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水戸の御◯公①
しおりを挟む「おい、これはどういう事だ!」
甲高い高音が教室内に響き渡る。
多くの目が発声源であるネロに注がれる。
見れば彼の顔は怒りに満ちていた。怒髪天と称するに相応しい熱量だ。
その衝動を抑える為か、はたまた無意識か右手に所持した薄い冊子は歪められ、瓢箪の形を作る。
彼が怒鳴った先にいるのは俺。
ネロは俺の両隣にラディウスとナハトがいるにも関わらず、その冊子を机に叩きつけ、俺をギロリと睨む。
それは馴染みのない雑誌だった。
皺だらけの表紙には数式と魔法学の第一人者の写真が掲載されており、余った余白部分には週刊誌のような文言が隙間なく並んでいる。表紙と持ち主から推察するに恐らく研究者向けの書籍なのだろう。
それを叩きつける辺り、この本の中に彼の怒りの原因が秘められているようだ。
しかしそれが俺とどう繋がるのか。
とんと心当たりはなく首を傾げる俺に、ネロは小さく舌打ちを零す。
「これを見ろ!」
続け様に開帳した頁の一面に視点を映した瞬間、俺は僅かに目を見開く。
そこにあったのは特許申請した俺の折り紙とそれを片手にインタビューを受ける見知らぬ研究者らしき男だった。
そしてその取材内容は折り紙製作者は自分であり、現在商品化の為に動いているというもの。
「僕があれほど言ったのに、何勝手に権利を譲渡しているんだよ!」
「しておりませんが?」
「はぁ!? じゃあこれは何なんだよ!」
(´・ω・`)<ソンナン言ワレマシテモと困惑する俺の横から仲裁が入る。
「ネロ、一先ず落ち着こうか」
「しかしっ!」
「君の気持ちは分かったから。ね?」
ラディウスに窘められたネロが矛を収める。と言っても渋々であり、顔はまだ不満の火を消してはいない。
爆発間近の爆弾が不発に終わり、安堵ともいうべき緩んだ空気が広がる中、ラディウスは穏やかに言う。
「やはり彼だったみたいだね」
写真を一瞥したラディウスは軽く肩を竦めた。
「――ネロ」
「え、あ、はい」
「まず最初にこの件においてナギには一切の非は無いよ」
それを聞いたネロの顔に戸惑いの表情が生まれた。なんでラディウスが断言出来るのか。返事はしながらも纏う空気は彼に説明を求めていた。
一方、庇われた俺もネロと同じ顔でラディウスを見つめる。それが逆に俺の無罪を証明したらしく、ネロから向けられていた怒りが完全に霧散した。
ラディウスの視線がネロから俺へと移る。その温かい眼差しに心臓が跳ねた。
只の侍従に向けるにはあまりにも甘い。脳裏に数日前の台詞が反芻する。
それにドギマギしていると逆隣から極寒の冷気が放たれ、今度は心臓ではなく全身が跳ねた。
「その目は止めろ」
「君には向けていないよ」
頭上でぶつかり合う火花に冷や汗が伝う。
「あ、あの。殿下、この件について何かご存知なのですか?」
「僕も聞きたい」
意外にもネロの援護射撃が続いた。といっても俺や周りを気遣ってではなく、純粋に疑問の答えを知りたがっての発言だ。でも助かった。
「特許申請の盗用を訴える投書があってね、ナギには悪いけど利用させてもらったんだ」
ラディウスはそう言い放つ。
「あ、だから偽名で」
「そう。更に獲物が食いつきやすいように手心を加えてね」
じゃあアレはコレはと小難しい応酬が続く中、取り残される俺。
そんな俺にナハトが話しかける。
「折り紙というのは何だ?」
「あ、えっとですね。紙で折った作品の事です」
未だに話し込む彼等の横でノートを一枚破き、手早く犬の形になるよう折って彼に渡す。
「こういうのです」
「――貰っていいか」
「はい、構いませんが……」
「家宝にする」
「しないでください」
これただの折り紙ぞ?
「……ナギ」
「あ、はいっ! なんでしょう、殿下」
「私にも作って」
お前もかい!
「あ、それと放課後は空けておいて。不届者を懲らしめに行くからさ」
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