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12・男子校の情報は気になるのだ
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誉とのやりとりを終えた頃、同じ部屋の子たちが帰って来た。
「小早川さん、一人だったんだ」
「あ、うん。友達とメッセしてて」
「そっかあ、周防市からこっち一人だもんね」
「ロミジュリ、面白かったから見たらいいよ。なんか繰り返し見てる人もいるし」
「マジで?」
呆れる芙綺に皆、頷く。
「しばらく垂れ流しになるんじゃないのかな~、どうせ誰でも好きに見て良い訳だし」
そうかもしれないけど、寮に居るのに御堀のドアップロミオはないわあ、と芙綺はげんなりする。
(でも、幾先輩のジュリエット、はちょっと見たい、かも)
ちらっと見ただけだけど可愛かった。
衣裳もなんか良かった。
ロミジュリと言う事をのぞけば、大量の幾久を摂取できる。
「興味はあるんですけど、……ゆっくりは見てみたいです」
芙綺の言葉に、同じ部屋の先輩が告げた。
「じゃあ寮のタブレット使ったら?寮生は自由に見て良いし、ロミジュリは確かダウンロードコンテンツで見れるようになってるはず」
「なんでそんなん見れるんですか」
ちょっと呆れる芙綺に、先輩は笑った。
「だってうち報国院とは姉妹校だからねえ」
「そういうものなんですか」
「そういうものらしいよ」
姉妹校って名ばかりじゃなく、本当にそこまで親しいのか。
(だから幾先輩、ウチの学校みたいなもん、って言ってたのか)
「小早川さんもさー、可愛いからその気になればすぐ彼氏できると思うけど」
「いらないです」
「あはは。まあまあ、とにかく彼氏なら報国院の男子にしといたほうがいいよ」
「どうしてそこまで報国院を推すんですか?」
「うーん、報国院の男子が都合がいいから、かな」
「都合……?」
首を傾げる芙綺に、先輩は芙綺以外の一年生にも声をかけた。
「どうせだからさ、みんな話しながらご飯とか、お風呂も一緒にしよう」
寮生活で、新入生は暫く先輩と一緒に行動する事になっていた。
皆、頷き、先輩と話をしながら過ごすことにした。
「つまりさ、報国院って、男子校だけど、ホラ、結婚してから男が問題起こすとか多いじゃん。家事やらないとか、子育てがいい加減とか」
そういえば一般論でそういう話題はよく出てくる。
うなづく後輩たちに、先輩が言った。
「報国院はね、成績で露骨にレベル分けててさ。で、成績良い子がやっちゃう失敗とか、逆に頭悪い子がやっちゃう失敗とかっていうのも学校で研究してるんだって」
へぇー、そうなんだ、と驚くが、芙綺も驚いた。
「で、成績良い子はパワハラ系の失敗しやすくて、成績悪い子は、他にもいろいろやらかすっていうんで、ちゃんと子育てしたり、家事ができるように学校で叩き込むんだって」
それは驚きだ、と芙綺は目を丸くした。
「ってことは、報国院の男子は、卒業するまでに料理できるようになってるって事ですか?」
「うん。お弁当作りまで、できるようにならないと駄目なカリキュラムあるんだって」
へえー、と女子達から驚きの声が上がる。
「実際、一人暮らしとかになると外食か、自分で作るしかなくなるじゃん。その場合でもやっぱ、作れるけど外食なのか、作れないから外食なのかじゃ大違いだからって」
「そうなんだ」
確かにそうだな、と芙綺も頷く。
「でもそれって、うちらもなんか頑張らないとやばいんじゃ」
焦った声で言う新入生に、先輩が首を横に振った。
「心配ないよー。うちの学校も似たようなものあるし。実際、先輩っていうかOGらも学校が教えてくれるから全然助かるって言ってたし」
そっか、と芙綺は気づいた。
地元から逃げる事ばっかりしか考えていなかったから、そんな事まで考えが至らなかったけれど、もしこのままずっと家から離れて暮らすなら、芙綺は自分の事は自分でできなければならないのだ。
(そういやあたし、できるのって洗濯くらいだ)
芙綺と同じ事に新入生も気づいたらしい。
「あたし料理とかまともにしたことない」
「私も」
「だから、大丈夫だって。心配ならうちの寮に上手な先輩いるから教わったら良いよ。土日、自分らで勝手に作る日もあったりするし」
「そんな日もあるんですか?」
「あるある!心配ないって」
大丈夫だよー、という先輩にちょっとほっとした芙綺だった。
先輩はいろんなことを教えてくれて、寮でうまくやれなかったらどうしよう、と思っていた芙綺はほっとした。
(顔のことも、あんまりいじられなかった)
どこに行っても、顔が良くていいわねー、とか、美人だからって、と喧嘩を売られたりというのは頻繁にあった。
でもこの寮では、入ってすぐに、わー、かわいい、美人だーという感想が一周したら、もう誰もなにも言わず、芙綺を普通に扱った。
(女子校だから、こういうの酷いのかと思ってた)
勝手に偏見で、女子ばかりだとやたら警戒されたり、文句を言われたりとかあるのかな、と思いこんでいた。
そんな事は無かった。
普通の扱いと言うのが、芙綺には心地よかった。
友達になった雅も、芙綺のことは美少女とは言うものの、そこまで嫌な雰囲気はない。
多分、最初の驚きがやたらおっさんくさかった、というのもあるかもしれないけど、そこに何の意図も含んでいないからだろう。
「小早川さん、一人だったんだ」
「あ、うん。友達とメッセしてて」
「そっかあ、周防市からこっち一人だもんね」
「ロミジュリ、面白かったから見たらいいよ。なんか繰り返し見てる人もいるし」
「マジで?」
呆れる芙綺に皆、頷く。
「しばらく垂れ流しになるんじゃないのかな~、どうせ誰でも好きに見て良い訳だし」
そうかもしれないけど、寮に居るのに御堀のドアップロミオはないわあ、と芙綺はげんなりする。
(でも、幾先輩のジュリエット、はちょっと見たい、かも)
ちらっと見ただけだけど可愛かった。
衣裳もなんか良かった。
ロミジュリと言う事をのぞけば、大量の幾久を摂取できる。
「興味はあるんですけど、……ゆっくりは見てみたいです」
芙綺の言葉に、同じ部屋の先輩が告げた。
「じゃあ寮のタブレット使ったら?寮生は自由に見て良いし、ロミジュリは確かダウンロードコンテンツで見れるようになってるはず」
「なんでそんなん見れるんですか」
ちょっと呆れる芙綺に、先輩は笑った。
「だってうち報国院とは姉妹校だからねえ」
「そういうものなんですか」
「そういうものらしいよ」
姉妹校って名ばかりじゃなく、本当にそこまで親しいのか。
(だから幾先輩、ウチの学校みたいなもん、って言ってたのか)
「小早川さんもさー、可愛いからその気になればすぐ彼氏できると思うけど」
「いらないです」
「あはは。まあまあ、とにかく彼氏なら報国院の男子にしといたほうがいいよ」
「どうしてそこまで報国院を推すんですか?」
「うーん、報国院の男子が都合がいいから、かな」
「都合……?」
首を傾げる芙綺に、先輩は芙綺以外の一年生にも声をかけた。
「どうせだからさ、みんな話しながらご飯とか、お風呂も一緒にしよう」
寮生活で、新入生は暫く先輩と一緒に行動する事になっていた。
皆、頷き、先輩と話をしながら過ごすことにした。
「つまりさ、報国院って、男子校だけど、ホラ、結婚してから男が問題起こすとか多いじゃん。家事やらないとか、子育てがいい加減とか」
そういえば一般論でそういう話題はよく出てくる。
うなづく後輩たちに、先輩が言った。
「報国院はね、成績で露骨にレベル分けててさ。で、成績良い子がやっちゃう失敗とか、逆に頭悪い子がやっちゃう失敗とかっていうのも学校で研究してるんだって」
へぇー、そうなんだ、と驚くが、芙綺も驚いた。
「で、成績良い子はパワハラ系の失敗しやすくて、成績悪い子は、他にもいろいろやらかすっていうんで、ちゃんと子育てしたり、家事ができるように学校で叩き込むんだって」
それは驚きだ、と芙綺は目を丸くした。
「ってことは、報国院の男子は、卒業するまでに料理できるようになってるって事ですか?」
「うん。お弁当作りまで、できるようにならないと駄目なカリキュラムあるんだって」
へえー、と女子達から驚きの声が上がる。
「実際、一人暮らしとかになると外食か、自分で作るしかなくなるじゃん。その場合でもやっぱ、作れるけど外食なのか、作れないから外食なのかじゃ大違いだからって」
「そうなんだ」
確かにそうだな、と芙綺も頷く。
「でもそれって、うちらもなんか頑張らないとやばいんじゃ」
焦った声で言う新入生に、先輩が首を横に振った。
「心配ないよー。うちの学校も似たようなものあるし。実際、先輩っていうかOGらも学校が教えてくれるから全然助かるって言ってたし」
そっか、と芙綺は気づいた。
地元から逃げる事ばっかりしか考えていなかったから、そんな事まで考えが至らなかったけれど、もしこのままずっと家から離れて暮らすなら、芙綺は自分の事は自分でできなければならないのだ。
(そういやあたし、できるのって洗濯くらいだ)
芙綺と同じ事に新入生も気づいたらしい。
「あたし料理とかまともにしたことない」
「私も」
「だから、大丈夫だって。心配ならうちの寮に上手な先輩いるから教わったら良いよ。土日、自分らで勝手に作る日もあったりするし」
「そんな日もあるんですか?」
「あるある!心配ないって」
大丈夫だよー、という先輩にちょっとほっとした芙綺だった。
先輩はいろんなことを教えてくれて、寮でうまくやれなかったらどうしよう、と思っていた芙綺はほっとした。
(顔のことも、あんまりいじられなかった)
どこに行っても、顔が良くていいわねー、とか、美人だからって、と喧嘩を売られたりというのは頻繁にあった。
でもこの寮では、入ってすぐに、わー、かわいい、美人だーという感想が一周したら、もう誰もなにも言わず、芙綺を普通に扱った。
(女子校だから、こういうの酷いのかと思ってた)
勝手に偏見で、女子ばかりだとやたら警戒されたり、文句を言われたりとかあるのかな、と思いこんでいた。
そんな事は無かった。
普通の扱いと言うのが、芙綺には心地よかった。
友達になった雅も、芙綺のことは美少女とは言うものの、そこまで嫌な雰囲気はない。
多分、最初の驚きがやたらおっさんくさかった、というのもあるかもしれないけど、そこに何の意図も含んでいないからだろう。
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