※踏み台ではありません

悠十

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辺境編

第三話 ダンジョン前テント村

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 セス達一行は、突貫工事でなんとか形にした凸凹した道を走る。ダンジョンへ向かう道はどうにか敷いたらしいが、平面への慣らしはまだ終っていなかった。
 しかし、それでも人の出入りは有るらしく、人の足跡が多数確認できた。
 騎士を先頭にして走る一行は、大した苦も無く馬よりも早く焼けた森の中を走り抜ける。
 ルシアンの地位的に、馬車か馬を用意させても良かったのだが、身体強化で走った方が早いと言って、自分の足での移動になったのだ。
 そして、ダンジョンの近くの開けた場所が見えてくると、スピードを落とし、足を止めた。
 足を止めた先に在ったのは、多数のテントが張ってあるキャンプ村だった。
 目を丸くするセスに、ルシアンが教えてくれた。

「目敏い冒険者はもうダンジョンへ入ってるのよ。出来たばかりのダンジョンは危険も有るけど、情報料が貰えるし、初期は魔物の氾濫の名残なのか、上層にそれなりに魔物が残ってるから中級以上の冒険者には美味しい狩場らしいわ」

 肩をすくめ、ルシアンが示した先には一際大きなテントが張ってあった。

「あの一番大きなテントは冒険者ギルドのテントよ。あそこでダンジョンの情報や、魔物の素材の買取をしているわ」

 そう言って、その冒険者ギルドのテントへ向かって歩き出す。

「どれくらい情報が集まったかは分からないけど、取り合えず魔物の傾向くらいは分かってるでしょ。聞いておきましょう」

 そうして、一行は冒険者ギルドのテントへ足を踏み入れた。



   ※ ※ ※



 ギルドのテント内には、数人のギルド職員と、冒険者が居た。中でもひときわ目立つのは、ギルド職員の制服を着た巨漢の狼の獣人だ。
 その巨漢はこちらに目を留めると、げっ、とでも言うかのように顔を顰め、コソコソと逃げる素振りを見せたので、麗しの伯父上がそれはもうイイ笑顔を浮かべ、彼を呼び止めた。

「バルトちゃ~ん。ちょっと、いらっしゃ~い」
「うっ……。ハイ、領主様……」

 しぶしぶ寄ってきた巨漢に、セス達は苦笑を溢す。

「セス、この子は副ギルド長のバルト・ガラン。この子には貸しがいっぱいあるから、こき使ってやりなさい」
「勘弁してくれ……」

 バルドは情けない顔をしてそう溢したが、異論は無いらしい。外見年齢が四十代くらいのバルドに対し、どう見ても二十代後半くらいの若い外見のルシアンが年上ぶって話しているのに少しばかりの違和感があるが、実のところ、その態度は間違ってはいない。
 ルシアンの実年齢は、百十八歳なのである。魔族は長命で、更に自身が持つ魔力量によって寿命が変化する種族なのだ。よって、ルシアンはその年齢でも若い体を保っている。
 
「はぁ……。それで、領主様。何の御用ですか?」

 疲れた様子でそう言うバルトに、ルシアンは面白そうに笑う。

「ふふ。ダンジョンの今集まってる情報を知りたいのよ。魔物の傾向位は分かってるんでしょ?」
「ああ、成る程……」

 バルトはそう言うと、ウエストバックから書類の束を取り出した。どうやら、ウエストバックは魔法袋らしい。

「これは領主様への提出分の現段階の分かっているダンジョンの情報です。そろそろ提出に行こうと思ってたんで、丁度良かったですね」

 そう言ってバルトは書類をルシアンに渡し、ルシアンはそれに目を通す。

「あら、珍しいわね。このダンジョン、マルチ型なのね」

 ダンジョンという物は、凡そ湧いて出て来る魔物の傾向が決まっている。その為、あらゆる種類の魔物が湧くダンジョンは珍しいものだった。

「はい。それと、マルチ型のダンジョンは規模がでかくなる傾向があります。今のところ、十七階層まであるのは確認してますが、どうにも、最下層はもっと深くなりそうです」

 それを聞き、ルシアンは目を丸くした。
 現在辺境にある二つのダンジョンは、十八階層と二十三階層までしかないのだ。しかし、バルトの言いようから、今回のダンジョンは、もっと深く、規模の大きいものになりそうだという事が分かった。

「それから、どうにもこのダンジョンは、まだ成長を続けている可能性があります」
「えっ!?」

 どういう事かと尋ねれば、バルトは少し言いにくそうにしながらも、告げた。

「恐らく、危機感を感じたのではないかと……」
「危機感?」

 疑問符を飛ばす一同に、バルトは説明する。

「ダンジョンは超大型の魔物である、という説を聞いた事は?」
「ああ、有るわね。確か、ダンジョンの心臓をも言えるダンジョンコアを魔物の心臓である魔核と見て、魔物を生み出す様から、そういう魔物であるという、アレね」

 ルシアンの披露した知識に肯定の意を込めて、バルトが頷く。

「今回、このダンジョンの発見は魔物の氾濫から始まり、そして、それを領主様がそれを殲滅する事で治めたわけですが……」

 その言葉を聞き、ルシアンを除く一同が何か気付いた様子でルシアンに視線を向けた。

「その殲滅をダンジョンも察知し、危機感を抱いたらしく、最下層にあるダンジョンコアが、さらに深く、奥へと潜り始めた様です」

 一同の視線がじっとりとルシアンに突き刺さり、ルシアンはその視線から逃れるように視線を明後日の方向へ投げ、目を合わせようとはしなかった。
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