そう、男の子だ。
眼鏡をかけてて髪がくるんとしてて、可愛い雰囲気の『男の子』のジュリエット。
(い、い、い、い、幾先輩だあ―――――ッ!!!!!)
まさかの。
芙綺が憧れて大好きで素敵で、本当に心から尊敬している幾先輩こと、乃木幾久くんが、まさかの『ジュリエット』役で画面にうつっているではないか。
叫ばなかったあたしえらい。
うん、すごくエライ。
ただ、芙綺の動揺は明らかだったらしく、傍に居た同じ寮の先輩が声をかけた。
「あ、小早川さん、いまね、面白いの見てるの!」
「な、な、な、な、」
なんですかあれは、と尋ねるにはやはり無理で、あまりの動揺を隠すのだけに必死だ。
てっきり、男の子の舞台に驚いていると勘違いしてくれた先輩は、芙綺に教えてくれた。
「ああこれでしょ?あのね、報国院って男子校あるじゃん、うちと姉妹校の。あそこ毎年、すっごく面白い舞台を桜柳祭っていう文化祭でやるんだけど、そのDVDなの。一年生に丁度見せてたんだけど、みんなハマってくれてさ」
「あっ、小早川さんお帰り!ね、途中からでも一緒に見よ!面白いよ!」
自分から一言も言っていないので、画面に映っているロミオこと御堀誉と、男子ジュリエットこと、乃木幾久が芙綺と知り合いなんて当然誰も知らない。
「え、ええと……あの、これ友達の家から差し入れで」
とりあえずそれだけ言ってお菓子を渡すと、先輩達が大喜びで受け取った。
「やばーい!お菓子おいしそー!みんなで分けよ!」
「沢山ある!嬉しい!」
「ね、小早川さんも前の方で見たら?」
「あ……あたしはここでいいです……」
表情をひくつかせながらそう答えるのがいっぱいいっぱいな芙綺だった。
その後、寮での夕食となり、レクリエーションもあったのだが、すっかり先輩、後輩は打ち解けたらしい。
ロミジュリの舞台の映像がその話題をかっさらったせいか、皆、ロミオ君がいいとか、ジュリエット君が可愛いとか、いやいや、やっぱあの先輩のほうが、とイケメンに盛り上がっていた。
(確かにイケメンが多かったけどさ)
舞台に出るからやっぱりそこそこイケメンが選ばれたのだろうか、確かに見栄えのいい男の子が多かった。
しかしそんな事より、芙綺にとって一大事は乃木幾久だ。
(幾先輩がジュリエットなんて!!!)
桜柳祭は十一月の文化の日の前後で行われるらしい。
と言う事は、その頃はまだ芙綺はあこがれの先輩である幾久とは出逢っていない。
それにしたって、あれから話もしていないので、そりゃ知りようもないのだけれど。
「小早川さんはロミジュリ知らなかったんだ」
「え、はい、全く」
先輩の問いにひきつりながら笑顔を見せた。
「ねえ、ロミジュリのどっち推し?やっぱロミオ君、カッコいいよね!イケメン過ぎてやばい」
「えー、ジュリエット君のが可愛いじゃん。あたし絶対ジュリエット推しだなー」
「待て待て、絶対久坂神父じゃん。あの長髪にストイックすぎる神父の衣装とかヤバかったじゃん」
「それを言うならあたしは高杉くん推しー」
楽しそうにきゃあきゃあ賑やかな先輩達になんとなく合わせながらも、どうも御堀は凄い人気らしいことは理解できた。
「あの、ほ……ロミオ君ってやっぱ凄いんですか?」
芙綺が尋ねると、興味を持ったのかと先輩が食いついて来た。
「そりゃもう!報国院の首席で!なによりかっこよくて!高身長で!イケメンで!女の子にも優しくて文句なし!」
思わず『ハッ』と笑いが出そうになったが、とにかくここでの御堀の評価はそうなっているらしい。
(我慢我慢。我慢よあたし)
いくら強めに突っ込みたくても、ここで御堀と幼馴染とバレる方がヤバそうな気がする。
「だってロミオ様、ファンクラブもあるし」
「ファンクラブ……」
「そう!あたし入ってるもん!」
ほら、と見せられ、先輩がアプリを立ち上げた。
アプリからはロミオ君こと、御堀誉くんの情報や写真、日々のコメントやファンサなどもあるらしい。
(はぁ―――――呆れてものも言えねえわ)
「あたしインスタはフォローしてる!時々、ライブやってくれるし」
なんだこりゃ。
アイドル扱いかよ、と思ったが、実際変わりはないらしい。
そもそも女子校で男子との接点がないウィステリアの女生徒らにとって、報国院という姉妹校の男子は癒しになっているらしい。
「本来はね、ウチの学校も、報国院も、男女交際禁止なんだよ。でも、実際は、お互いの学校で付き合うなら暗黙の了解があるんだ」
それは初耳だ、と芙綺は思ったが、別に彼氏をつくりに来たわけじゃないので正直どうでもいいな、と思った。
それよりも今は、一刻も早く確認したいことがあった。
「先輩、あたしちょっと友達と約束が」
「そうなん?じゃあ後でね」
先輩がにこやかにそう答えてくれたのだが、芙綺は慌てて寮の部屋へ戻る。
よし、誰もまだ帰って来てないな。
芙綺は年の為に窓際へ移動し、すぐさまメッセージを打つ。
返事はすぐあった。すぐに確認したかったから音声で、と伝えていたので呼び出しのベルが鳴った。
『やあ芙綺ちゃん、ウィステリア入学おめでとう』
誉だ。
芙綺は唸るような声で言った。
「ちょっと誉君!幾先輩がジュリエットってどーゆーことなの?あんた幾先輩になにさせてんのよ!」
携帯の向こうからは、あ、言ってなかったっけ?としゃあしゃあと笑う御堀誉の声が聞こえた。
ロミオ―――――と、御堀に言っている男の子。
そう、男の子だ。
眼鏡をかけてて髪がくるんとしてて、可愛い雰囲気の『男の子』のジュリエット。
(い、い、い、い、幾先輩だあ―――――ッ!!!!!)
まさかの。
芙綺が憧れて大好きで素敵で、本当に心から尊敬している幾先輩こと、乃木幾久くんが、まさかの『ジュリエット』役で画面にうつっているではないか。
叫ばなかったあたしえらい。
うん、すごくエライ。
ただ、芙綺の動揺は明らかだったらしく、傍に居た同じ寮の先輩が声をかけた。
「あ、小早川さん、いまね、面白いの見てるの!」
「な、な、な、な、」
なんですかあれは、と尋ねるにはやはり無理で、あまりの動揺を隠すのだけに必死だ。
てっきり、男の子の舞台に驚いていると勘違いしてくれた先輩は、芙綺に教えてくれた。
「ああこれでしょ?あのね、報国院って男子校あるじゃん、うちと姉妹校の。あそこ毎年、すっごく面白い舞台を桜柳祭っていう文化祭でやるんだけど、そのDVDなの。一年生に丁度見せてたんだけど、みんなハマってくれてさ」
「あっ、小早川さんお帰り!ね、途中からでも一緒に見よ!面白いよ!」
自分から一言も言っていないので、画面に映っているロミオこと御堀誉と、男子ジュリエットこと、乃木幾久が芙綺と知り合いなんて当然誰も知らない。
「え、ええと……あの、これ友達の家から差し入れで」
とりあえずそれだけ言ってお菓子を渡すと、先輩達が大喜びで受け取った。
「やばーい!お菓子おいしそー!みんなで分けよ!」
「沢山ある!嬉しい!」
「ね、小早川さんも前の方で見たら?」
「あ……あたしはここでいいです……」
表情をひくつかせながらそう答えるのがいっぱいいっぱいな芙綺だった。
その後、寮での夕食となり、レクリエーションもあったのだが、すっかり先輩、後輩は打ち解けたらしい。
ロミジュリの舞台の映像がその話題をかっさらったせいか、皆、ロミオ君がいいとか、ジュリエット君が可愛いとか、いやいや、やっぱあの先輩のほうが、とイケメンに盛り上がっていた。
(確かにイケメンが多かったけどさ)
舞台に出るからやっぱりそこそこイケメンが選ばれたのだろうか、確かに見栄えのいい男の子が多かった。
しかしそんな事より、芙綺にとって一大事は乃木幾久だ。
(幾先輩がジュリエットなんて!!!)
桜柳祭は十一月の文化の日の前後で行われるらしい。
と言う事は、その頃はまだ芙綺はあこがれの先輩である幾久とは出逢っていない。
それにしたって、あれから話もしていないので、そりゃ知りようもないのだけれど。
「小早川さんはロミジュリ知らなかったんだ」
「え、はい、全く」
先輩の問いにひきつりながら笑顔を見せた。
「ねえ、ロミジュリのどっち推し?やっぱロミオ君、カッコいいよね!イケメン過ぎてやばい」
「えー、ジュリエット君のが可愛いじゃん。あたし絶対ジュリエット推しだなー」
「待て待て、絶対久坂神父じゃん。あの長髪にストイックすぎる神父の衣装とかヤバかったじゃん」
「それを言うならあたしは高杉くん推しー」
楽しそうにきゃあきゃあ賑やかな先輩達になんとなく合わせながらも、どうも御堀は凄い人気らしいことは理解できた。
「あの、ほ……ロミオ君ってやっぱ凄いんですか?」
芙綺が尋ねると、興味を持ったのかと先輩が食いついて来た。
「そりゃもう!報国院の首席で!なによりかっこよくて!高身長で!イケメンで!女の子にも優しくて文句なし!」
思わず『ハッ』と笑いが出そうになったが、とにかくここでの御堀の評価はそうなっているらしい。
(我慢我慢。我慢よあたし)
いくら強めに突っ込みたくても、ここで御堀と幼馴染とバレる方がヤバそうな気がする。
「だってロミオ様、ファンクラブもあるし」
「ファンクラブ……」
「そう!あたし入ってるもん!」
ほら、と見せられ、先輩がアプリを立ち上げた。
アプリからはロミオ君こと、御堀誉くんの情報や写真、日々のコメントやファンサなどもあるらしい。
(はぁ―――――呆れてものも言えねえわ)
「あたしインスタはフォローしてる!時々、ライブやってくれるし」
なんだこりゃ。
アイドル扱いかよ、と思ったが、実際変わりはないらしい。
そもそも女子校で男子との接点がないウィステリアの女生徒らにとって、報国院という姉妹校の男子は癒しになっているらしい。
「本来はね、ウチの学校も、報国院も、男女交際禁止なんだよ。でも、実際は、お互いの学校で付き合うなら暗黙の了解があるんだ」
それは初耳だ、と芙綺は思ったが、別に彼氏をつくりに来たわけじゃないので正直どうでもいいな、と思った。
それよりも今は、一刻も早く確認したいことがあった。
「先輩、あたしちょっと友達と約束が」
「そうなん?じゃあ後でね」
先輩がにこやかにそう答えてくれたのだが、芙綺は慌てて寮の部屋へ戻る。
よし、誰もまだ帰って来てないな。
芙綺は年の為に窓際へ移動し、すぐさまメッセージを打つ。
返事はすぐあった。すぐに確認したかったから音声で、と伝えていたので呼び出しのベルが鳴った。
『やあ芙綺ちゃん、ウィステリア入学おめでとう』
誉だ。
芙綺は唸るような声で言った。
「ちょっと誉君!幾先輩がジュリエットってどーゆーことなの?あんた幾先輩になにさせてんのよ!」
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