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辺境編
第十七話 昼食
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「はぐっ、ふっ、はぐっ……」
「あらまあ、そんなに急いで食べなくても、まだありますからね。消化に悪いですから、ゆっくり食べて下さい」
「いや、冒険者ってのは大抵早食いだぜ。いつ魔物が襲ってくるか分からないからな」
「そうなの?」
「ああ。ダンジョン内のセーフポイントなら大丈夫だが、外の野営とかはそうじゃないからな」
セス達一行は、リフィルの状態の確認を終えた後、軽く自己紹介をしてから、少し早めの昼食を摂る事にした。
そして、最初は戸惑っていたリフィルだが、とてもお腹が空いていた為、今は夢中になって食べている。
「いつ頃から食べて無かったんだ?」
「ダンジョンに入った日付が一昨日でしたから、一日くらいじゃないでしょうか」
「そうか。まあ、それならサンドイッチも大丈夫か」
良い食べっぷりを見せるリフィルに、セスは胃に突然食べ物を入れて消化は大丈夫なのか心配したが、アビーの返答を聞いて安堵する。
「ふあ~……」
瞬く間に自分の分を全部食べ、水を飲んで一息ついたリフィルだが、鍋と見て少しばかり物欲しそうな顔をした。どうやら、少し足りなかったようである。
そんなリフィルの様子を見て、テオドアが自分の分のエビカツサンドをリフィルに差出した。
「食べますか?」
「えっ?」
差し出されたそれを見て、リフィルはびっくりしてテオドアを見た。
「僕、あんまりお腹が空いてないですから」
そう言ってにっこり微笑まれ、リフィルは真っ赤になった。
「はい、どうぞ」
「え、えっ? あの」
差し出され、握らされたサンドイッチに、リフィルはテオドアの顔とサンドイッチとをオロオロと交互に見た。
そして、テオドアににっこりと改めて勧められ、礼を言ってようやくサンドッチを食べた。
「あの、美味しいです」
「よかった!」
リフィルは向けられた自身に向けられたテオドアの笑顔に、ポッと頬を赤く染めた。
そんな子供二人の遣り取りを生温い視線で見守るのは、少年と大人二人である。
「テオドアは美少年だからな」
「エルフが認める絶世の美貌を持つ魔王陛下と瓜二つですもの。まあ、仕方ありませんね」
「初々しいなぁ……」
エルフと言う種族は長命で、自然を愛する種族である。
そして、種族的な特徴は、長く尖った耳と、その美貌である。
そんな美男美女が揃うエルフは、他の種族から求愛される事が多いが、それに応えることは少ない。何故なら、エルフは面食いが多いのだ。
否、面食いと言っているのは他種族だけで、エルフとしては見慣れた同族や自分の美貌が基準になっているだけで、そういうつもりは無いのだろう。結果的に、面食いとなってしまっているだけだ。
しかし、相手がエルフの審美眼に適うなら、話は別である。
目の前のテオドアの様に。
こうして、一行は生温い空気のなか、和やかに昼食を摂ったのだった。
※ ※ ※
セス達が和やかな昼食を摂っている頃、それとは逆に、深刻な顔をしている一行が居た。
それは、『光の刃』の面々だった。
「確か、十九階層だったよね」
「ああ。そこで置いて行った、って言ってたな」
辺りを見回しながら呟くチェルシーの言葉に、クリフォードが頷く。
『光の刃』の一行が探しているのは、とあるエルフの少女だった。
「十九階層のしばらく行った所で囲まれて、分断されて、どうしようもなくて置いて逃げたって言ってましたね」
苦々しい口調のキャロルに一行が思い出すのは、セーフポイントの七階層で真っ青な顔で悄然と蹲る冒険者のパーティーだった。
一体どうしたのかとその冒険者パーティーに声を掛けてみれば、エルフの少女とパーティーを組んでいたのだが、十九階層で分断され、置いて来てしまったのだという。
自分達の無力を嘆く冒険者パーティーが気の毒で、クリフォードはそのエルフの少女の救助を請け負った。
はっきり言ってしまうと、エルフの少女は死んでしまっている可能性が高い。しかし、生きている可能性もあるのだ。希望を捨てず、クリフォードは辺りを見回し、索敵した。
「死んでいる可能性の方が高いな……。その場合は、遺品だけでも持って行ってやろう」
「そうですね……」
リンジーが厳しい事を言うが、その目は少女を気の毒に思っているのを感じさせ、クラリッサがその言葉に静かに同意した。
そうして索敵しつつ辺りを探すが、エルフの少女も、その亡骸も、遺品すら見つからない。
「これは、もしかしたら何処かのパーティーに助けられた可能性が出て来たな」
突如湧き出た希望に、クリーフォードの瞳が輝く。
「まあ、有り得なくはないが、過度な期待は禁物だよ」
「そうですね。他の階層まで逃げられたけど、そこで……、という事も有りますし……」
その希望を期待しすぎるな、と言うのはリンジーとクラリッサだ。
「まあ、次の階層に進んでみようよ。何かわかるかもよ?」
「そうですわ。それに、私達も今日は二十一階層で休むのですから、そろそろ行かないと……」
チェルシーの言葉にクラリッサが時計を見ながら同意する。
そうして、一行がエルフの少女を探しながら二十一階層に来た時には時刻は夜の七時を回っていた。
そして、その二十一階層にて、ようやくエルフの少女を見付け、思わず弟を目隠しした少年と再会する事になるのだった。
「あらまあ、そんなに急いで食べなくても、まだありますからね。消化に悪いですから、ゆっくり食べて下さい」
「いや、冒険者ってのは大抵早食いだぜ。いつ魔物が襲ってくるか分からないからな」
「そうなの?」
「ああ。ダンジョン内のセーフポイントなら大丈夫だが、外の野営とかはそうじゃないからな」
セス達一行は、リフィルの状態の確認を終えた後、軽く自己紹介をしてから、少し早めの昼食を摂る事にした。
そして、最初は戸惑っていたリフィルだが、とてもお腹が空いていた為、今は夢中になって食べている。
「いつ頃から食べて無かったんだ?」
「ダンジョンに入った日付が一昨日でしたから、一日くらいじゃないでしょうか」
「そうか。まあ、それならサンドイッチも大丈夫か」
良い食べっぷりを見せるリフィルに、セスは胃に突然食べ物を入れて消化は大丈夫なのか心配したが、アビーの返答を聞いて安堵する。
「ふあ~……」
瞬く間に自分の分を全部食べ、水を飲んで一息ついたリフィルだが、鍋と見て少しばかり物欲しそうな顔をした。どうやら、少し足りなかったようである。
そんなリフィルの様子を見て、テオドアが自分の分のエビカツサンドをリフィルに差出した。
「食べますか?」
「えっ?」
差し出されたそれを見て、リフィルはびっくりしてテオドアを見た。
「僕、あんまりお腹が空いてないですから」
そう言ってにっこり微笑まれ、リフィルは真っ赤になった。
「はい、どうぞ」
「え、えっ? あの」
差し出され、握らされたサンドイッチに、リフィルはテオドアの顔とサンドイッチとをオロオロと交互に見た。
そして、テオドアににっこりと改めて勧められ、礼を言ってようやくサンドッチを食べた。
「あの、美味しいです」
「よかった!」
リフィルは向けられた自身に向けられたテオドアの笑顔に、ポッと頬を赤く染めた。
そんな子供二人の遣り取りを生温い視線で見守るのは、少年と大人二人である。
「テオドアは美少年だからな」
「エルフが認める絶世の美貌を持つ魔王陛下と瓜二つですもの。まあ、仕方ありませんね」
「初々しいなぁ……」
エルフと言う種族は長命で、自然を愛する種族である。
そして、種族的な特徴は、長く尖った耳と、その美貌である。
そんな美男美女が揃うエルフは、他の種族から求愛される事が多いが、それに応えることは少ない。何故なら、エルフは面食いが多いのだ。
否、面食いと言っているのは他種族だけで、エルフとしては見慣れた同族や自分の美貌が基準になっているだけで、そういうつもりは無いのだろう。結果的に、面食いとなってしまっているだけだ。
しかし、相手がエルフの審美眼に適うなら、話は別である。
目の前のテオドアの様に。
こうして、一行は生温い空気のなか、和やかに昼食を摂ったのだった。
※ ※ ※
セス達が和やかな昼食を摂っている頃、それとは逆に、深刻な顔をしている一行が居た。
それは、『光の刃』の面々だった。
「確か、十九階層だったよね」
「ああ。そこで置いて行った、って言ってたな」
辺りを見回しながら呟くチェルシーの言葉に、クリフォードが頷く。
『光の刃』の一行が探しているのは、とあるエルフの少女だった。
「十九階層のしばらく行った所で囲まれて、分断されて、どうしようもなくて置いて逃げたって言ってましたね」
苦々しい口調のキャロルに一行が思い出すのは、セーフポイントの七階層で真っ青な顔で悄然と蹲る冒険者のパーティーだった。
一体どうしたのかとその冒険者パーティーに声を掛けてみれば、エルフの少女とパーティーを組んでいたのだが、十九階層で分断され、置いて来てしまったのだという。
自分達の無力を嘆く冒険者パーティーが気の毒で、クリフォードはそのエルフの少女の救助を請け負った。
はっきり言ってしまうと、エルフの少女は死んでしまっている可能性が高い。しかし、生きている可能性もあるのだ。希望を捨てず、クリフォードは辺りを見回し、索敵した。
「死んでいる可能性の方が高いな……。その場合は、遺品だけでも持って行ってやろう」
「そうですね……」
リンジーが厳しい事を言うが、その目は少女を気の毒に思っているのを感じさせ、クラリッサがその言葉に静かに同意した。
そうして索敵しつつ辺りを探すが、エルフの少女も、その亡骸も、遺品すら見つからない。
「これは、もしかしたら何処かのパーティーに助けられた可能性が出て来たな」
突如湧き出た希望に、クリーフォードの瞳が輝く。
「まあ、有り得なくはないが、過度な期待は禁物だよ」
「そうですね。他の階層まで逃げられたけど、そこで……、という事も有りますし……」
その希望を期待しすぎるな、と言うのはリンジーとクラリッサだ。
「まあ、次の階層に進んでみようよ。何かわかるかもよ?」
「そうですわ。それに、私達も今日は二十一階層で休むのですから、そろそろ行かないと……」
チェルシーの言葉にクラリッサが時計を見ながら同意する。
そうして、一行がエルフの少女を探しながら二十一階層に来た時には時刻は夜の七時を回っていた。
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