転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!

くすのき

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最終章〜漬物は世界を救う!〜

麹漬けとキムチ!


 皇城内、円卓の間。
 そこには名前の如く魔法鉱石を切り出して作られた巨大な円卓が鎮座しており、そこを三十九人分の、同じく魔法鉱石を使用した豪華な椅子が囲む。

 主に国の政や重要法案を通す場所だ。
 平時であれば一人二人の欠席は珍しくないが、現在は半分ほどが空席となっている。
 その玉座にてアルヴィスは眉を顰める。
 
 自身の誘拐、蛇による宰相暗殺と成りすまし、暗躍、陛下の容態、城内における人的被害、大地震による城下及び各地の被害報告と支援体制構築、空城の調査、敵方の招待など――。
 会議はかつてない紛糾をみせていた。
 開始1時間足らずにも関わらず、皇太子のご尊顔は、夜勤勤務後に急遽決定したリモート会議を経験したような疲労困憊具合だった。
 内通者捜査と情報共有の為、強制的同席した俺は、同じく招集された隣席の婚約者へ目を移す。
 辟易とするフェルディナント。
 腹の中では調査に赴いた弟を羨ましがっていることだろう。
 彼は今、ロセッティ公爵と祖母と共に城内に潜んでいるやもしれぬ洗脳騎士と魔物化騎士の掃除にあたっている。
 
「それでは何の解決にもならぬ!」
「そんな訳なかろう!」

 もはや議論ではなく罵り合いに近いそれに、苦笑しつつ、不自然にならない程度に議員達の頭上を窺う。既に成りすまし等の調査を終えているが、都度更新される情報や狙いをこうして掻き集めていた。 
 まあ大半は、これを期に自身の影響力や発言権の強化、それからいけ好かない相手への攻撃に、自領地への多大な予算配分要求といった小狡い野望ばかりだが。

 三時間が経過した頃、重鎮達が去った室内でアルヴィスが疲れた声を発する。


「どうにか終わった……」
「お疲れ様でございました」
「面倒臭ぇ上に回りくどい会議だったな」

 至極その通りな指摘に、アルヴィスも俺も苦笑いで同意を示す。

「それが貴族会議というものだ。お前も嫡男だったら否が応でもこういう場に参加する事になっていたぞ」
「俺、三男でほんと良かった!」

 嘘偽りのない台詞に笑う他ない。
 代替案も出さない癖して文句だけつけて責任は取らないから利益と金は寄越せ。
 まさか異世界でもそう宣う下衆が多いのは俺も驚いたが、遠からずその世界で生きていかなければならないアルヴィスには同情を禁じ得ない。
 せめて少しでも慰めになればと、先程得た情報を紙にして手渡す。

「すまん、助かる。今後もこうして教えてもらえると有り難いのだが……いや。何でもない。忘れてくれ」
「承知致しました」

 精霊眼に依存する危険性とそうする事によって生じる様々な不利益を瞬時に察してだろう。賢明な判断だと思う一方で、少しばかり寂しくなる。

「? 友達なんだから別に良くね?」
「フェル様……」
「非常事態であれば問題はないだろうな」

 未だピンと来ていない彼に後で説明すると告げ、今後について尋ねる。
 現状、臥せった陛下と皇妃陛下に代わり、皇太子であるアルヴィスが国政を担っているが、彼は今後俺達と共に、ロキの招待に応じなければならない。
 議会では一旦先送りとしたが、留守を任せるに足る存在が居ないのは非常に問題だ。
 故に容態が安定次第、陛下に頑張って頂くしか道がない。

「いま四大公爵、いや三公爵に要請はしている。流石に皇妃か今の陛下では全ては担えないからな」

 それが一番妥当で現実的な策だろう。
 あと俺が言える事は、蛇強襲に備えて漬物シリーズを一本でも多く作成すべく調合室と材料を借り受けるだけ。
 唇を開こうとした際、部屋の扉が豪快に開く。

「アルビス君、終わったべさ」
「婆ちゃん!?」

 鎧姿の祖母と婚約者、ロセッティ公爵の帰還である。
 一層の歴戦の猛者感に何とも言えない表情を浮かべていると、傍らのフラウディオの存在が目に入る。大捕物でもあったのか、やや疲労を滲ませた顔だ。

「フラウ様、どうかしましたか?」
「あ、ラシェ。――ちょっと兄さん、二番目の方に出会してね」

 二番目の兄。
 かつて身内のみの婚約式と10歳記念の魔物狩りでお目にかかった方だ。
 公爵様似の長男三男四男とは異なり、夫人と酷似した美貌を持ち、次期領主補佐の他に、魔法や魔法具の開発を生業にしている方だっと思い出す。

「兄貴が? 何しに来たんだ?」
「あの空に浮かぶ城の調査だよ」
「あー……」
「にしては浮かない顔してんな」
「ちょっと嫌な宿題出されたんだよ」
「頑張れ!」

 大丈夫だろうかと心配する俺に、フラウディオは問題ないと微笑む。
 少し気にはかかるもロセッティ公爵に目線をずらし、挨拶する。

「君も無事で何よりだ。――殿下。ご命令に従い、城内の検分を終えました事をここにご報告致します」
「ご苦労。公爵から見て違和感や異変などはあったか?」
「私の目からは特には。ただ――」

 静かに跪いた公爵は淡々と声を発する。
 城内の様子、魔物化した騎士の変化経路、配下と置き換わったホムンクルスの処理、宰相の遺体発見。

「――以上になります」
「っ、まさか蛇の魔の手がそこまで迫っていようとはな……」

 思った以上の被害に表情が曇る。

「この分では城下と他領も少なからず影響があると見てまず間違いないだろう」
「ええ。ロセッティ領も他人事では居られなくなりました」
「しかし、現状、ツバメ殿とラシェルにしか見分けがつかないとなると」
「そんなら瑛坊のポーション使えや一発だでな」
「はぁっ!?」

 突然の矛先に素っ頓狂な声が出た。
 俺の漬け物にそんな機能はない。

 全員の視線が集中する中、俺はインコのように細かく首を振る。縦ではなく横に。
 それを見て再び祖母へ視線の矢が集中するが、祖母はあっけらかんとしつつ、「新しい漬け物二つ作れるようになったっけ、その片方の一滴を相手に使えや一発じゃて」という衝撃の事実を暴露する。

 たぶん俺は今、マル◯ルの召喚獣を目にした魔物食大好き男の顔と同じ感じだろう。
 戻る視線の矢。

「つ、作ってみま~す……」

 そうして完成した漬け物シリーズは――



 【ラシェルのポーションVer5】

 回復量:小
 含有神聖力:大
 効果:一部ホムンクルス特効
 味:麹漬け


 【ラシェルのポーションVer6】

 回復量:並
 含有神聖力:極大
 効果:飲んだ者による
 味:キムチ

 ※1日1本しか作成不可





 ……わぁ、大盤振る舞い(白目)。

 因みに一滴舐めた皆(一部除く)の反応は「「「「「「「不味い!!!!」」」」」」」

 ――だった。
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