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……なんか、誰かの思惑を感じるなぁ……
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「えーと、システムの不具合みたいですね……」
「……やっぱりか……」
暗号化された文章を読んだハルトの言葉に、どう見てもロボットにしか見えない男が呟いた。
各種工具のアタッチメントを装備しており、見るからにエンジニアぽい。このビルの機器の管理担当か何かだろう。
「システムのほとんどがダウンしているため、ネットワーク上から根本的な原因が調べきれないみたいです。マザーコンピューター?……ホストコンピューターかな?呼び方が複数あるみたいですが、とにかく処理の中心となっているコンピューター内のバグらしいことは突き止めたみたいですが、それを直接操作して詳細を確認できる場所に入るための経路もバグの影響で閉鎖されているようですね。バグで非常事態だと判断したコンピューターが、人間を全部締め出してしまったようです」
「……最悪だ」
「あ、もし操作できても原因究明と復旧に一週間はかかるみたいですね。古代コンピューター言語がどうとか書いてあります」
ハルトはシイナが表示させる画面を次々読んでいく。
周囲の人間たちからしたら、文字化けした文章を読んで適当なことを言っているようにしか見えないが、ハルトは暗号化したままの文章を翻訳スキルで確実に読み解いていた。
表示されている内容は、緊急連絡文章。
送電が正常でシステムが生きていたら、警報を鳴り響かせながら局長の目の前に強制表示されるはずだったものだ。
だからこそ、端末の一つに過ぎないシイナでもパス無しで容易に引き出すことができたのだろう。
その文章を読みながら、ハルトは少し前にシイナがしてくれた話を思い出していた。
昔にコンピュータネットワークが破綻したときの話だ。
この惑星の基礎となっているコンピュータネットワークは前文明時代に構築されたものを利用しており、古いコンピュータ言語に対応できる人間が少なくて復旧まで時間がかかったという話だ。
同じような状況になっているのに違いない。
その時はネットワークだけだったらしいが、今は送電が停止したことであらゆる機器どころか人間たちにまで影響を与えている。
歴史に残るような大災害が発生している。
ハルトはなおも文章を読み進める。
幸い、コンピューターネットワークの根幹になっているコンピューター自体は通常の送電経路からは外れている。現代では再現不可能な惑星自転発電というのを基に、全個体電池という技術で建物全体に電力を溜めているため電力切れはないらしい。おかげで内部の端末に接触できれば、復旧は可能だ。
ただ、バグが発生したことで非常事態だと判断されて、中にいた人間はすべて建物から追い出されてしまっている。
建物全体を電池として利用しているので建物を破壊するわけにはいかない。通風孔などから侵入しようにも、あちらの警備設備が中途半端に生きている所為でそれも不可能らしい。
現在は送電に頼っていない宇宙船などに協力を求めて何とか転送して入れないか試しているが、それも上手くいっていないようだ。
「……なんか、誰かの思惑を感じるなぁ……」
ハルトはポツリと呟いた。
送電が切れたことで通常の手段では誰も入れない場所。
そこにある、容易に理解できないコンピューター言語で制御されているコンピューター。
お膳立てが揃いすぎだろうと、ハルトは思った。
ハルトが鈍くても、ここまでハルトにとって都合のいい状況が揃っていれば気が付かないわけがない。
この状況は、ハルトのために準備されていた。
「チュートリアルってことなのかな?」
ゲームに例えてハルトは呟いた。
異世界転移ファンタジーのお約束で言うなら、転移してすぐにお姫様の乗った馬車が野盗に襲われている場面に遭遇して、チート能力を駆使して助け出すご都合主義の展開のようなものだろう。
その対象が惑星一個単位というのは、いささか豪快過ぎるが。
「まあ、いいか……」
考えてみれば、最初にこの惑星に立ち寄る予定の船に転移させられた時点で仕組まれていたのだろう。
廃棄寸前で見ず知らずの人間に譲っても惜しくない宇宙用の端末のシイナが最初にハルトに接触をしたというのすら、怪しい。
ハルトはさすがにすべてが仕込みだとまでは思わないが、こういう事件が起こる場所を事前に察知して転移させられた可能性は高いと考えた。
『どうかしましたか?』
「なんでもない。まあ、この事件はオレが解決しないといけないものだなと思っただけだよ」
この状況に全力で乗っかる覚悟を決めたハルトだった。
「……やっぱりか……」
暗号化された文章を読んだハルトの言葉に、どう見てもロボットにしか見えない男が呟いた。
各種工具のアタッチメントを装備しており、見るからにエンジニアぽい。このビルの機器の管理担当か何かだろう。
「システムのほとんどがダウンしているため、ネットワーク上から根本的な原因が調べきれないみたいです。マザーコンピューター?……ホストコンピューターかな?呼び方が複数あるみたいですが、とにかく処理の中心となっているコンピューター内のバグらしいことは突き止めたみたいですが、それを直接操作して詳細を確認できる場所に入るための経路もバグの影響で閉鎖されているようですね。バグで非常事態だと判断したコンピューターが、人間を全部締め出してしまったようです」
「……最悪だ」
「あ、もし操作できても原因究明と復旧に一週間はかかるみたいですね。古代コンピューター言語がどうとか書いてあります」
ハルトはシイナが表示させる画面を次々読んでいく。
周囲の人間たちからしたら、文字化けした文章を読んで適当なことを言っているようにしか見えないが、ハルトは暗号化したままの文章を翻訳スキルで確実に読み解いていた。
表示されている内容は、緊急連絡文章。
送電が正常でシステムが生きていたら、警報を鳴り響かせながら局長の目の前に強制表示されるはずだったものだ。
だからこそ、端末の一つに過ぎないシイナでもパス無しで容易に引き出すことができたのだろう。
その文章を読みながら、ハルトは少し前にシイナがしてくれた話を思い出していた。
昔にコンピュータネットワークが破綻したときの話だ。
この惑星の基礎となっているコンピュータネットワークは前文明時代に構築されたものを利用しており、古いコンピュータ言語に対応できる人間が少なくて復旧まで時間がかかったという話だ。
同じような状況になっているのに違いない。
その時はネットワークだけだったらしいが、今は送電が停止したことであらゆる機器どころか人間たちにまで影響を与えている。
歴史に残るような大災害が発生している。
ハルトはなおも文章を読み進める。
幸い、コンピューターネットワークの根幹になっているコンピューター自体は通常の送電経路からは外れている。現代では再現不可能な惑星自転発電というのを基に、全個体電池という技術で建物全体に電力を溜めているため電力切れはないらしい。おかげで内部の端末に接触できれば、復旧は可能だ。
ただ、バグが発生したことで非常事態だと判断されて、中にいた人間はすべて建物から追い出されてしまっている。
建物全体を電池として利用しているので建物を破壊するわけにはいかない。通風孔などから侵入しようにも、あちらの警備設備が中途半端に生きている所為でそれも不可能らしい。
現在は送電に頼っていない宇宙船などに協力を求めて何とか転送して入れないか試しているが、それも上手くいっていないようだ。
「……なんか、誰かの思惑を感じるなぁ……」
ハルトはポツリと呟いた。
送電が切れたことで通常の手段では誰も入れない場所。
そこにある、容易に理解できないコンピューター言語で制御されているコンピューター。
お膳立てが揃いすぎだろうと、ハルトは思った。
ハルトが鈍くても、ここまでハルトにとって都合のいい状況が揃っていれば気が付かないわけがない。
この状況は、ハルトのために準備されていた。
「チュートリアルってことなのかな?」
ゲームに例えてハルトは呟いた。
異世界転移ファンタジーのお約束で言うなら、転移してすぐにお姫様の乗った馬車が野盗に襲われている場面に遭遇して、チート能力を駆使して助け出すご都合主義の展開のようなものだろう。
その対象が惑星一個単位というのは、いささか豪快過ぎるが。
「まあ、いいか……」
考えてみれば、最初にこの惑星に立ち寄る予定の船に転移させられた時点で仕組まれていたのだろう。
廃棄寸前で見ず知らずの人間に譲っても惜しくない宇宙用の端末のシイナが最初にハルトに接触をしたというのすら、怪しい。
ハルトはさすがにすべてが仕込みだとまでは思わないが、こういう事件が起こる場所を事前に察知して転移させられた可能性は高いと考えた。
『どうかしましたか?』
「なんでもない。まあ、この事件はオレが解決しないといけないものだなと思っただけだよ」
この状況に全力で乗っかる覚悟を決めたハルトだった。
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