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驚いて固まったままのレオニールに後ろから声がかかった。
「おーい、レオニール誰が来たの?」
・・・・・・。
「あの~、呼ばれていますよ?」
「あ、ああ」
反応が薄いままだし、このままお礼を言えばいいか。
「え~と、昨日医務室に運んでいただいたと聞きましたの。どうもありがとうございました」
「ああ」
お礼も言ったしもういいよね。
「それでは失礼します」
「あ~~!フォーライト姉妹じゃん!エルシア様は今日も女神のように美しいね。妹のフィオナちゃんも評判通りの可愛らしさだね」
痺れを切らしたのかレオニールの後ろから顔を出した軽そうな男。
ああ、この人転生者と仲良くしていた人だ。
いや、転生者だけでなく女なら誰にでも声をかけていた。もちろんフィオナにも・・・無理だ。私はチャラ男は好きじゃない。
で、次に出てきたのはリオネル殿下。
生徒会長だもんね・・・居てもおかしくはない。
「エルシア嬢!来てくれたんだね!さあ早く中に入って!ラシュベルお茶の用意を!」
殿下にはエル姉様しか見えていないんだね。
デカい私を素通りして後ろのエル姉様にそれはもう満面の笑みを向けている。嬉しさが隠しきれていないよ。
やっぱりワンコだ。
「いえ、お気遣いなく。それにもう用は済みましたので失礼しますわ」
エル姉様・・・通常運転だね。
引き止めるリオネル殿下に失礼しますと頭を下げて背を向けて歩き出そうとした時、今まで固まっていたレオニールに手首を掴まれた。
「フィー、フィオナ嬢はもう大丈夫なのか?」
「え、あ、はい」
「そうか・・・」
「・・・」
心配してくれていたんだ。
それにしてもレオニールって背が高い。私より頭ひとつ分は高い。これだったらお姫様抱っこも余裕でできたか?
「おいレオニールいつまでフィオナ嬢の手を握っているんだ?」
そうだった。手首を掴まれたままだった。
リオネル殿下に言われても離す気配がない。
「あの「そろそろ離して下さいませ」」
「・・・わ、悪い!」
エル姉様の声に反応してやっと離してくれた。
もう一度お礼を言って、エル姉様に手を引かれてその場を後にした。
結局何だったんだろう?体調が悪かったのかな?
「レオニールが令嬢の手首を掴むなんて驚いた」
「私はレオニールは女性に興味がないのかと思っていましたよ」
「だよな」
実際興味はない。
・・・いや、フィオナ嬢のことだけは気になる。
今日は昨日と違って顔色も良かった。
まさか、お礼を言うためにわざわざ俺に会いに来てくれるなんてな。
目が会った瞬間、時間が止まったような不思議な感覚がした。彼女の藍色の瞳が真っ直ぐに俺に向けられたのは今日が初めてかもしれない。
あの時ですら俺は彼女の目の端に映っていただけだった。
「フィオナちゃんって実物はすっごく可愛かったね。でも僕がどんなに頑張っても彼女は相手にしてくれなさそうだよね。残念」
彼女に下手に手を出したら死ぬぞ?
「エルシア嬢の妹に遊びで手を出すのはやめてくれよ」
同感だ。
「アンバーには最近お気に入りの子がいるだろ」
「・・・でもその女俺にも色目使ってきたぞ」
なるほどね。
アンバーと仲良くし、あわよくばその繋がりから高位貴族の子息との婚姻でも目論んでいそうだな。
「ああ!あの子ね。隠しているつもりなんだろうけど、下心見え見えでお馬鹿で可愛いんだよ。それにあの子可愛い顔してかなりえげつない性格しているよ」
どんな女だよ。
「・・・私にもよろけた振りしてより掛かろうとしてきた」
「実は私にも上目遣いを使ってきましたが、面倒なことになる前に無視を決め込みました」
おいおい、俺以外全員じゃないか。
凄い女だな。
「あの日、『異界の使者』の会話を聞いてなかったら私はその阿呆な令嬢を利用してエルシア嬢に親しいところを見せつけていたかもしれない」
殿下の言葉にラシュベルとグレンも気まずそうに頷いている。
「私も取り返しのつかないことになっていたでしょうね」
「俺も捨てられていたかもしれない」
・・・・・・。
もう遅い気がするが・・・。
「で、えげつないってどんな風にだ?」
「自分に振り向かない男はどんな手を使っても手に入れようとするね。・・・僕があの子の側にいたら君たちに近づけないように出来るでしょう?」
「それで近くに居たのか・・・」
「アンバーには悪いがそんな強かな女と関わったら今度こそリナに婚約破棄されてしまいます」
「俺もベルティナに捨てられるのは御免だ」
「なるべくあの子を見張っておくよ。でもフィオナちゃんだけど、どこかで会ったことがある気がするんだよね~」
「ここでアンバーの口説きの常套句を使っても意味がないぞ」
「いやいや本当に!」
まあ、実際会っているからな。しかも全員。
確かにあの女のフィオナ嬢を見る目は異常だった。
なぜあんな憎しみの籠った目で睨んでいたんだ?
俺の知る限り、フィオナ嬢は今まで社交の場には一度も出ていない。それに彼女は人から恨まれるような人間ではない。
Sランク冒険者まで上り詰めるような人間が小物を相手にするとも考えられない。
フッ、それにしても丁寧なお礼を言っていたが、俺はフィーの飾らない令嬢らしくない言葉遣いの方が好きだな。
彼女には俺など必要ないだろうが、陰ながら見守るぐらいは許してくれるだろうか・・・
いつかあの女がとんでもない事をフィオナ嬢に仕出かしそうな予感がするんだ。
(今度こそ必ず君を守るから・・・)
は?
今度こそってなんだ?
「おーい、レオニール誰が来たの?」
・・・・・・。
「あの~、呼ばれていますよ?」
「あ、ああ」
反応が薄いままだし、このままお礼を言えばいいか。
「え~と、昨日医務室に運んでいただいたと聞きましたの。どうもありがとうございました」
「ああ」
お礼も言ったしもういいよね。
「それでは失礼します」
「あ~~!フォーライト姉妹じゃん!エルシア様は今日も女神のように美しいね。妹のフィオナちゃんも評判通りの可愛らしさだね」
痺れを切らしたのかレオニールの後ろから顔を出した軽そうな男。
ああ、この人転生者と仲良くしていた人だ。
いや、転生者だけでなく女なら誰にでも声をかけていた。もちろんフィオナにも・・・無理だ。私はチャラ男は好きじゃない。
で、次に出てきたのはリオネル殿下。
生徒会長だもんね・・・居てもおかしくはない。
「エルシア嬢!来てくれたんだね!さあ早く中に入って!ラシュベルお茶の用意を!」
殿下にはエル姉様しか見えていないんだね。
デカい私を素通りして後ろのエル姉様にそれはもう満面の笑みを向けている。嬉しさが隠しきれていないよ。
やっぱりワンコだ。
「いえ、お気遣いなく。それにもう用は済みましたので失礼しますわ」
エル姉様・・・通常運転だね。
引き止めるリオネル殿下に失礼しますと頭を下げて背を向けて歩き出そうとした時、今まで固まっていたレオニールに手首を掴まれた。
「フィー、フィオナ嬢はもう大丈夫なのか?」
「え、あ、はい」
「そうか・・・」
「・・・」
心配してくれていたんだ。
それにしてもレオニールって背が高い。私より頭ひとつ分は高い。これだったらお姫様抱っこも余裕でできたか?
「おいレオニールいつまでフィオナ嬢の手を握っているんだ?」
そうだった。手首を掴まれたままだった。
リオネル殿下に言われても離す気配がない。
「あの「そろそろ離して下さいませ」」
「・・・わ、悪い!」
エル姉様の声に反応してやっと離してくれた。
もう一度お礼を言って、エル姉様に手を引かれてその場を後にした。
結局何だったんだろう?体調が悪かったのかな?
「レオニールが令嬢の手首を掴むなんて驚いた」
「私はレオニールは女性に興味がないのかと思っていましたよ」
「だよな」
実際興味はない。
・・・いや、フィオナ嬢のことだけは気になる。
今日は昨日と違って顔色も良かった。
まさか、お礼を言うためにわざわざ俺に会いに来てくれるなんてな。
目が会った瞬間、時間が止まったような不思議な感覚がした。彼女の藍色の瞳が真っ直ぐに俺に向けられたのは今日が初めてかもしれない。
あの時ですら俺は彼女の目の端に映っていただけだった。
「フィオナちゃんって実物はすっごく可愛かったね。でも僕がどんなに頑張っても彼女は相手にしてくれなさそうだよね。残念」
彼女に下手に手を出したら死ぬぞ?
「エルシア嬢の妹に遊びで手を出すのはやめてくれよ」
同感だ。
「アンバーには最近お気に入りの子がいるだろ」
「・・・でもその女俺にも色目使ってきたぞ」
なるほどね。
アンバーと仲良くし、あわよくばその繋がりから高位貴族の子息との婚姻でも目論んでいそうだな。
「ああ!あの子ね。隠しているつもりなんだろうけど、下心見え見えでお馬鹿で可愛いんだよ。それにあの子可愛い顔してかなりえげつない性格しているよ」
どんな女だよ。
「・・・私にもよろけた振りしてより掛かろうとしてきた」
「実は私にも上目遣いを使ってきましたが、面倒なことになる前に無視を決め込みました」
おいおい、俺以外全員じゃないか。
凄い女だな。
「あの日、『異界の使者』の会話を聞いてなかったら私はその阿呆な令嬢を利用してエルシア嬢に親しいところを見せつけていたかもしれない」
殿下の言葉にラシュベルとグレンも気まずそうに頷いている。
「私も取り返しのつかないことになっていたでしょうね」
「俺も捨てられていたかもしれない」
・・・・・・。
もう遅い気がするが・・・。
「で、えげつないってどんな風にだ?」
「自分に振り向かない男はどんな手を使っても手に入れようとするね。・・・僕があの子の側にいたら君たちに近づけないように出来るでしょう?」
「それで近くに居たのか・・・」
「アンバーには悪いがそんな強かな女と関わったら今度こそリナに婚約破棄されてしまいます」
「俺もベルティナに捨てられるのは御免だ」
「なるべくあの子を見張っておくよ。でもフィオナちゃんだけど、どこかで会ったことがある気がするんだよね~」
「ここでアンバーの口説きの常套句を使っても意味がないぞ」
「いやいや本当に!」
まあ、実際会っているからな。しかも全員。
確かにあの女のフィオナ嬢を見る目は異常だった。
なぜあんな憎しみの籠った目で睨んでいたんだ?
俺の知る限り、フィオナ嬢は今まで社交の場には一度も出ていない。それに彼女は人から恨まれるような人間ではない。
Sランク冒険者まで上り詰めるような人間が小物を相手にするとも考えられない。
フッ、それにしても丁寧なお礼を言っていたが、俺はフィーの飾らない令嬢らしくない言葉遣いの方が好きだな。
彼女には俺など必要ないだろうが、陰ながら見守るぐらいは許してくれるだろうか・・・
いつかあの女がとんでもない事をフィオナ嬢に仕出かしそうな予感がするんだ。
(今度こそ必ず君を守るから・・・)
は?
今度こそってなんだ?
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