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恋愛はご自分の力でされるのが良いと思いますよ?
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ハルトは考えながらも落ち着かなかった。
女神が横に立ち、ずっと見つめているからだ。しかも微動だにせずハルトを見つめている。
「……あの、一人にしてもらえませんか?」
<この白い空間に一人で残されると、常人は発狂しますよ?>
「病気にならない身体になっているなら、大丈夫ですよね?」
<確かにその通りです>
ハルトにとってこの返事は喜ばしいものだった。
ハルトの認識の『病気にならない身体』というのは精神病なども含まれていたのだが、自分の心を読んでそのイメージを感じ取った女神がちゃんと能力に反映してくれたのか気になっていたのだ。
女神の返答からするに、正しく反映されているらしい。
偶然とはいえ、それが確認できてハルトはホッと胸を撫で下ろす。
これで状態異常耐性もついていることになる。
<では、考えがまとまりましたら呼んでください>
そう言って女神はテレビの映像が消えるように、一瞬で消えて行った。
「……呼べば来てくれるってことか。それって、結局監視されてる?」
<その通りです>
女神の声が頭に響く。結局、姿が見えなくなっただけらしい。あれは会話用の仮の姿なのかもしれない。
何も変わっていない様な気がするが横で見てられるよりは落ち着くので、ハルトは『まあいいか』と小さく呟くと能力について考える作業を始めた。
しばらくして……。
「女神様!質問があります!」
時計を持っていなかったせいで正確な時間は分からなかったが、彼の体感で半日ほど過ぎた頃にハルトは声を上げた。
<はい。どうぞ>
女神は一瞬で現れる。
相変わらず、まつ毛がすごい。
「全ての魔法に適性があるようにはできるかな?」
<概念を確認。その能力はすでに受理されている翻訳スキルに含まれています。なお適性のみで最初の学習は必要になります>
「マジで!!!???」
ハルトは跳び上がりそうになるほど驚いた。
嬉しい誤算だ。
魔法は技術で、特殊な言語で操るという事なのだろう。確かにそういう設定のラノベもあるが、まさかこれから行く世界がそうだとは思っていなかった。
それならば『翻訳スキル』に使用されたリソースが異様に多いのも頷けた。
「あ、じゃあ、すでに一回受理されたアイテムボックスは魔法に含まれないってことですよね!?」
<その通りです。あなたの概念のアイテムボックスは魔法では再現不可能です>
「それじゃ、オレが魔法だと思ってるものの中にも魔法じゃないものもありうるのか……」
<その通りです。魔法の概念は確認されていますが、細分化されたもの全てが存在するわけではありません>
「でも、魔法でやれないなら他の人たちも使えないってことだから問題ないのか?うーん。悩むなぁ……。アイテムボックスは便利なんだよなぁー」
腕を組んで悩む。
「うん、やっぱり荷物は少ない方が良い!アイテムボックスを確定で!」
<確定されました。残りの能力を選んでください。使用可能リソースは9.7%です>
「それから即死回避はどうだろ?」
<概念を確認。受理されませんでした。リソース不足です>
「じゃ、肉体の完全自動再生。不老化も含めたやつ」
<概念を確認。受理されました。リソースの1.9%が使用されます。確定しますか?>
「やっぱり自分の身体だけに関係することは少なく済むんだな。確定で!」
<確定されました。残りの能力を選んでください。使用可能リソースは7.8%です>
即死や老化をしないのはありがたい。そう、ハルトは喜んだ。
ただ、不老とセットになっていることが多い不死は彼は望まなかった。
宇宙で考えるのを止めたり、ある種の植物に寄生されて妄想の中で狐と戦い続けるのは嫌だった。
「あの……元の世界と行き来できる能力は……」
<受理されませんでした。リソース不足です。なおこの能力はリソースを100%使用していても受理不可能でした>
「ですよねー。女の子に好かれまくる能力は……」
<受理されませんでした。リソース不足です。恋愛はご自分の力でされるのが良いと思いますよ?>
「……その、すみません……」
事務的な受け答えばかりしていた女神が急に怒ったような口調になる。
ダメ元で言ったのだが、バッサリと斬られてしまってハルトは顔を真っ赤にして頭を下げた。
感情あったんだな、女神様。と、ハルトは恥ずかしさに沈みながら考えた。
「じゃ、転移能力は魔法に含まれますか?」
<空間転移は魔法の概念内には存在しません。あなたの概念内の空間転移であればリソースの7.3%が使用されます>
「なるほど。アイテムボックスもそうだったし、空間魔法が存在しないのか。では確定します」
<確定されました。残りの能力を選んでください。使用可能リソースは0.5%です>
残り0.5%。
病気にならない身体と同じリソースの使用量だ。
ハルトは悩む。そのまま無駄にするにはもったいない量だ。自分自身の身体の範囲の能力なら受理される範囲だろう。
「じゃあ……自分のイメージ通りに身体を動かせる能力は?」
強い身体になっても、自分の思う通りに動かせなくては意味がない。
ひょっとしたら『世界で一番強い人類』に含まれる内容かもしれないが、その確認を兼ねて尋ねてみた。
<受理されました。リソースの0.6%が使用されることになりますが、0.1%の誤差は許容範囲内です。確定しますか?>
「お願いします」
<確定されました。おめでとうございます。準備作業が終了しました>
全ての能力が決定し、女神はニッコリと微笑んだ。
「それでは異世界を楽しんでください」
ハルトの周囲にピンク色の光の泡が現れる。
異世界に転移するエフェクトということなのだろう。女神の笑顔を見つめながらハルトは気を失うのだった。
女神が横に立ち、ずっと見つめているからだ。しかも微動だにせずハルトを見つめている。
「……あの、一人にしてもらえませんか?」
<この白い空間に一人で残されると、常人は発狂しますよ?>
「病気にならない身体になっているなら、大丈夫ですよね?」
<確かにその通りです>
ハルトにとってこの返事は喜ばしいものだった。
ハルトの認識の『病気にならない身体』というのは精神病なども含まれていたのだが、自分の心を読んでそのイメージを感じ取った女神がちゃんと能力に反映してくれたのか気になっていたのだ。
女神の返答からするに、正しく反映されているらしい。
偶然とはいえ、それが確認できてハルトはホッと胸を撫で下ろす。
これで状態異常耐性もついていることになる。
<では、考えがまとまりましたら呼んでください>
そう言って女神はテレビの映像が消えるように、一瞬で消えて行った。
「……呼べば来てくれるってことか。それって、結局監視されてる?」
<その通りです>
女神の声が頭に響く。結局、姿が見えなくなっただけらしい。あれは会話用の仮の姿なのかもしれない。
何も変わっていない様な気がするが横で見てられるよりは落ち着くので、ハルトは『まあいいか』と小さく呟くと能力について考える作業を始めた。
しばらくして……。
「女神様!質問があります!」
時計を持っていなかったせいで正確な時間は分からなかったが、彼の体感で半日ほど過ぎた頃にハルトは声を上げた。
<はい。どうぞ>
女神は一瞬で現れる。
相変わらず、まつ毛がすごい。
「全ての魔法に適性があるようにはできるかな?」
<概念を確認。その能力はすでに受理されている翻訳スキルに含まれています。なお適性のみで最初の学習は必要になります>
「マジで!!!???」
ハルトは跳び上がりそうになるほど驚いた。
嬉しい誤算だ。
魔法は技術で、特殊な言語で操るという事なのだろう。確かにそういう設定のラノベもあるが、まさかこれから行く世界がそうだとは思っていなかった。
それならば『翻訳スキル』に使用されたリソースが異様に多いのも頷けた。
「あ、じゃあ、すでに一回受理されたアイテムボックスは魔法に含まれないってことですよね!?」
<その通りです。あなたの概念のアイテムボックスは魔法では再現不可能です>
「それじゃ、オレが魔法だと思ってるものの中にも魔法じゃないものもありうるのか……」
<その通りです。魔法の概念は確認されていますが、細分化されたもの全てが存在するわけではありません>
「でも、魔法でやれないなら他の人たちも使えないってことだから問題ないのか?うーん。悩むなぁ……。アイテムボックスは便利なんだよなぁー」
腕を組んで悩む。
「うん、やっぱり荷物は少ない方が良い!アイテムボックスを確定で!」
<確定されました。残りの能力を選んでください。使用可能リソースは9.7%です>
「それから即死回避はどうだろ?」
<概念を確認。受理されませんでした。リソース不足です>
「じゃ、肉体の完全自動再生。不老化も含めたやつ」
<概念を確認。受理されました。リソースの1.9%が使用されます。確定しますか?>
「やっぱり自分の身体だけに関係することは少なく済むんだな。確定で!」
<確定されました。残りの能力を選んでください。使用可能リソースは7.8%です>
即死や老化をしないのはありがたい。そう、ハルトは喜んだ。
ただ、不老とセットになっていることが多い不死は彼は望まなかった。
宇宙で考えるのを止めたり、ある種の植物に寄生されて妄想の中で狐と戦い続けるのは嫌だった。
「あの……元の世界と行き来できる能力は……」
<受理されませんでした。リソース不足です。なおこの能力はリソースを100%使用していても受理不可能でした>
「ですよねー。女の子に好かれまくる能力は……」
<受理されませんでした。リソース不足です。恋愛はご自分の力でされるのが良いと思いますよ?>
「……その、すみません……」
事務的な受け答えばかりしていた女神が急に怒ったような口調になる。
ダメ元で言ったのだが、バッサリと斬られてしまってハルトは顔を真っ赤にして頭を下げた。
感情あったんだな、女神様。と、ハルトは恥ずかしさに沈みながら考えた。
「じゃ、転移能力は魔法に含まれますか?」
<空間転移は魔法の概念内には存在しません。あなたの概念内の空間転移であればリソースの7.3%が使用されます>
「なるほど。アイテムボックスもそうだったし、空間魔法が存在しないのか。では確定します」
<確定されました。残りの能力を選んでください。使用可能リソースは0.5%です>
残り0.5%。
病気にならない身体と同じリソースの使用量だ。
ハルトは悩む。そのまま無駄にするにはもったいない量だ。自分自身の身体の範囲の能力なら受理される範囲だろう。
「じゃあ……自分のイメージ通りに身体を動かせる能力は?」
強い身体になっても、自分の思う通りに動かせなくては意味がない。
ひょっとしたら『世界で一番強い人類』に含まれる内容かもしれないが、その確認を兼ねて尋ねてみた。
<受理されました。リソースの0.6%が使用されることになりますが、0.1%の誤差は許容範囲内です。確定しますか?>
「お願いします」
<確定されました。おめでとうございます。準備作業が終了しました>
全ての能力が決定し、女神はニッコリと微笑んだ。
「それでは異世界を楽しんでください」
ハルトの周囲にピンク色の光の泡が現れる。
異世界に転移するエフェクトということなのだろう。女神の笑顔を見つめながらハルトは気を失うのだった。
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