錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら、天才伯爵令息に溺愛されました

悠十

文字の大きさ
99 / 151
芽ぐむ日

第九話 ダンジョンアタック2

しおりを挟む
 レナの初ダンジョンアタックの感想としては、森や草原での魔物狩りとあまり変わらない、というものだった。
 もちろん、洞窟のような閉鎖世界なので、火の取り扱いには注意が必要だ。
 しかし、森や草原でも燃え移る可能性があるため、火魔法や火災が発生しそうな魔道具などは使用しないようにしている。
 そして、ダンジョンでは他にも決まりごとがある。
 それは、ダンジョン内にある魔物が襲ってこない安全な場所――セーフティ・ゾーンのことだ。
 体を休められるセーフティ・ゾーンは限られている。それが狭い場所なら、煮炊きできる場所も限られてくる。
 そのため、ダンジョンでは冒険者たちは焚火を共有し、材料を出し合って共に煮炊きをよく行う。
 焚火の共有は思わぬ争いも生むが、貴重な情報交換の場にもなったりする。レナたちもまた駆け出し冒険者グループと焚火の共有をして、情報交換を行った。
 そして、その際、不穏な噂話を聞いたのだ。
「仲間の置き去り?」
「そう! Bランク目前のちょっと有名なグループで、下層へ向かったんですけど、魔物との戦闘で分断されて、助けられず、一人残して仕方なく撤退したらしいんです。」
 焚火を囲み、レナの隣に座るのは、十二、三歳くらいの少女だ。
 彼女は男女ふたりずつの四人グループのリーダーで、昼食を摂るべく火を起こそうとしたところ、場所が狭かったため、レナ達と同じ火を囲むことになったのだ。
 ちなみに、彼女の仲間たちは、チアンの顔を見て魂を抜かれたように呆けている。
 彼女は昼食のトマトリゾットを食べながら、興奮したように話しだした。
「でも、すっごく怪しいんですよ! 仲間を失って悲しんでる、って顔してましたけど、あれ、絶対フリですよ! あの人たち、置き去りにした仲間の遺産分配でもめてたんです! そのお金で救助隊雇えばいいのに、すっかり死んだものとして扱ってるんですから!」
 冒険者は基本、根無し草だ。故郷の家族に自分の死後お金が行くようにしている者が多いが、組んでいるパーティーメンバーに冒険者ギルドに預けているお金が支払われるようにしている場合もある。
揉める程の金額なら、救助隊を雇い、助けに行けただろう。むしろ、それを期待してパーティーメンバーにお金が行くようにしている者も居るのだ。そのお金を使って自分を助けてくれ、と――
「その遺産も絶対救助依頼のためのお金ですよ! ギルドの方だって、それを見越してパーティーメンバーに素早く遺産の支払いをしているわけですし! けど、それを使わずにいるんだから、あの置き去りはきっとわざとです!」
 そして、どうやらそのパーティーは解散するつもりらしい。
 パーティーの人間が新しく誰かと組むべく声掛けを行っているそうだ。
 上層で訓練中のレナたちに声がかかるようなことは無いだろうが、しかし……
 『台所錬金術部』の面々の視線が、チアンに集まる。
 ネモが嫌そうな顔をし、溜息をつくのが視界の端に映った。彼女はここでチアンを一人にすれば、絶対に厄介なことになると思ったのだろう。
 それが、レナたちとネモたちの別行動が決まった瞬間だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎宣伝です(笑)
『錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら天才伯爵令息に溺愛されました』が販売開始されました。
書籍化にあたり、多少の修正、加筆がございます。
もしよろしければ、お手に取ってご覧いただけましたら幸いです。



しおりを挟む
感想 453

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。