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しおりを挟む和也が異世界に迷い込んでから一日が経過。
文字を覚えるのにそれ程時間はかからなかった。
和也は本を読み漁り、読み終わった本を適当に放置してるため、辺りは大量の本が散らかっている。
――徹夜した甲斐があった。大分この世界のことが分かった。
やはり、ここは異世界と言うものらしい。
基本的にこの世界を回している資源は、魔石と呼ばれる結晶体。魔石には属性があり、火、水、風、土、雷、光、闇、無の八属性が存在している。水の魔石は治癒能力があるように、それぞれ特別な効果があるようだ。
魔法も存在自体はあるが、使えるものは少ない。なんでも、体内に魔力を所有してる人は余りいないらしく、普通は魔石を使って魔法じみたことをしているらしい。
だが、魔法や魔石に対抗するもう一つの力がある。それは、鍛えれば誰でも扱うことができ、力の種類は十人十色。その力は――
「神通力《じんつうりき》か……やっぱり俺が生きてくには覚えないといけないよな」
「ちょっと、何よこれ!?」
和也がこの世界について得た情報を整理していると、リリがやってきて、散乱した本を見て驚愕していた。
「ん? あぁ、リリか。どうしたそんなに頰を膨らませて。かわいいぞ」
「え? そう? ありがと――っじゃなくて、どうするのこんなに散らかして!! もうすぐ開館時間なのに!!」
ご立腹なリリだが、和也は全く謝罪の言葉を口にせず、立ち上がり、欠伸しながら体を伸ばしていた。
「まぁそんな怒んなよ。本の位置は全部覚えてる。二人でやればなんとか間に合うだろ」
頭を抱えているリリは和也の言葉に耳を疑った。
「覚えてる……って、まさかそんなのありえないって。私でもこれだけの本を覚えるのに三ヶ月もかかったんだから」
「俺ってば昔から記憶力には自信があってな、ここにある本くらいの量なら内容と位置ぐらい覚えられる」
「嘘でしょ?ここに何冊あると思っているの?」
「じゃ、証明がてら片付けようぜ」
信じられないリリに和也は次々と本を戻していき、片付けを始める。最初は目を疑って立ち尽くしていたが、途中から時間のこともあり、リリも手伝いに入った。そして、開館時間ギリギリになんとか間に合わせた。
********************
開館後、和也とリリは休憩室で一休みしていた。
「まさか本当に覚えてたなんてね。最初は死んだ魚の眼をしたヘタレもやしかと思ってたけど見直しちゃった」
「第一印象酷すぎない!?」
リリの和也に対する印象に思わず声を上げるが、すぐさま気を取り直して真剣な眼差しをリリに向ける。
「で、この国についてなんだけど本に書いてあった内容であってるのか」
ルカリア王国――大陸の最も北西に位置し、北に海、南に採掘場がある。なので、水産業や魔石の採掘量は大陸の中でもトップクラスだ。
隣国はドルドとキスガスで、この三国は戦争中の状態だ。
「ここにある本は全部事実しか書いてないよ。デタラメな情報の乗ってる本は私が処分してるから」
「処分ってことはここに来る前にリリが読んで判断してるのか? だとしたら凄い知識量がいるよな」
「実はそうでもないんだよ。私には嘘を見抜く力があるから。虚偽の情報はわかるんだよね」
「それって神通力ってやつか?」
「そうよ。昔から人と接する事が多くてね。自然と身についちゃった。おかげで今は図書館の管理人だよ」
「神通力ってどれくらいで身につくんだ?」
「個人差もあるけど……早くても一年くらいかな。それでも、それ程まともには使えないけど」
――やっぱり神通力が唯一の武器かな。でも一年か……思ったより長いな
神通力について大体把握出来たところで、和也はルカリア王国について話を聞くことにした。
「そういえば、ルカリアは難民を受け入れてるだろ。でもドルドとキスガスとは戦争中なのにどこからでも受け入れてるのか? 一応俺ドルドから来たことになってるんだけど」
「一応って何よ。まぁそうね。国王がお人好しな人でね、戦争中でも助けられる人は助けたいみたい。それで、国に入る税金の一部を難民に提供してる。だから難民が集まる街もあるんだけど、あんまり良いところとは言えないわね。よく一般市民に荒らされるから」
「まぁそうなるだろうな。いくら戦争に参加してないとはいえ、人によっては家族を殺された国の人に金を払ってるんだから、反発も出るだろ」
「それでも国を引っ張っていける人は他にいないからそれ程大きな反発は起きてないんだけど、姫には頑張ってもらわないと」
リリの発言に和也は首をひねる。
「え? 姫って言った? 何? 今の国王、姫なの?」
「そんな事も知らないの? いくら他国でも隣国の国王ぐらい知ってるものよ」
――そんな事言われても……
和也は不満顔になるが、言葉に出さないでおいた。
リリは「まぁいいわ」と話を進める。
「五年前に前国王が亡くなられて、当時12歳だったセシア第二皇女があとを継いだの」
「第二皇女ってことは、他にも候補がいたのか?」
「姉がいたんだけど、その人はとてつもない暴君で市民からの評判は良くなかったの。いろいろ裏の顔も明かされたりして、前国王が亡くなる前に追放されたの」
「十二歳って、よく継がせる気になったよな。大きくなるまで誰かが代理を務めるとかしなかったのか?」
「確かにそんな意見もあったけど、戦争中の今、王不在ってなったら何が起こるかわからないからね。何とか周りが補佐してるってわけ」
「ふーん。ん? これなんの本だ?」
和也は休憩室の机に置いてあった本に興味をひかれた。見た目は他とあまり変わらず、これといった特徴はないのだが、なぜだか目を奪われるものがあり、すぐさま手に取った。
すると和也に異変が起きた――――
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