野良錬金術師ネモの異世界転生放浪録(旧題:野良錬金術師は頭のネジを投げ捨てた!)

悠十

文字の大きさ
33 / 57
番外編・すいーと・ぱにっく

第三話

しおりを挟む
「きゅあ~」

 ネモがレッドビーの巣をマジックバックに仕舞っていると、あっくんがネモのコートの裾を引いた。あっくんは、どうにかならないか、と言わんばかりの情けない顔をしており、ネモは苦笑いしつつ頭をひねる。

「そうねぇ……。もうちょっと森を散策してみる? 他にもレッドビーの巣があるかもしれないし」
「きゅいっ!」

 嬉しそうに賛成するあっくんに、ネモも笑む。

「それじゃあ、さっき見つけた花がたくさん咲いてた木のところまで戻りましょうか。そこで待っていたらレッドビーが来るかもしれないし」
「きゅいっ!」

 そう言って花が咲いている樹木の所へ戻れば、丁度レッドビーが蜜を集めているところに出くわした。

「あっくん!」
「きゅあっ!」

 慌てて身を隠し、レッドビーを観察する。
 幸いなことにレッドビーはすぐに蜜を集め終え、樹木から離れた。
 ネモとあっくんは気配を殺しながらそれを追う。
 レッドビーは寄り道をすることなく、森の奥へと飛んでいく。

「なんか、さっきより森の奥へ入っちゃてるけど……。どうしよう、不安だわ……」
「きゅーい」

 果たしてこのまま森の奥へ入って大丈夫かと悩むネモに、あっくんが軽い調子で、大丈夫だよ、と鳴く。

「きゅきゃっ」

 僕がいるから大丈夫、とばかりに胸を叩くあっくんに、ネモは困ったように笑んでコメントを避けた。
 そして、ネモとあっくんは森の奥へ、奥へと入っていく。
 しばらく歩いていると、木々の向こうがキラキラ光っているのに気づいた。

「なにかしら……?」

 そこへ向かって歩を進め、木々の間から出てみれば、そこに在ったのは大きな池だった。
 池の水面がキラキラと太陽の光を反射し、ネモは眩しさに目を細める。
 その時、不意にネモの背後からブーンという羽音がした。
 驚いて振り向けば、目の前を赤い体が通過する。
 それを目で追い、その正体がレッドビーだと知る。
 よく見てみれば、池の上をレッドビーが数匹飛んでおり、それらはまっすぐ向こう岸の方へと飛び去って行く。

「どうやら向こう岸に巣があるみたいね。レッドビーの数が多いわ」
「きゅいっ」

 あっくんは目を輝かせた。
 向こう岸に行けば蜂蜜がいっぱい!
 キラキラとしたエフェクトが見えそうな喜びようだ。
 ネモは苦笑しつつ、池の周りを歩く。池は大きいため、向こう岸までそれなりに距離がある。
 稀にこういう池には厄介な魔物が潜んでいる場合があるため、試しに大き目の石を投げ入れてみるが、特に反応は返ってこない。もしこれで大物の魔物が潜んでいれば、何事かと様子を見るためにアクションがあるのだが、なにも無いということは少なくとも大物の魔物は居ないということである。

「あっくん、時間が余ったら魚でも釣って帰る?」
「きゅーい!」

 ご機嫌のあっくんに、ネモも笑顔になる。小動物は可愛い。
 こうしてのんびりと向こう岸へと歩を進めたのだが、残念ながらネモ達は釣りをして帰ることはなった。
 何故なら、向こう岸にはとんでもない光景が待ち構えていたのだから……



   ***



 ぱっかりと阿呆みたいに口を開け、唖然とする。

「なにあれ……」
「きゅ~あ……」

 目的地に辿り着いたネモとあっくんの視線の先には、とんでもない光景が広がっていた。
 池から少しだけ離れたところに聳え立つ大樹。それは、きっと古木と呼べるほどに樹齢を重ねただろう木だった。幹は太く、枝は大きく、広く横に伸びている。
 その大樹を見て、ネモ達は唖然としていた。
 別に、大樹が珍しいわけでは無い。旅をしていればそうした立派な木などはたまに見かけることがある。では、何がネモ達をこんなに驚かせたのか――

「蜂の巣に浸食されてる……」
「きゅ~……」

 大樹は、レッドビーの巣に余すところなく浸食されていたのだ。
 広く広げた枝にはみっしりとレッドビーの巣がこびりつき、垂れ下がり、もはや壁と言っていい有り様だった。
 
「これ、世界最大級じゃない? 直系十メートルはあるわよ……?」

 えげつない規模の巣だ。最早レッドビーの木と言っていいほどに大樹は巣に飲み込まれている。

「大きすぎてキモイ……」

巣の周りにはブンブンとレッドビーが飛び回り、本能的な鳥肌が立つ。
 これはもう『焼く』一択の規模だ。
 ネモは顔を歪め、あっくんを呼ぶ。

「あっくん、これは無理よ。撤退するわ」

 そう言って一歩巣から遠ざかるが、その間にあっくんから返事が無かった。

「あっくん?」

 肩に乗っているあっくんを見る。

「きゅっきゅっきゅ~い」

 そこには、目を輝かせている捕食者が居た。
 バリバリに嫌な予感がした。物凄く良くない事が起きる予感だ。

「あ、あっくん……?」

 恐る恐る声を掛けるも、あっくんはご機嫌に体を揺らすだけだ。

「あっくん、あの――」

 言い終わる前に、あっくんがネモの肩から降りた。そして――

「きゅっきゃ~い!」

 高らかに声を上げ、レッドビー達の前へ躍り出たのだった。


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...