『ざまぁ』エンドを迎えましたが、前世を思い出したので旦那様と好きに生きます!

悠十

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書籍化記念・コニア家の人々

マイラ・ラッツ

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『『ざまぁ』エンドを迎えましたが、前世を思い出したので旦那様と好きに生きます!』が書籍化いたしました!
二月五日発売です!
よろしくお願いいたします!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ねえ、侍女ちゃん。侍女ちゃんはやっぱりコニア家に代々仕えている使用人なの?」
 そう尋ねたのは、マイラの大切なお嬢様と契約した大精霊のローズだった。
 今は午後のお茶の時間だ。残念ながらアルフォンスはデニスと共に村へ行っており、現在はアリスとローズの二人と、給仕にマイラが居るだけだ。
 ローズの質問に、マイラは僅かに微笑んで答える。
「いいえ、私の場合は母の代からお仕えしています」
「マイラの母親は侍女頭のマヤです。マヤとマイラは私のお母様が嫁入りするとき実家から連れて来たんですよ」
「あら、そうなの?」
 マイラの母であるマヤ・ラッツは、コニア男爵家の侍女頭だ。恰幅のいい肝っ玉母ちゃんめいた貫禄がある女性だ。
「亡くなった旦那さんと大恋愛の末に結ばれたそうですよ。惚気話を聞かされたことがあります」
「まあ、お嬢様にそんなことを話したんですか?」
 母親のそれに、娘のマイラは恥ずかしそうな顔をした。
「ねえ、ちょっと、それ気になるんだけど!」
 ローズは逆に興味津々とばかりに瞳を輝かせている。
「母は自分たちの馴れ初めや惚気話を人に話すのが大好きなので、聞けば話すと思います」
「ちょっと聞いてくるわ!」
 侍女頭ちゃんはどこ~? とすっ飛んでいったローズに、アリスとマイラは顔を見合わせて苦笑したのだった。

   ***

 夜。
 草木が眠る頃、人々も眠りにつこうと暖かいベッドに入る。
 マイラは母のマヤと同じく使用人寮に住んでおり、今は一人部屋を頂いている。
 ベッドに入ったマイラは、うとうととしながらアリス達に話さなかったことを思い浮かべる。
 実は、マヤがアリスの母――マリアと共にコニア家に来たのには、訳があった。それは、マリアの年の離れた兄である子爵――ヒューゴー・ベルヒムに目をつけられてしまったからだ。
 マヤは、若い頃は大変な美人だった。
 プロポーションが良く、肉感的な色気のある美女で、多くおの男の目を奪った。
 マヤはマイラの父にしか興味がなく、二人は早々に結ばれてマイラが産まれたが、幸せな日々は長くなく、父が亡くなった。
 未亡人となり、ふと寂しそうな顔をするマヤは、匂い立つほどに美しかった。
 それを、ヒューゴーに目をつけられた。マヤは妾になるように迫られたが、それをやんわりと拒否し、逃げ回った。しかし、彼は諦めなかった。
 陰で二人の攻防が続き、それに気づいて憤慨したマリアがマヤを連れてコニア男爵家に嫁入りしたいと兄嫁たるヒューゴーの妻に内々に相談すると、彼女は強く賛同して受理した。
 そうして三人はコニア男爵家にやって来た。
 ヒューゴーにはマヤを連れていくことはギリギリまで伏せられたのは、ヒューゴーの厄介な性格をしっていたからだ。そして、それは想像通りヒューゴーの恨みを買い、後にコニア男爵家とは没交渉となった。実の妹であるマリアが亡くなったときにさえ、手紙の一つも寄越さなかったのだから、その人間性が知れるというものだろう。
 マイラは当時の母の様子を思い出しながら、コニア男爵家に来れて本当に良かったと思っている。
 最愛の夫を亡くしたマヤは、本当にまいっていた。本当なら厄介なことになってしまった仕事場を辞めたかったが、マヤを辞めさせないために紹介状を書かないという先手を打たれてしまった。紹介状がなければ、碌な仕事にありつけない。そのため、マヤは辞めるに辞められなかった。
 だから、マヤとマイラはマリアには心から感謝しているのだ。
(母さんもコニア男爵家に来て、ようやく落ち着けたのよね。威勢の良さが戻ったもの)
 最初こそ男性不信気味になっていたマヤはデニスを警戒したが、デニスは得た伴侶に夢中で、良い意味でマヤに興味を示さなかった。あるのは、伴侶を亡くした夫人への気遣いだけだった。
 お陰でマヤは調子を取り戻し、気っ風のいい笑顔を浮かべるようになった。
(ま、あのあと母さんったら太りだして、今の貫禄ある姿になっちゃったのよね)
 マヤの若い頃を知る者はよく嘆いているが、マヤもマイラも今の姿が気に入っている。何故なら、今の姿であれば妾に求めるような面倒な男が寄ってこないからだ。
(私、父さん似で良かったわ)
 マイラは父親似だ。マヤはそれを可愛いと言うが、地味であるため男にはモテない。けれど、マイラはそれに満足している。男にモテることで苦労した母を知っているからだ。
(それに、男なんて必要ないわ。今、とても充実しているし、幸せだもの)
 ふ、と淡く微笑んでマイラはゆっくりと夢の世界へ旅立った。

 しかしこの数年後、マヤの比ではないくらいの大恋愛の末、マイラは結婚することになる。
 その裏で、鼻息の荒いローズに暴走と、それを止めようとするアリスとアルフォンスの奮闘があったかどうかは・・・・・・定かではない。
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感想 59

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みんなの感想(59件)

ああ
2025.02.09 ああ

これのクリントサイドの話が
狂おしいほど読みたいです
書籍化おめでとうございます🎉
絶対買いに行きます

解除
ジャガー柳田

以前も読ませていただいたのですが、書籍化記念で1話追加されていたのでもう一度最初から読みました。
本当に面白かったー!!もう全てが詰まってる!!アリスも大好きですがローズ様ほんと大好きです笑

解除
hiyo
2025.01.26 hiyo
ネタバレ含む
解除

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