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11・お前……変わったな
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「あたしが知る訳ないでしょ!けっこうあれから必死だったんだから!」
『うん、よくあの環境と状況でウィステリアに入れたよね。凄いよ本当に』
「……あんたのお姉さんがここの学院長に繋いでくれたおかげよ。それは感謝してる。でもそれはいまおいといて!アンタがロミオはともかく、ジュリエットってどーゆーことなのよ!!!」
聞いてないし知らないしありえない。
憧れの幾先輩が、あんな可愛い格好をしてるなんて!
『だから僕がさせたわけじゃないよ。むしろ幾がロミジュリって言ったんだから』
「嘘。どうせみんなの策略で幾先輩を追い詰めたんでしょ」
『そんな事は。まあちょっとはあるかもだけど』
「ほら!!!」
『でも本当に、本気で僕がジュリエットをさせた訳じゃないよ。むしろ幾の先輩がほぼ無理矢理みたいなもんだから』
「誰そいつ」
『言わないよ。言ったら芙綺ちゃん』
「飛び蹴りする」
『あはは、やっぱりね。絶対に僕は言わないし、飛び蹴りは辞めたほうが良い。ガチの武術の有段者だからね先輩は』
「あたしが負けるっていうの?」
『サッカーでは上だよ』
流石、付き合いが長いだけあって芙綺の嫌がる言葉も、納得する言葉もよく知っている。
嘘ではないのもまあ、理解はできる。
「じゃあ、あんたがさせた訳じゃないのね」
『僕みたいな若造にそんな権限はないな。先輩には逆らえないよ』
「誉くんでも?」
『僕なんか全くかなわないよ』
へえ、と芙綺は思った。
プライドがずば抜けて高いといえば聞こえはいいが、要するに負けず嫌いで決して他人より下になることを良しとせず、立場もあるのだろうけれど、王様然としていた誉が『かなわない』と言うなんて。
(冗談でもこんなこと言うヤツじゃなかったのに)
成績だってサッカーだって立場だって、努力はしていたけれど、それでも絶対に負けない、というプライドが目立っていた気がする。
その誉が、素直に負けを認めるなんて。
(先輩ってどんな連中なんだろう)
興味が沸いた芙綺だった。
しかしいまはそれよりも、気になるのは幾久の事だ。
「幾先輩のは一体なんなの?文化祭での舞台って、どういうこと?幾先輩が可愛すぎて、あんなことさせられちゃったの?」
『ハハハ、芙綺ちゃんもほどほどに認知がおかしくなってるよ。僕も幾も、期間限定で演劇部に入っているんだ』
「演劇部?せめてそこはサッカー部じゃないの?」
『うちの学校にサッカー部はないよ。ケートス知ってるだろ?』
勿論知っている。
誉も芙綺も、元は周防市にある二部リーグのサッカーチーム、ファイブクロスのユースに所属していた。
だから二人ともサッカー選手になってもおかしくないくらいの実力はあった。
サッカーにも当然詳しい。
ケートスは、この長州市にある、ファイブクロスと同じく二部リーグに所属するプロサッカーチームだ。
『ケートスのユースがうちのサッカー部みたいなもんだよ。ユースの連中は、うちの学校の生徒だし、寮だってトップチームと同じ場所だしね』
「そういうシステムなんだ」
プロリーグのチームが、地元の学校と協力してサッカーも学生生活も出来るように協力するのはよくあることだ。
『僕もサッカー部があったらそりゃ入りたいけど、学校の授業のレベルが高くてついて行くのが必死かな』
それも驚いた。
誉なら、少々成績が良いというレベルでなく、圧倒的にトップを走っていたのに。
「そんなに報国院って難しいんだ」
『僕の所属するクラスはね。化物レベルがごろごろしてる』
誉がこんな風に、負けそうな事を言うなってこれまでは考えた事もなかった。
長い間幼馴染だったけれど、この一年で何が彼に起こったのだろう。
(でもきっと、それって幾先輩が関係してるんだろうな)
芙綺が尊敬する幾久だから、どこか頑なな誉をここまで変えたに違いない、と芙綺は勘づいた。
「まあ、詳しくはまた聞くけど。それより、幾先輩に会いたいんだけど、どうしたら良いの?」
受験が終わって、入学するまで、絶対に幾久の事は尋ねないと芙綺は決めていた。
その事はとっくに誉には伝えていて、誉も幾久も、芙綺の気持ちを尊重してくれていた。
実際、この寮には居るギリギリまで両親はしつこくウィステリアを諦めさせようとしていて、結構大変だった。
寮へ引っ越し、やっとちょっと諦めてくれたらしい。
それでも先は判らないが。
『ああ、だったら今、部活してるから学校に来たら良いよ。歩いて十五分くらいだし、その方が面倒がないだろうし』
「部活って、演劇部?」
演劇部だったらちょっと面倒くさそうだな、と思う芙綺に誉は笑って言った。
『違うよ。フットサル部。サッカー部なかったから、今年から新設したんだ。僕が』
は?なんだと?
フットサル?
マジでか?
「その話、詳しくきかせてもらおうか!」
サッカー大好き少女、芙綺の目が鋭く光った。
『うん、よくあの環境と状況でウィステリアに入れたよね。凄いよ本当に』
「……あんたのお姉さんがここの学院長に繋いでくれたおかげよ。それは感謝してる。でもそれはいまおいといて!アンタがロミオはともかく、ジュリエットってどーゆーことなのよ!!!」
聞いてないし知らないしありえない。
憧れの幾先輩が、あんな可愛い格好をしてるなんて!
『だから僕がさせたわけじゃないよ。むしろ幾がロミジュリって言ったんだから』
「嘘。どうせみんなの策略で幾先輩を追い詰めたんでしょ」
『そんな事は。まあちょっとはあるかもだけど』
「ほら!!!」
『でも本当に、本気で僕がジュリエットをさせた訳じゃないよ。むしろ幾の先輩がほぼ無理矢理みたいなもんだから』
「誰そいつ」
『言わないよ。言ったら芙綺ちゃん』
「飛び蹴りする」
『あはは、やっぱりね。絶対に僕は言わないし、飛び蹴りは辞めたほうが良い。ガチの武術の有段者だからね先輩は』
「あたしが負けるっていうの?」
『サッカーでは上だよ』
流石、付き合いが長いだけあって芙綺の嫌がる言葉も、納得する言葉もよく知っている。
嘘ではないのもまあ、理解はできる。
「じゃあ、あんたがさせた訳じゃないのね」
『僕みたいな若造にそんな権限はないな。先輩には逆らえないよ』
「誉くんでも?」
『僕なんか全くかなわないよ』
へえ、と芙綺は思った。
プライドがずば抜けて高いといえば聞こえはいいが、要するに負けず嫌いで決して他人より下になることを良しとせず、立場もあるのだろうけれど、王様然としていた誉が『かなわない』と言うなんて。
(冗談でもこんなこと言うヤツじゃなかったのに)
成績だってサッカーだって立場だって、努力はしていたけれど、それでも絶対に負けない、というプライドが目立っていた気がする。
その誉が、素直に負けを認めるなんて。
(先輩ってどんな連中なんだろう)
興味が沸いた芙綺だった。
しかしいまはそれよりも、気になるのは幾久の事だ。
「幾先輩のは一体なんなの?文化祭での舞台って、どういうこと?幾先輩が可愛すぎて、あんなことさせられちゃったの?」
『ハハハ、芙綺ちゃんもほどほどに認知がおかしくなってるよ。僕も幾も、期間限定で演劇部に入っているんだ』
「演劇部?せめてそこはサッカー部じゃないの?」
『うちの学校にサッカー部はないよ。ケートス知ってるだろ?』
勿論知っている。
誉も芙綺も、元は周防市にある二部リーグのサッカーチーム、ファイブクロスのユースに所属していた。
だから二人ともサッカー選手になってもおかしくないくらいの実力はあった。
サッカーにも当然詳しい。
ケートスは、この長州市にある、ファイブクロスと同じく二部リーグに所属するプロサッカーチームだ。
『ケートスのユースがうちのサッカー部みたいなもんだよ。ユースの連中は、うちの学校の生徒だし、寮だってトップチームと同じ場所だしね』
「そういうシステムなんだ」
プロリーグのチームが、地元の学校と協力してサッカーも学生生活も出来るように協力するのはよくあることだ。
『僕もサッカー部があったらそりゃ入りたいけど、学校の授業のレベルが高くてついて行くのが必死かな』
それも驚いた。
誉なら、少々成績が良いというレベルでなく、圧倒的にトップを走っていたのに。
「そんなに報国院って難しいんだ」
『僕の所属するクラスはね。化物レベルがごろごろしてる』
誉がこんな風に、負けそうな事を言うなってこれまでは考えた事もなかった。
長い間幼馴染だったけれど、この一年で何が彼に起こったのだろう。
(でもきっと、それって幾先輩が関係してるんだろうな)
芙綺が尊敬する幾久だから、どこか頑なな誉をここまで変えたに違いない、と芙綺は勘づいた。
「まあ、詳しくはまた聞くけど。それより、幾先輩に会いたいんだけど、どうしたら良いの?」
受験が終わって、入学するまで、絶対に幾久の事は尋ねないと芙綺は決めていた。
その事はとっくに誉には伝えていて、誉も幾久も、芙綺の気持ちを尊重してくれていた。
実際、この寮には居るギリギリまで両親はしつこくウィステリアを諦めさせようとしていて、結構大変だった。
寮へ引っ越し、やっとちょっと諦めてくれたらしい。
それでも先は判らないが。
『ああ、だったら今、部活してるから学校に来たら良いよ。歩いて十五分くらいだし、その方が面倒がないだろうし』
「部活って、演劇部?」
演劇部だったらちょっと面倒くさそうだな、と思う芙綺に誉は笑って言った。
『違うよ。フットサル部。サッカー部なかったから、今年から新設したんだ。僕が』
は?なんだと?
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