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~クスター・オルセロー男爵令嬢視点~
いつもあたしに侍っているモブ達もさすがにトイレにまでは着いてこない。
あの日トイレから出たところでたまたまぶつかったのがアンバーだった。
薄い茶色の髪に雑草のような濃い緑色の瞳。
これだけなら地味だろうけれど、何せ彼の顔の作りがよかった。目元にある泣きボクロも魅力的だ。
それに攻略対象者の一人で大商会の息子だって調べはついていたから、やっとイベント来たーーー!って感じ。
「うわ~君可愛いね。よかったらこの後お茶しない?」
「え?そ、そんな・・・」
驚きながらも男慣れしていない可憐な振りをした。
彼が女なら誰にでも甘い言葉を吐くことは調べ済み。彼女と呼べる特定の女が居ないことも。
だけど軽い男がヒロインと出会ってから一途になるのは乙女ゲームではよくある定番の設定。
どうも攻略対象者は全員生徒会のメンバーみたいだし、彼を利用して他の攻略対象者と知り合えるかもしれない。それまではアンバーをキープすることに決めてこのお茶の誘いに乗った。
学院に入学してから1ヶ月ほど経った。
相変わらずあたしの側には下位貴族のモブしかいない。
アンバーとはあれ以来親しくしている。
会えば甘い言葉とあたしをお姫様のように扱ってくれる。その間はとっても気分をよくさせてくれるけれど、アンバーには他にもあたしと同じ扱いをしている女が多数いる。
おかしい・・・いつヒロインのあたしに一途になるのだろう?
・・・焦りは禁物ね。
アンバーは2年生だし慌てなくてもいいけれど、リオネルとラシュベルとグレンは3年生だ。
時間にして1年もない。
アンバーに『生徒会室に連れて行って』とお願いしても『ごめんね~あそこは関係者以外は立ち入り禁止なんだよね』って断られた。
だから当てにならないアンバーに期待するのをやめて自分で動くことにした。
まずは単純そうな騎士団長の息子。
グレン・ラオス。ラオス伯爵家の次男・・・
男爵令嬢が嫁げるギリギリのライン。
それ以上の家格になると普通なら親や親族から拒否される。
でもそこはヒロインのあたし。王子妃になることだって望めば叶うんだよね。
・・・なぜ?
グレンとラシュベルに婚約者がいることは知っていた。
でも2人ともヒロインのあたしに夢中になって婚約者を蔑ろにして婚約を破棄するんでしょう?
長身で服の上からも分かる鍛えられた身体のグレン。
凛々しく鋭い目付きの彼はモブとは比べものにならない程の美男子。
そして正義感が強い。
でも中身は単純・・・と、乙女ゲームでよくある設定・・・だと思う。
だからあたしから接触してあげようと思った。
でもね、よく考えたらヒロインのあたしが動かなくてもアンバーと出会ったように、ヒロインと攻略対象者は何もしなくても出会ってしまうのよね。
だから、偶然?必然?の出会いまで自分で動くのをやめた。
そうするとね、やっぱり会っちゃうんだよね。
その日もモブがあたしに侍っていた。女たちの視線はガン無視で食堂に向かっていた。
ちょっと余所見をしていたらボスっと前の人にぶつかってしまった。
一瞬イラッとしたけれどヒロインは怒った顔なんてしないの。いつだってか弱く見せないとね!
「なんだ?」と振り向いた男がグレンだったのは本当に偶然。
咄嗟にコレがグレンとのイベントだと閃いたあたしは、涙目と上目遣いのコンボで彼を見上げて「も、申し訳ございません」とか弱く謝りながらグレンの目を見つめた。
ねえ?庇護欲をそそるでしょう?
いいのよ?遠慮なくあたしに惚れてもね!
なのに!なのにグレンはそんなあたしに「気持ち悪い女だな」って言ったのよ!
最初は聞き間違いかと思ったから「え?」って聞き返したらもう背中を向けて歩き出していた・・・。
周りの女はくすくす嗤うし、モブ達はここぞとばかりに「大丈夫?」と言いながらあたしの体に触れてくる。
はあ?ふざけんな!
あんな失礼な男こっちから願い下げだ!
・・・でも、たまたま機嫌が悪かったのかもしれない。
グレンも今頃後悔していると思うのよね。
だからあの態度も1度は許してあげよう。
うふふっあたしってばやっさし~い!
・・・・・・。
どうなっているの?
あたしがヒロインでしょう?
何で攻略対象者たちはあたしに靡かないの?
ラシュベルとだって出会ったわ!
躓きそうになったあたしに「危ない!」って手を腰に回して転ばないように助けてくれたのはラシュベルだった。
整い過ぎた顔は冷たく見えるけれど、知性と気品を漂わせていた。
こんな男がヒロインにだけデレるってパターンも乙女ゲームではありがち。
せっかく出会えたんだからお近付きに!って!!
ちょ、ちょっと待ってよ!
可愛くお礼を言おうと必殺上目遣いを披露する前にラシュベルにもグレンと同じように背を向けられた。
リオネル殿下にも無視された・・・。
おかしいでしょう!
あたしはヒロインなのよ!
何なの?
彼らはあたしには一切興味を示さない。
それどころか、グレンもラシュベルも婚約者に媚びを売っているように見える。
リオネル殿下に至っては公爵家の女をずっと目で追いかけている。
あんなの"好きです"って告白しているのと同じじゃない!
どうする?
どうすれば彼らを手に入れられる?
だってあたしが狙っているのは『逆ハーエンド』なのよ!
いつもあたしに侍っているモブ達もさすがにトイレにまでは着いてこない。
あの日トイレから出たところでたまたまぶつかったのがアンバーだった。
薄い茶色の髪に雑草のような濃い緑色の瞳。
これだけなら地味だろうけれど、何せ彼の顔の作りがよかった。目元にある泣きボクロも魅力的だ。
それに攻略対象者の一人で大商会の息子だって調べはついていたから、やっとイベント来たーーー!って感じ。
「うわ~君可愛いね。よかったらこの後お茶しない?」
「え?そ、そんな・・・」
驚きながらも男慣れしていない可憐な振りをした。
彼が女なら誰にでも甘い言葉を吐くことは調べ済み。彼女と呼べる特定の女が居ないことも。
だけど軽い男がヒロインと出会ってから一途になるのは乙女ゲームではよくある定番の設定。
どうも攻略対象者は全員生徒会のメンバーみたいだし、彼を利用して他の攻略対象者と知り合えるかもしれない。それまではアンバーをキープすることに決めてこのお茶の誘いに乗った。
学院に入学してから1ヶ月ほど経った。
相変わらずあたしの側には下位貴族のモブしかいない。
アンバーとはあれ以来親しくしている。
会えば甘い言葉とあたしをお姫様のように扱ってくれる。その間はとっても気分をよくさせてくれるけれど、アンバーには他にもあたしと同じ扱いをしている女が多数いる。
おかしい・・・いつヒロインのあたしに一途になるのだろう?
・・・焦りは禁物ね。
アンバーは2年生だし慌てなくてもいいけれど、リオネルとラシュベルとグレンは3年生だ。
時間にして1年もない。
アンバーに『生徒会室に連れて行って』とお願いしても『ごめんね~あそこは関係者以外は立ち入り禁止なんだよね』って断られた。
だから当てにならないアンバーに期待するのをやめて自分で動くことにした。
まずは単純そうな騎士団長の息子。
グレン・ラオス。ラオス伯爵家の次男・・・
男爵令嬢が嫁げるギリギリのライン。
それ以上の家格になると普通なら親や親族から拒否される。
でもそこはヒロインのあたし。王子妃になることだって望めば叶うんだよね。
・・・なぜ?
グレンとラシュベルに婚約者がいることは知っていた。
でも2人ともヒロインのあたしに夢中になって婚約者を蔑ろにして婚約を破棄するんでしょう?
長身で服の上からも分かる鍛えられた身体のグレン。
凛々しく鋭い目付きの彼はモブとは比べものにならない程の美男子。
そして正義感が強い。
でも中身は単純・・・と、乙女ゲームでよくある設定・・・だと思う。
だからあたしから接触してあげようと思った。
でもね、よく考えたらヒロインのあたしが動かなくてもアンバーと出会ったように、ヒロインと攻略対象者は何もしなくても出会ってしまうのよね。
だから、偶然?必然?の出会いまで自分で動くのをやめた。
そうするとね、やっぱり会っちゃうんだよね。
その日もモブがあたしに侍っていた。女たちの視線はガン無視で食堂に向かっていた。
ちょっと余所見をしていたらボスっと前の人にぶつかってしまった。
一瞬イラッとしたけれどヒロインは怒った顔なんてしないの。いつだってか弱く見せないとね!
「なんだ?」と振り向いた男がグレンだったのは本当に偶然。
咄嗟にコレがグレンとのイベントだと閃いたあたしは、涙目と上目遣いのコンボで彼を見上げて「も、申し訳ございません」とか弱く謝りながらグレンの目を見つめた。
ねえ?庇護欲をそそるでしょう?
いいのよ?遠慮なくあたしに惚れてもね!
なのに!なのにグレンはそんなあたしに「気持ち悪い女だな」って言ったのよ!
最初は聞き間違いかと思ったから「え?」って聞き返したらもう背中を向けて歩き出していた・・・。
周りの女はくすくす嗤うし、モブ達はここぞとばかりに「大丈夫?」と言いながらあたしの体に触れてくる。
はあ?ふざけんな!
あんな失礼な男こっちから願い下げだ!
・・・でも、たまたま機嫌が悪かったのかもしれない。
グレンも今頃後悔していると思うのよね。
だからあの態度も1度は許してあげよう。
うふふっあたしってばやっさし~い!
・・・・・・。
どうなっているの?
あたしがヒロインでしょう?
何で攻略対象者たちはあたしに靡かないの?
ラシュベルとだって出会ったわ!
躓きそうになったあたしに「危ない!」って手を腰に回して転ばないように助けてくれたのはラシュベルだった。
整い過ぎた顔は冷たく見えるけれど、知性と気品を漂わせていた。
こんな男がヒロインにだけデレるってパターンも乙女ゲームではありがち。
せっかく出会えたんだからお近付きに!って!!
ちょ、ちょっと待ってよ!
可愛くお礼を言おうと必殺上目遣いを披露する前にラシュベルにもグレンと同じように背を向けられた。
リオネル殿下にも無視された・・・。
おかしいでしょう!
あたしはヒロインなのよ!
何なの?
彼らはあたしには一切興味を示さない。
それどころか、グレンもラシュベルも婚約者に媚びを売っているように見える。
リオネル殿下に至っては公爵家の女をずっと目で追いかけている。
あんなの"好きです"って告白しているのと同じじゃない!
どうする?
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だってあたしが狙っているのは『逆ハーエンド』なのよ!
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