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カルセイニア王国編
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無言で隣を歩くヴォルフ殿下だけど、まるで緊張しているかのように歩き方がぎこちない。
それに何時まで手を繋いでいるのだろう?
別に嫌でもないからこのままでいいのかな?
それとも振りほどく?
ダメ!それは絶対にダメだよね。失礼すぎる。
取り敢えず今までのお礼を言ってしまおう。
「あ、あの、先程だけでなくパーティーに参加する度に助けて頂きありがとうございました」
「い、いや、構わない」
「何故か私に言えば兄や弟、それに従兄のモルダー兄様を紹介してもらえると思われる令嬢が多くて、毎回対応に困っているんです」
「そ、そうみたいだな」
この先も同じようなことが繰り返されると思うと溜め息が溢れてしまう。
「それに、今回はヴォルフ殿下に馬車乗り場まで送っていただくなんて本当に申し訳ございません」
本当だよ。
婚約者でもない、たかだか侯爵令嬢の私を王子様が送るなんて有り得ないことだよ。
これもハント様がヴォルフ殿下に任せるなんて言うから!今度会った時には文句を言ってやる!
「⋯⋯ヴォルフ。ヴォルフと呼んでくれ」
なぜ?
「あ、あのヴォルフ殿下?」
「俺は⋯⋯俺が君にそう呼んで欲しいん⋯⋯だ!」
『だ!』以外は身体に似合わず小声すぎて聞き間違いかと思ってしまいそうだ。
でも、眉間に皺を寄せているのは変わらないのに私を見る瞳が縋っているようで⋯⋯イメージはオオカミなのに、今の殿下はまるでしょげたワンコだ。
(可愛い)
ボンッ!と音がするぐらい突然ヴォルフ殿下の顔が真っ赤になった。
「わ、私⋯⋯声に出していましたか?」
真っ赤な顔でうんうん何度もと頷くヴォルフ殿下に血の気が引いた。失礼すぎる!
手から伝わってくるヴォルフ殿下の震えに、怒らせてしまったのだと察した。
もうどちらの手が震えているのか分からない。
「も、申し訳ございません」
「お、俺が?俺が可愛い?と?」
何で声に出したの!後悔しても遅いわ。王族相手に不敬もいいところ。お父様、レックス兄様、ウィル、ごめんなさい。
今私に出来ることは誠心誠意謝ることしかできない。
「ほ、本当に申し訳ございません」
ただの令嬢である私が謝っても許してもらえないかもしれない。
どうしよう⋯⋯
「謝らなくていい。俺は本当に可愛いのか?」
怒っていない?
「怒ったりしない。もちろん罪に問うこともしない。正直に言ってほしい」
確かにヴォルフ殿下の瞳に怒りのようなものは浮かんでいない。
本当に正直に言ってもいいのだろうか?
「は、はい。恐れながら私はヴォルフ殿下のことを⋯⋯お、お可愛らしい方だと思ってしまいました」
「そ、そうか⋯⋯怖いとか近寄り難いと言われていた俺が?か、可愛いと言われたのは幼少期の頃以来だ」
うん、幼少の頃なら眉間の皺も無かっただろうし、その頃に不機嫌そうな顔をしたとしても拗ねていただけだろうし、当時のヴォルフ殿下は子犬のように愛らしかったのではないだろうか?
それに今だって顔は赤いままだ。
これは怒っているのではなく、照れているのだと思えばやっぱりヴォルフ殿下は可愛らしい人だと思ってしまうのは仕方がないだろう。
「はい、ワンコのようで可愛いです」
「そ、そうか君はワンコ⋯⋯犬が好きなのか?」
「そうですね。犬も猫も大好きです」
「(だ、大好き!)そうか!では俺は犬になろう!」
いやいや犬になるってそれはどういう意味なんだろう?
突然よく分からないことを言い出したけれど、お兄様、ウィル、お父様!私やりました!罪には問われないみたいです!
やっと我が家の馬車まで到着した。
長かった⋯⋯すごく長く感じた。
やっとヴォルフ殿下から離れられる。
「ここまで送っていただき、そして今日も助けて頂きありがとうございましたヴォルフ殿下」
「ヴォルフだ」
忘れていなかったんだ。
「ヴォルフと呼んでくれ」
何で名前呼びに拘るのよ~
「ヴォ、ヴォルフ様?」
「これからはそう呼んでくれ」
⋯⋯これからとは?
で、なぜヴォルフ殿下まで一緒に馬車に乗り込むの?
まさかただの侯爵令嬢の私をヴォルフ殿下は邸まで送ってくれるつもりなのだろうか?
⋯⋯分かっている。送ってくれるのよね。
再度ヴォルフ殿下にお礼を言ってやっと!やっと邸に帰ってこれた。
つ、疲れた⋯⋯今までで1番長い1日だった。
それに何時まで手を繋いでいるのだろう?
別に嫌でもないからこのままでいいのかな?
それとも振りほどく?
ダメ!それは絶対にダメだよね。失礼すぎる。
取り敢えず今までのお礼を言ってしまおう。
「あ、あの、先程だけでなくパーティーに参加する度に助けて頂きありがとうございました」
「い、いや、構わない」
「何故か私に言えば兄や弟、それに従兄のモルダー兄様を紹介してもらえると思われる令嬢が多くて、毎回対応に困っているんです」
「そ、そうみたいだな」
この先も同じようなことが繰り返されると思うと溜め息が溢れてしまう。
「それに、今回はヴォルフ殿下に馬車乗り場まで送っていただくなんて本当に申し訳ございません」
本当だよ。
婚約者でもない、たかだか侯爵令嬢の私を王子様が送るなんて有り得ないことだよ。
これもハント様がヴォルフ殿下に任せるなんて言うから!今度会った時には文句を言ってやる!
「⋯⋯ヴォルフ。ヴォルフと呼んでくれ」
なぜ?
「あ、あのヴォルフ殿下?」
「俺は⋯⋯俺が君にそう呼んで欲しいん⋯⋯だ!」
『だ!』以外は身体に似合わず小声すぎて聞き間違いかと思ってしまいそうだ。
でも、眉間に皺を寄せているのは変わらないのに私を見る瞳が縋っているようで⋯⋯イメージはオオカミなのに、今の殿下はまるでしょげたワンコだ。
(可愛い)
ボンッ!と音がするぐらい突然ヴォルフ殿下の顔が真っ赤になった。
「わ、私⋯⋯声に出していましたか?」
真っ赤な顔でうんうん何度もと頷くヴォルフ殿下に血の気が引いた。失礼すぎる!
手から伝わってくるヴォルフ殿下の震えに、怒らせてしまったのだと察した。
もうどちらの手が震えているのか分からない。
「も、申し訳ございません」
「お、俺が?俺が可愛い?と?」
何で声に出したの!後悔しても遅いわ。王族相手に不敬もいいところ。お父様、レックス兄様、ウィル、ごめんなさい。
今私に出来ることは誠心誠意謝ることしかできない。
「ほ、本当に申し訳ございません」
ただの令嬢である私が謝っても許してもらえないかもしれない。
どうしよう⋯⋯
「謝らなくていい。俺は本当に可愛いのか?」
怒っていない?
「怒ったりしない。もちろん罪に問うこともしない。正直に言ってほしい」
確かにヴォルフ殿下の瞳に怒りのようなものは浮かんでいない。
本当に正直に言ってもいいのだろうか?
「は、はい。恐れながら私はヴォルフ殿下のことを⋯⋯お、お可愛らしい方だと思ってしまいました」
「そ、そうか⋯⋯怖いとか近寄り難いと言われていた俺が?か、可愛いと言われたのは幼少期の頃以来だ」
うん、幼少の頃なら眉間の皺も無かっただろうし、その頃に不機嫌そうな顔をしたとしても拗ねていただけだろうし、当時のヴォルフ殿下は子犬のように愛らしかったのではないだろうか?
それに今だって顔は赤いままだ。
これは怒っているのではなく、照れているのだと思えばやっぱりヴォルフ殿下は可愛らしい人だと思ってしまうのは仕方がないだろう。
「はい、ワンコのようで可愛いです」
「そ、そうか君はワンコ⋯⋯犬が好きなのか?」
「そうですね。犬も猫も大好きです」
「(だ、大好き!)そうか!では俺は犬になろう!」
いやいや犬になるってそれはどういう意味なんだろう?
突然よく分からないことを言い出したけれど、お兄様、ウィル、お父様!私やりました!罪には問われないみたいです!
やっと我が家の馬車まで到着した。
長かった⋯⋯すごく長く感じた。
やっとヴォルフ殿下から離れられる。
「ここまで送っていただき、そして今日も助けて頂きありがとうございましたヴォルフ殿下」
「ヴォルフだ」
忘れていなかったんだ。
「ヴォルフと呼んでくれ」
何で名前呼びに拘るのよ~
「ヴォ、ヴォルフ様?」
「これからはそう呼んでくれ」
⋯⋯これからとは?
で、なぜヴォルフ殿下まで一緒に馬車に乗り込むの?
まさかただの侯爵令嬢の私をヴォルフ殿下は邸まで送ってくれるつもりなのだろうか?
⋯⋯分かっている。送ってくれるのよね。
再度ヴォルフ殿下にお礼を言ってやっと!やっと邸に帰ってこれた。
つ、疲れた⋯⋯今までで1番長い1日だった。
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