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はあ?なんで?なんで今さら?
「リリーシアが決めればいいよ」
珍しく片口角の上がっていないクロイツ殿下は私に優しく諭すように言った。
でも⋯⋯私の本心は⋯⋯
「⋯⋯帰りたく⋯ない⋯わ」
だってあそこには私の居場所なんてないもの。
⋯⋯10年以上ここに居た。
お婆様も、伯父様も、ユーリ兄様も、アルト兄様も、皆んなが私を可愛がってくれた。大切にしてくれた。
前回では味わえなかった家族の愛をここで知った。
本音で話せる大好きな友達も、信頼できる仲間も初めてここでできた。
陛下も王妃様も可愛がってくれている。
他国の王族に嫁いで行った王女様は今でも私を気にかけて手紙を送ってくれている。
⋯⋯クロイツ殿下だって、私を怒らせる天才で、いつも意地悪をしてくるけれど嫌いになったことは一度もない。
それに彼は⋯⋯オーギュスト王国まで迎えに来てくれた。
そう、私にとってマシェリア王国は居心地のいい場所だ。
なのに、なぜ今さらオーギュスト王国に帰らなければならないの?
今まで一度も手紙一つ送ってこなかったのに?
「ミラドール公爵⋯⋯リリーシアの父親も君を待っているぞ」
そんなの有り得ないわ!
「そんなはずは⋯ないわ⋯⋯」
「彼は再婚もせずリリーシアの帰りをずっと待っているんだよ」
嘘よ。だってこの時期には既にあの母娘を迎え入れて家族三人で楽しく過ごしていたはずよ。
義母に暴力を受けている私を、見て見ぬふりをして⋯⋯そう、あの人は私の存在すら無視していたわ。
「彼の希望でリリーシアに黙っていたが、彼は毎年十分過ぎる金をリリーシアの生活費にって送ってきていたよ」
え?私に?
クロイツ殿下を信じていない訳ではないけれど、前回を覚えているだけにそれが本当かどうか疑ってしまう。
ああ⋯⋯でも、言われてみれば納得もできてしまった。
そうだ、あの父親は公爵令嬢としての教養を身につけさせるための教師や、身分に相応しい品格を維持するためなら、お金だけは十分に与えていたのだった。
そっか⋯⋯私のためと言うより、オーギュスト王国の王弟としてのプライドや見栄のためだろうね。
そうだよね。あの人は私に興味も関心も一切なかったものね。
まあ、温かい食事と、寝心地のいいベット、高価な宝石やドレスは与えられていたけれど、親が子に向ける愛情は与えられることは最後までなかったわね。
「リリーシア⋯⋯一度帰って腹を割って話し合っておいで。それでも無理なら俺のもとに帰っておいで⋯⋯ぷッ」
珍しく最もらしいことを言っているかと思えば、他人事だと思って巫山戯ている!
「はあ?俺のもと?笑わせないでよ!帰ってくるとしたらガルシア公爵家のもとへよ!」
何だかだとクロイツ殿下と喧嘩腰で話し合いをして、結局はオーギュスト王国⋯⋯ミラドール公爵家に帰ることにしたのだ。
タイミング的には二年生からの進級に合わせて帰国することが決まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
そして、沢山の方にいいねとエールをもらい嬉しい限りです。モチベーションが上がります。ありがとうございます。
明日からはオーギュスト王国編になります。
「リリーシアが決めればいいよ」
珍しく片口角の上がっていないクロイツ殿下は私に優しく諭すように言った。
でも⋯⋯私の本心は⋯⋯
「⋯⋯帰りたく⋯ない⋯わ」
だってあそこには私の居場所なんてないもの。
⋯⋯10年以上ここに居た。
お婆様も、伯父様も、ユーリ兄様も、アルト兄様も、皆んなが私を可愛がってくれた。大切にしてくれた。
前回では味わえなかった家族の愛をここで知った。
本音で話せる大好きな友達も、信頼できる仲間も初めてここでできた。
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⋯⋯クロイツ殿下だって、私を怒らせる天才で、いつも意地悪をしてくるけれど嫌いになったことは一度もない。
それに彼は⋯⋯オーギュスト王国まで迎えに来てくれた。
そう、私にとってマシェリア王国は居心地のいい場所だ。
なのに、なぜ今さらオーギュスト王国に帰らなければならないの?
今まで一度も手紙一つ送ってこなかったのに?
「ミラドール公爵⋯⋯リリーシアの父親も君を待っているぞ」
そんなの有り得ないわ!
「そんなはずは⋯ないわ⋯⋯」
「彼は再婚もせずリリーシアの帰りをずっと待っているんだよ」
嘘よ。だってこの時期には既にあの母娘を迎え入れて家族三人で楽しく過ごしていたはずよ。
義母に暴力を受けている私を、見て見ぬふりをして⋯⋯そう、あの人は私の存在すら無視していたわ。
「彼の希望でリリーシアに黙っていたが、彼は毎年十分過ぎる金をリリーシアの生活費にって送ってきていたよ」
え?私に?
クロイツ殿下を信じていない訳ではないけれど、前回を覚えているだけにそれが本当かどうか疑ってしまう。
ああ⋯⋯でも、言われてみれば納得もできてしまった。
そうだ、あの父親は公爵令嬢としての教養を身につけさせるための教師や、身分に相応しい品格を維持するためなら、お金だけは十分に与えていたのだった。
そっか⋯⋯私のためと言うより、オーギュスト王国の王弟としてのプライドや見栄のためだろうね。
そうだよね。あの人は私に興味も関心も一切なかったものね。
まあ、温かい食事と、寝心地のいいベット、高価な宝石やドレスは与えられていたけれど、親が子に向ける愛情は与えられることは最後までなかったわね。
「リリーシア⋯⋯一度帰って腹を割って話し合っておいで。それでも無理なら俺のもとに帰っておいで⋯⋯ぷッ」
珍しく最もらしいことを言っているかと思えば、他人事だと思って巫山戯ている!
「はあ?俺のもと?笑わせないでよ!帰ってくるとしたらガルシア公爵家のもとへよ!」
何だかだとクロイツ殿下と喧嘩腰で話し合いをして、結局はオーギュスト王国⋯⋯ミラドール公爵家に帰ることにしたのだ。
タイミング的には二年生からの進級に合わせて帰国することが決まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
そして、沢山の方にいいねとエールをもらい嬉しい限りです。モチベーションが上がります。ありがとうございます。
明日からはオーギュスト王国編になります。
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