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ウインティア王国編

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~レイチェル視点~

エリーがゲームの真実を知って、ウインティア王国に帰ると決めてからずっと考えていた。

侯爵令嬢を陥れたからといって、死ぬまで牢から出られないなんて・・・って。

普通なら修道院行きが妥当。
平民落ちにしたって、元々日本で庶民のヒロインが平民に落ちるのって軽すぎる罰でこれはないでしょうし・・・不思議だった。

確かにゲームではルフラン殿下とエリーは幸せになったわ。

でも実際のエリーを知れば知るほど、ルフラン殿下が王位継承権を放棄してまでエリーを選んでいたら、自分のせいで放棄させたことをずっと後悔していたと思う。

ルフラン殿下だって、エリーを選んだことに後悔はなくても、残された人に対してずっと後ろめたさがあったはずよ。

だからエリーが『ルフランを守るために帰るわ』と決断した時の、覚悟を決めた目を見た時に"それならわたしがエリーを守る"と決めたの。

わたしはエリーがアトラニア王国に逃げてきてくれたおかけで、愛するアランと出会えた。

そして、悪役令嬢にもされなかったし、大嫌いな元婚約者とも婚約破棄ができた。

すべてエリーの行動のおかげ。

恩人のエリーの為なら何だってするって決めていた。




ウインティア王国に来てからも、なぜマイが牢に入れらていたか考えていた。



それが最近になって男子生徒の間だけで、ある噂が流れていることをグレイとザックから聞いたの。
それでわたしの疑問が解決した。


性器が痒い、痛い、発疹がある、膿がでる・・・それって性病じゃないの?

ゾル殿下に調べてもらったら、全員マイと肉体関係があった。
なぜ今まで気付かなかったのか・・・あれだけの男と関係していたら性病にならない方がおかしい。

この世界には避妊の知識はあっても、避妊具なんて物はない。

これ以上感染者を出さないために、ゾル殿下やアランが動こうとした矢先にマイがウォルシュ家で働きたいと言ってきた。

使える!と思ったわ。
マイの目的がなんであれウォルシュ家で働くためには男遊びは止めると思ったもの。

だからマイがアランに話しかけている間、観察させてもらっていたの。

常に股を擦り合わせていこと。
口唇周辺の水ぶくれ。
たまにお腹に痛みを感じているような素振り。

男子生徒の症状と、マイの症状を合わせると性病で間違いない。



だから牢に入れられたのね。
これ以上感染者を出さないために。



それさえ分かればマイに引導を渡せるわ。

それで今回マイを呼んでワザと日本人なら誰でも知っているお好み焼きを選んだの。

やっと転生者だと気付いたわね。



「マイ貴女なぜそんなに股を擦り合わせているの?」

「男と寝てないから疼くのよ!」

「口唇の発疹は?」

「ただのニキビよ!」

「もしかしてオリモノがおかしくない?」

あら?顔色が変わったわね。

「何を聞くのよ!欲求不満なだけよ!」

「マイ、貴女はね性病なのよ」

「・・・はあ?何言ってるのよ!」

「少し前まで貴方と関係を持った男子生徒の内24人が性病の症状を訴えているの。まだ他にもいそうだけどね。だって貴女転移してから50人以上と関係あるでしょ?」

「嘘よ!」

「貴女は菌を撒き散らす病原菌そのものよ」

「なら治療すればいいじゃない簡単よ」

開き直っても無駄なのよ。

「この世界が日本ほど医療が発展していると思っているの?」

「・・・え?でも薬ぐらいあるでしょ?」

本当はあるけど教えてあげない。

「あればゲームのヒロインは牢に閉じ込められたりしないわ。自業自得ね」

「・・・じゃあ治療しなければ私はどうなるの?」

「さあ?性病は勝手に治るものでもないし、全身に痒みや痛みが広がるんじゃないの?そこまでは知らないわよ。そのうち内蔵とか溶けちゃったりするかもよ?」

「そんなの嘘よ!じゃあ薬を作りなさいよ!お金持ちのウォルシュ家なら出来るでしょ!」

「・・・なんで貴女のために?薬を作ったとしても貴女は男漁りを止めないでしょ?同じことの繰り返しよ」

「っ、うるさい!男と寝て何が悪いのよ!」

自分が感染源だと分かっても反省する素振りも見せないのね。

「貴女は性病だけでなく、頭も病に侵されてるんじゃないの?普通の感覚ではないもの」

「薬を作らないならこの国中に性病をばら蒔いてやるわ!」

「そんな考えだから、牢に閉じ込められたのよ」

「・・・・・・」

「よかったわね。男は一生与えられないけれど、衣食住は与えられるわよ」

「殺してやる・・・アンタなんて殺してやる!」

マイが飛びかかってきたけど楽勝よ。

わたしもアンタにはムカついてたのよ!

のろまな攻撃を避けて素早くマイの後ろに周り勢いのまま、マイの後頭部を掴んで床に顔面を叩きつけてやったわ。
鈍い音がしたけど気にしないわ。
生きているもの。

痙攣していたマイが動かなくなったところで、部屋にアラン、ルフラン殿下、ゾル殿下が入ってきた。

「レイ!無茶はしない約束だったよね」

「これは正当防衛よ?」

上からわたしを見下ろすアランが怒っているわ!
ここは素直に謝らないと後でお仕置されちゃう!

「ご、ごめんなさい」

「今夜は2人だけで反省会をしようね?」

アラン!その顔はダメだってば~

「協力ありがとう。マイは責任もって王宮の地下牢に閉じ込めるよ」

ゾル殿下も悪い顔を隠さなくなったわね。

入ってくるタイミングを考えたら、やっぱりあの鏡はマジックミラーなのね。
エリーは気付いてないでしょうけど、最初から怪しいと思っていたのよ。


なら、エリーの正直な気持ちをルフラン殿下も聞いたのね。
部屋に入ってくるなりエリーを抱きしめているもの。



・・・マイが護衛に運ばれていく間もエリーを離さないんだけど・・・

「ルフラン殿下、部屋を移動しますよ」

そうね。マイの血が落ちている部屋なんて気持ち悪いわ。

「ルフィさっきからどうしたの?大丈夫よ。何もされていないわ」

「ああ」

「戻りましょう?皆も待っているわ」

「ああ」

「ルフィ行くわよ、さあ手を繋いで」

「ああ」

感動したのは分かるけど、いい加減動きなさいよ!

「エリー、ルフラン殿下をエリーの部屋で少しだけ休ませてあげたら?」

アランもルフラン殿下の気持ちが分かるのね。

「そうね。ルフィ私の部屋に行く?」

「行く!」


反応が早すぎる!


仕方がないわね。
皆への説明はわたし達がしておくから、ルフラン殿下は少しだけエリーに甘えてきなさい。
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