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番外編・すいーと・ぱにっく
第二話
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「いいこと、あっくん。万が一大きい巣を見つけたら、撤退するからね。大きい巣は山火事にならないように計画してから撤去しなきゃいけないから」
「きゅ~……」
え~、と不満そうな声を上げるあっくんに、ネモは厳しい声で言う。
「あっくん。私達の旅は美味しいものを食べる旅でもあるけど、命あっての物種なの。健康だからこそ、ご飯が美味しいのよ」
「きゅきゃ~……」
世の真理である。
あっくんが、確かに、と頷くのを確認し、ネモは言葉を重ねる。
「だから、危険からはなるべく遠ざかる、関わらない。安全策を第一に動くのよ」
「きゅ~い……」
仕方ないなぁ、と了承の意を返したあっくんに、ネモもよろしい、と頷いた。
しかし、ネモは気付かなかった。
あっくんが、だけど僕が居れば大丈夫だよね、と思っていたことに……
***
レッドビーは樹上に巣をつくる。
蜜蜂みたいな生態のくせに、何故かその巣はスズメバチの巣にそっくりだ。稀にレッドビーの巣と勘違いし、蜂蜜を採ろうとして煙で燻してみれば、実はスズメバチの巣だったという事故が起きている。
巣を見分けられない場合は、巣に出入りしている蜂が何色をしているか確認する必要がある。
ネモ達は森の中を歩き、花が咲いている樹木を見つけ、そこで赤い蜂の魔物を見つけた。
「あっくん、追いかけるわよ」
「きゅいっ」
声を潜めてそう言えば、あっくんも小さな声で了解の意を返した。
両者はそっとレッドビーの後を追う。
しかし、レッドビーは流石は魔物と言うべきか、兎に角飛行距離が長く、蜜を一度に溜める量が多い。なかなか巣に帰らず、ネモ達はレッドビーの後を半刻程息をひそめて追う羽目になった。
「面倒ね、あっくん……」
「きゅい……」
うんざりしながらどうにか辿り着いた場所には、五十センチほどの大きな蜂の巣があった。
「周りをレッドビーが飛んでるし、レッドビーの巣で間違いなさそうね」
「きゅっ」
よし、と頷き合い、ネモはバックから発煙筒のマジックアイテムを取り出す。
風向きを確認し、茂みの影からアイテムを起動して巣の近くへ投げた。
筒形のマジックアイテムから濛々と煙が噴き出て、四メートルほどの高さにある巣に煙があたる。
「これで駄目なら発煙筒増やすけど……、それで駄目なら撤退ね」
「きゅきゃっ!?」
ネモの呟きに、なんで⁉ と驚くあっくんに、改めて言う。
「あっくん。『命あっての物種』なのよ」
「きゅあ~……」
そんな~、と嘆くあっくんは、改めてレッドビーの巣に視線を戻し、赤い蜂出て行け~、と念を送る。
さて、そんなあっくんの念が届いたのか、レッドビーは巣から次々に出てきて、最後に女王蜂のクイーン・レッドビーを守るように中心に据え、森の奥へと飛び去って行った。
ネモとあっくんはその様子を茂みに隠れて見送った。そしてそのまま巣から蜂が出てこないことを確認し、隠れていた茂みから出る。
「もう居ないみたいね」
「きゅっ!」
煙に燻されたままの蜂の巣を見上げ、ネモは安どの息をつき、あっくんはご機嫌な様子でリズミカルに体を揺らした。
「それじゃあ、あっくん。木に登って巣を落としてもらっていい?」
「きゅいっ!」
あっくんはネモの指示に従い、「きゅっきゅ~」と鼻歌交じりに木に登る。
レッドビーの巣は、枝葉が多い木に出来やすく、今回もそれに違わず枝葉が多くて巣が見えにくい場所に出来ていた。
あっくんが巣に辿り着いてもレッドビーは出てこず、一匹も巣に残っていないのが分かる。これが蜜蜂やスズメバチと違うところだろう。追い払うという点ではこちらの方が簡単だ。
「あっく~ん、巣を下に落として欲しいから、巣を支えている枝を切ってもらえる~?」
「きゅあっ?」
ネモが下からそうあっくんにお願いするが、下に落としたら巣が壊れちゃわないかな? とあっくんは首を傾げた。
「レッドビーの巣は丈夫だから、そう簡単には壊れないわよ~。安心して落としちゃって~」
「きゅ~い!」
了解とばかりに元気いっぱいな返事をして、あっくんは巣を支える枝の一つに噛みついた。そして、そのままガリガリと削っていく。げっ歯類の本領発揮である。
一つの枝では巣は落ちず、あたりをつけてもう一枝削っていく。
そして、削っている半ばで、ミシッ、と音がした。
あっくんは急いで安全な枝に飛び移り、巣の様子を窺う。
巣がくっついている枝は、ミシミシと音を立てて重力に逆らわず下へとずり落ちて行き、バキッ、という枝が折れる音と共に落下した。
途中、木の枝葉に触れて落下速度が軽減されたが、それでも殺しきれなかった勢いが巣をバウンドさせ、転がった。
安全のため少し離れたところで見守っていたネモは、落ちて来た巣の元へ小走りに近寄り、巣の状態を確認する。
「特に壊れたところは無さそうね……。あっく~ん、お疲れさま! バッチリだったわ!」
「きゅっきゅ~い!」
あっくんは喜び勇んで木から降り、巣の元へ一目散に走り寄る。
「きゅあ?」
蜂蜜の量はどれくらいかな? と首を傾げるあっくんに、ネモは苦笑する。
「そうね……。依頼分がけっこう多めだったがら、手元に残せるのは小さめの壺一つぶん……、朝食のパンに塗るとしたら十日分くらいかしら」
「きゅきゃっ!?」
それだけなの⁉ と驚くあっくんに、ネモは肩を竦める。
「仕方ないわよ。依頼者はきっとこの蜂蜜で試作を重ねるつもりなんでしょ。だからいっぱい欲しい、って依頼なんだから」
「きゅあ~……」
依頼を受けなければよかった、と嘆くあっくんに、ネモは困った顔をする。
「あっくんの蜂蜜ブームはまだ去らないか~……」
十日分もあればそのうちに飽きるかと思ったのだが、どうやらまだまだ蜂蜜ブーム続くようである。
「きゅ~……」
え~、と不満そうな声を上げるあっくんに、ネモは厳しい声で言う。
「あっくん。私達の旅は美味しいものを食べる旅でもあるけど、命あっての物種なの。健康だからこそ、ご飯が美味しいのよ」
「きゅきゃ~……」
世の真理である。
あっくんが、確かに、と頷くのを確認し、ネモは言葉を重ねる。
「だから、危険からはなるべく遠ざかる、関わらない。安全策を第一に動くのよ」
「きゅ~い……」
仕方ないなぁ、と了承の意を返したあっくんに、ネモもよろしい、と頷いた。
しかし、ネモは気付かなかった。
あっくんが、だけど僕が居れば大丈夫だよね、と思っていたことに……
***
レッドビーは樹上に巣をつくる。
蜜蜂みたいな生態のくせに、何故かその巣はスズメバチの巣にそっくりだ。稀にレッドビーの巣と勘違いし、蜂蜜を採ろうとして煙で燻してみれば、実はスズメバチの巣だったという事故が起きている。
巣を見分けられない場合は、巣に出入りしている蜂が何色をしているか確認する必要がある。
ネモ達は森の中を歩き、花が咲いている樹木を見つけ、そこで赤い蜂の魔物を見つけた。
「あっくん、追いかけるわよ」
「きゅいっ」
声を潜めてそう言えば、あっくんも小さな声で了解の意を返した。
両者はそっとレッドビーの後を追う。
しかし、レッドビーは流石は魔物と言うべきか、兎に角飛行距離が長く、蜜を一度に溜める量が多い。なかなか巣に帰らず、ネモ達はレッドビーの後を半刻程息をひそめて追う羽目になった。
「面倒ね、あっくん……」
「きゅい……」
うんざりしながらどうにか辿り着いた場所には、五十センチほどの大きな蜂の巣があった。
「周りをレッドビーが飛んでるし、レッドビーの巣で間違いなさそうね」
「きゅっ」
よし、と頷き合い、ネモはバックから発煙筒のマジックアイテムを取り出す。
風向きを確認し、茂みの影からアイテムを起動して巣の近くへ投げた。
筒形のマジックアイテムから濛々と煙が噴き出て、四メートルほどの高さにある巣に煙があたる。
「これで駄目なら発煙筒増やすけど……、それで駄目なら撤退ね」
「きゅきゃっ!?」
ネモの呟きに、なんで⁉ と驚くあっくんに、改めて言う。
「あっくん。『命あっての物種』なのよ」
「きゅあ~……」
そんな~、と嘆くあっくんは、改めてレッドビーの巣に視線を戻し、赤い蜂出て行け~、と念を送る。
さて、そんなあっくんの念が届いたのか、レッドビーは巣から次々に出てきて、最後に女王蜂のクイーン・レッドビーを守るように中心に据え、森の奥へと飛び去って行った。
ネモとあっくんはその様子を茂みに隠れて見送った。そしてそのまま巣から蜂が出てこないことを確認し、隠れていた茂みから出る。
「もう居ないみたいね」
「きゅっ!」
煙に燻されたままの蜂の巣を見上げ、ネモは安どの息をつき、あっくんはご機嫌な様子でリズミカルに体を揺らした。
「それじゃあ、あっくん。木に登って巣を落としてもらっていい?」
「きゅいっ!」
あっくんはネモの指示に従い、「きゅっきゅ~」と鼻歌交じりに木に登る。
レッドビーの巣は、枝葉が多い木に出来やすく、今回もそれに違わず枝葉が多くて巣が見えにくい場所に出来ていた。
あっくんが巣に辿り着いてもレッドビーは出てこず、一匹も巣に残っていないのが分かる。これが蜜蜂やスズメバチと違うところだろう。追い払うという点ではこちらの方が簡単だ。
「あっく~ん、巣を下に落として欲しいから、巣を支えている枝を切ってもらえる~?」
「きゅあっ?」
ネモが下からそうあっくんにお願いするが、下に落としたら巣が壊れちゃわないかな? とあっくんは首を傾げた。
「レッドビーの巣は丈夫だから、そう簡単には壊れないわよ~。安心して落としちゃって~」
「きゅ~い!」
了解とばかりに元気いっぱいな返事をして、あっくんは巣を支える枝の一つに噛みついた。そして、そのままガリガリと削っていく。げっ歯類の本領発揮である。
一つの枝では巣は落ちず、あたりをつけてもう一枝削っていく。
そして、削っている半ばで、ミシッ、と音がした。
あっくんは急いで安全な枝に飛び移り、巣の様子を窺う。
巣がくっついている枝は、ミシミシと音を立てて重力に逆らわず下へとずり落ちて行き、バキッ、という枝が折れる音と共に落下した。
途中、木の枝葉に触れて落下速度が軽減されたが、それでも殺しきれなかった勢いが巣をバウンドさせ、転がった。
安全のため少し離れたところで見守っていたネモは、落ちて来た巣の元へ小走りに近寄り、巣の状態を確認する。
「特に壊れたところは無さそうね……。あっく~ん、お疲れさま! バッチリだったわ!」
「きゅっきゅ~い!」
あっくんは喜び勇んで木から降り、巣の元へ一目散に走り寄る。
「きゅあ?」
蜂蜜の量はどれくらいかな? と首を傾げるあっくんに、ネモは苦笑する。
「そうね……。依頼分がけっこう多めだったがら、手元に残せるのは小さめの壺一つぶん……、朝食のパンに塗るとしたら十日分くらいかしら」
「きゅきゃっ!?」
それだけなの⁉ と驚くあっくんに、ネモは肩を竦める。
「仕方ないわよ。依頼者はきっとこの蜂蜜で試作を重ねるつもりなんでしょ。だからいっぱい欲しい、って依頼なんだから」
「きゅあ~……」
依頼を受けなければよかった、と嘆くあっくんに、ネモは困った顔をする。
「あっくんの蜂蜜ブームはまだ去らないか~……」
十日分もあればそのうちに飽きるかと思ったのだが、どうやらまだまだ蜂蜜ブーム続くようである。
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