【完結】悪役令嬢はゲームに巻き込まれない為に攻略対象者の弟を連れて隣国に逃げます

kana

文字の大きさ
78 / 122
ウインティア王国編

78

しおりを挟む
まあ予想通りだな。

それぞれ当主が家族を紹介して祝福の言葉をくれるが、エリーに見惚れる子息の多いことよ。中にはクラスメイトもいた。
これは仕方がない。エリーは妖精で女神だからな。
だが、妻も子供もいる当主すらエリーを舐め回すかのような目で見る奴もいる。
これはダメだ。
俺がひと睨みすれば顔色を悪くして去って行くが家名と顔は覚えたからな。

そして令嬢の中には俺よりもエリーに憧れと羨望の眼差しを向ける者が多かった。
それは分かる。
エリーは綺麗で完璧な令嬢だからな。

まあ、悔しそうな顔をしている令嬢もいたが、さすがにエリーを睨むような令嬢は殆どいなかった。


すべての挨拶が終わる頃にはパーティーも中盤に入っていた。

多少の失礼な言葉や視線は華麗に受け流し、エリーは婚約者として最後まで完璧にやり遂げてくれた。




それから俺とエリーもいつものメンバーのところに加わり、皆から労いの言葉をかけられた。

「2人ともお疲れ様」

「2人のダンス素敵だったわよ。公衆の面前でキスまでするなんてね」

「「スゴい悲鳴でしたよね」」

あの騒ぎはそれでだったのか。

「それでエリーは名前と顔一致できたの?」

アランなんの事だ?

「そうね。ほとんど覚えられたと思うわ」

まさか?

「さすがね。貴族の揃うパーティーなら顔も合わせられるものね」

「ちょっと待って下さい。それはこの会場のすべての貴族の家門と名前と顔を紹介されている間に覚えたと言うことですか?」

「少し前にね貴族図鑑で家門と名前は覚えていたのよ。ただ顔まで載っていなかったからね。だけど今日で顔も覚えたわ」

「「エリー嬢って天才だったんですか?」」

コイツら揃って相変わらず失礼だな。

「だってルフィの婚約者ですもの、この国の貴族の人は覚えないとダメでしょ?」

エリー俺のために!

「もっと驚かせると、エリーは領地ごとの産業や農作物や流通経路などすべて頭に入っているわよ」

「なんか凄すぎて言葉が出ないな」

「エリー嬢が優秀なのは知っていましたが想像以上でした。エリー嬢を執拗く追い掛けて捕まえた兄上を褒めるべきでしょうか?」

「ゾルティー!俺は執拗くない!一途なだけだ!」

「ルフラン殿下は昔からエリーが大好きですもんね」

「6歳で一目惚れしてからずっとエリーだけだ」

「ルフィ?もう一発欲しいの?」

真っ赤になった顔で拳を俺に見せるのは、拳骨の準備なのか?

「い、いらない!エリーごめん」

「「ルフラン殿下はエリー嬢に弱いですね」」

お前たち笑っているが、エリーの拳骨は本当に痛いんだからな!

楽しい仲間と過ごす時間は早く過ぎる。

「そろそろ帰りましょうか」

「そうだね。明日も学園があるからね」

「明日は学園が昼からだから、お弁当はないからね。各自家で食べてきてね」

「「残念ですが分かりました」」

「エリー嬢そんなことは気にせず今日の疲れを取ってくれ」

「ありがとうガル」

まだパーティーは続くが未成年の俺たちはこの辺で終わりだ。

一応陛下と王妃には挨拶してから会場を後にした。




それぞれの家の馬車に乗り込む中、エリーは俺が送って行くと引き止めた。

皆から呆れた眼差しを向けられたが、俺は少しでもエリーと2人で過ごしたかった。

王家の馬車に乗り込み横抱きにエリーを俺の膝に乗せ抱きしめた。

エリーの肩に顔を埋めエリーの優しい香りを堪能する。
エリーの手が俺の髪をゆっくり梳く。
顔を上げると「ルフィは甘えん坊さんね」そう言うエリーと目が合うと自然とお互いの顔が近づく。

軽いキスから徐々に深くなるキスに変わる。
キスの合間に聞こえるエリーの吐息に俺の中の欲望を抑えながらも、勝手に反応してしまう。

「間もなくウォルシュ侯爵家に到着します」

御者のその声を聞いて思い出した。

熱い目で俺を見るエリーにボタンを外しながら「ここに付けてくれるかキスマー」最後まで言う前に俺の鎖骨にエリーが歯を立てた。
少しの痛みと鎖骨をガリガリと噛む刺激が気持ちいい。
そして吸い付いた後「ごめんね歯型が付いちゃった。ルフィの鎖骨を見たら食べたくなっちゃったの」ペロリと舌を出す濡れたエリーの唇がとても魅惑的で再度唇を塞ごうと手が伸びた。

その時御者の「到着しました。扉を開けてもよろしいでしょうか」の声でなんとか思いとどまれたが危なかった。

「ルフィ鏡を見て驚かないでね」と言いながらボタンを留めてくれる。

馬車から降りるエリーの手を引き、また明日とエリーの姿が邸の中に消えるまで見送った。







「報告しろ」

月明かりだけが射し込む執務室で影に報告させる。

『会場内で不審な動きをする者はおりませんでしたが、一人常識知らずの娘がいました』

「そいつも調べておけ」

『はっ』

「あの女は?」

『自室に閉じこもり物に当たり散らかしていました』

「あの女から目を離すな。少しでも動きがあれば報告しろ。小さな事でも見逃すな」

『はっ』

今日のパーティーにセルティ嬢は体調不良を理由に参加しなかったが必ず動くはずだ。

ただの貴族の令嬢が一人で動くことはできない。
誰かを巻き込むはずだ。
あの女の口車に乗せられるような愚か者が何人出てくるかだな。

「それとゾルティーの婚約者候補の家も調べておけ」

『はっ』

「行け」






その夜鏡に映る俺の鎖骨にはエリーの付けたキスマークが1つと歯型がそのままの形で鎖骨にそって何個も付いていた。

しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。 王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。 エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。 だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。 そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。 夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。 一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。 知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。 経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

処理中です...