後悔していると言われても……ねえ? 今さらですよ?

kana

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1巻

1-2

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  ドルチアーノ殿下視点 


 俺が八歳の頃だ。王宮で開かれたお茶会で、子供の僕から見ても見目麗しい家族の中で一人だけ太っている令嬢がいた。

『ドル気をつけろよ? 甘やかされて育った令嬢は我儘で傲慢になるパターンが多い。そんな相手を選ぶと将来困るのはお前だからな、慎重に相手を見極めろよ』

 お茶会の前に三歳年上の一番上の兄に助言された。
 会場内では両親に連れられ着飾った令嬢たちが順番に僕に挨拶に来てくれた。
 どの子も普通に可愛いと思った。
 なのにディハルト公爵家の令嬢は真ん丸な顔で太っていた。
 きっと末っ子だから甘やかされて育ったんだ。
 兄上が言っていたのはこんな令嬢を選ぶなってことだと思った。
 だから兄上の言葉遣いを真似て『ふん! お前公爵令嬢のくせにデブでブスだな。嫁のもらい手もないだろうな!』なんてことを、僕の婚約者になりたい等と言いださないようワザとキツい口調で言った。
 茶会の後、父上と母上に呼び出され盛大に叱られた。
 僕にアドバイスをした兄上も余計なことを言うなと怒られていた。
 それから少しして、何人かの令嬢が僕の婚約者候補にあがった。
 その中には彼女も含まれていた。
 僕だって王子教育を受けている。政略結婚の意味だって分かっている。
 ディハルト公爵家の令嬢と婚姻するのが、国の為になることも理解している。
 なのに僕は彼女のことを何も知らないまま、外見だけで判断し酷い言葉を投げてしまった。
 あんな酷いことを言った僕を、彼女も彼女の家族も許してくれないと思った。
 だから、たとえ候補者だとしても彼女を選ぶつもりはなかった。
 なのに僕の誕生日が来る度に毎年プレゼントが届くし、年に何度か手紙も送られてくる。
 大勢の前であんなに酷いことを言ったのに、僕の婚約者になりたくて媚びていると思ったら気持ち悪くてプレゼントを開けることも、手紙を読むことも出来ず、こっそり処分してもらっていた。
 それに僕からお返しをして勘違いされるのも嫌だったから彼女の誕生日も無視した。
 今思えば最低だった。
 そして僕が二学年に上がった時に彼女が入学してきた。
 新入生代表で彼女の名前が呼ばれ壇上に立った人物はデブでもブスでもなく、目を奪われる程の美しい令嬢だった。
 一瞬別人かとも思ったが、ディハルト公爵やその息子たちと同じ銀髪で、幼い頃の面影も残っていた。
 今の学院に僕の婚約者候補のうち六人が揃った。残りの一人は来年入学してくる。
 いつも僕の周りを彼女を除いた五人が囲んでいる。
 馴れ馴れしくベタベタと触られ、キツい香水の匂い、媚びるような目、僕のいない所では傲慢に振る舞っている姿を何度も見かけた。
 それでも僕から注意をすることはしなかった。
 昔は可愛く見えた令嬢たちだったが……それでも笑顔で紳士的に対応していた。
 いずれはこの中から選ぶことになるのだからと……
 たまに見かける彼女は、いつも笑っていた。美しい所作はさすがは公爵家の令嬢だと思った。
 なのに、傲慢に振る舞うこともなく、友人に囲まれ、困っている人には声をかけ、平民にも態度を変えることもない素晴らしい令嬢だった。
 本当に僕は見る目がなかった。
 それどころか見た目だけで判断してしまったんだ。
 彼女が見目が良くなったからって目で追うなんて最低だ。
 食堂で彼女が和気藹々わきあいあいと友人たちと楽しそうに過ごす姿は周りからの羨望を集め、子息からは恋慕の眼差しで見つめられている。
 彼女が僕を拒絶していることは、入学してから一度も僕に挨拶にも来ないのが証拠だ。
 当然だ。初対面で勝手に我儘だと決めつけてあんな言葉を吐いたのだから……
 気づいたら彼女の姿を捜し、見つけると目で追っていた。
 たまに目が合うと、それまで笑顔だった彼女から表情がなくなる。
 ……完璧に嫌われている。

「まあ、ディハルト嬢ですわね」
「殿下、そんなに睨むほど嫌わなくても……」
「殿下がディハルト嬢を嫌っているのは学院の全生徒が知っていますものね」

 周りの令嬢がそんなことを勝手に言っているが、睨んでいるつもりはない。
 目が合った瞬間に緊張で体が強ばるだけだ。
 僕が嫌っているんじゃない。
 彼女が僕を嫌っているんだ。
 いや……彼女にとって僕など眼中に無いのだろう……
 ズキリと胸が痛むのは気のせいだ。
 それから暫くして、いくら僕が目で追いかけても彼女と目が合うことがなくなった……
 まるで彼女には僕が見えていないようだった。
 その理由が分かったのは、彼女の目に僕が映ることがなくなってから数ヶ月後のことだった……
 僕は自分が嫌になる。
 あれ程彼女から届くプレゼントも手紙も気味悪がって見もしなかったのに……
 お礼も返事も送らなかったのに……大体彼女の誕生日すら知ろうとしなかった……
 本当に僕は最低だ。
 彼女が僕の婚約者候補になって初めて、今年の僕の誕生日にプレゼントが届かなかった。
 貰って当たり前……僕はいつからこんな傲慢な人間になっていたんだろう?
 それでも理由が知りたくて初めて僕から彼女に声をかけた。

『……おい!』

 ダメだ!
 なんでこんな口調になるんだ!

『おい!』

 聞こえてないのかな?

『おい!』

 ダメだ。キツい口調になっている。
 彼女以外は聞こえているのだろう、僕の顔をみんな見ているからな。
 リアム殿は珍しく怒った顔をしているが……
 振り向いた彼女はやはり美しい。

『お前俺の誕生日プレゼントはどうした?』

 キョトンとした顔も可愛いと思う。
 なのに、また僕に背を向けて何事も無かったかのように食事を再開させている。

『おい! お前だ! いい加減にしろよ!』

 つい彼女の肩に触れようとしたが、その前にリアム殿にすぐに払い除けられた……

『……何故付き合いもない貴方に赤の他人の私がプレゼントをしなければならないのですか?』

 え? 他人? 君は僕の婚約者候補だろう?

『はあ? お前は俺の婚約者候補だろうが!』

 まただ、普段の口調が出来ない。

『いいえ違いますよ? 私は辞退しましたから』

 そんなこと誰からも聞いてない!

『嘘を言うな!』

 なんでだ? なんで僕の胸はこんなに痛いのだろう?

『本当ですよ。帰ったら確認して下さい』

 う、嘘だ……

『分かれば僕の可愛い妹に二度と話しかけないで下さいね』

 リアム殿まで彼女の言葉を認めた。
 彼女はもう僕の婚約者候補じゃないのか?
 鈍器で頭を殴られたような気がした。
 そして頭が真っ白になった……


 僕は午後からの授業を受けたのだろうか?
 どうやって帰ってきたんだ?
 気づいたら王宮の自室にいた。


 彼女の言ったことは本当だった。
 彼女が十七歳を迎えるまでに、僕と少しでもお互いに尊重し合える関係が築けなければ辞退出来ると、父上とディハルト公爵との間で約束があったようだ。
 そんな約束は知らない……知らなかったんだ……
 ふっ……今さらだな。
 僕は彼女を選ぶつもりはなかっただろ?
 他の候補の令嬢にはプレゼントのお礼もお返しもしていた、ちょくちょく来る手紙にも無難な手紙を返していた。僕が彼女だけを拒絶していたんだ……それが返ってきただけだ。
 十年、十年間も彼女は僕のこんな仕打ちに耐えてきたんだ。
 どうせならもっと早く解放してあげたらよかった……
 初めから彼女を選ぶつもりなんかなかったのだから……

「ドルも馬鹿だよね」

 気付けば兄上たちが僕の座っているソファの対面に座っていた。

「今日の食堂での一件見ていたよ」
「兄上たちは彼女が辞退したことを知っていたのですか?」
「もちろん知っていたさ」
「なぜ教えてくれなかったのですか?」
「知っていたら何か変わっていたのか? あの子が辞退してから知ってもどうにもならないだろ? 今さらだ」
「ディハルト嬢が私の婚約者候補だったなら、例え幼い頃見た目が悪くても彼女を大切にしていたよ? あのディハルト公爵家の娘なんだよ? 素敵な令嬢に育つに決まっているだろう?」

 ……今ならそれが分かる。

「まあ彼女の辞退が認められたお陰で、ルイスが俺の側近になってくれたから結果これでよかったんだよ」

 ああ、兄上が何度頼んでもルイス殿は首を縦に振らないと嘆いていたな。
 ルイス殿が兄上の側近になることを決めたのは彼女の辞退が認められたからか……
 リアム殿だけでなくルイス殿にも僕は嫌われていたんだな。
 そりゃあそうだろ。彼女が家族から溺愛されているという噂が僕の耳にも届いていたんだから。
 そんな彼らの大切な妹を……僕は最低だな。

「まっ、諦めろ。お前にはまだ六人も婚約者候補がいるんだしな!」
「あと一年後にはドルもその六人の中から婚約者を選ばないとならないからね」

 あの中から選ぶ?
 実感がわかない。誰を選んでも同じ気がする。
 これが政略結婚……
 だから少しでも交流して為人ひととなりを見極めなければならなかったのに……
 僕がしていたのは本当に交流だったのか?
 ただいい顔していただけなのではないのか?
 僕が愚かだったことも、人を見る目がなかったことも分かってしまった。
 もう優柔不断なことはやめよう。愛想笑いをするのもやめよう。
 将来を共にする相手ならせめてお互いが尊重しあえ、穏やかに過ごせる人を選ぼう。
 そのうち愛という感情が芽生えることを祈って……
 次の日には彼女が僕の婚約者候補を辞退したことが学院中で噂になっていた。
 もう面倒だ。このまま授業を欠席しようか。
 どうせなら一人になれる場所がいい。
 空き教室に行こうか? 天気がいいから温室にでも行こうか? カフェのテラスでもいいな。
 あそこなら外から見られることもないし一人になれる。
 結局僕が向かったのはカフェのテラスだった。
 昨日あまり眠れなかったのもあり、春の日差しが差し込むここはポカポカと暖かくて落ち着く。
 植木で仕切られた隣のテラスから聞こえる声で目を覚ました。
 どうやら寝てしまっていたようだ。

『ヴィクトリア様が候補を辞退していたなんて知りませんでしたわ』

 …………

『それでも時間の問題だったと思うわよ』

 ここでも噂話か。

『確かにあの方はヴィクトリア様を除いた候補の方にはデレデレしていましたものね』

 ……もう今日は帰ろう。
 音を立てないように席を立とうとした時だった。

『最初から私はあの方に嫌われていましたからね。それに候補者のままだと素敵な出会いを見逃すかもしれませんもの』

 もしかして彼女が隣のテラスにいるのか?

『あの~ヴィクトリア様の理想の男性をお聞きしても?』

 今さら彼女の好きなタイプを聞いてもな……

『そんなの決まっているわよ』

 うん、聞かなくても分かるよ。

『ええ、ルイス様とリアム様、それに公爵様でしょ?』

 うんうん僕もそう思う。

『それは分かっていますわ! 世の女性の憧れの方たちですもの。わたくしが聞きたいのは性格というか、態度というか、見た目だとか……』

 それは聞いてみたい。

『ん~そうね。女を侍らすような浮気性の人は嫌いね。あと横暴な人。それと……意味無く睨む人』

 ………………聞かなければよかった。確かに彼女に対しては横暴だった。
 でも僕は浮気性ではない!
 それに睨んでもいない!

『それって、そのままあの方みたいですわね』

 やっぱり周りからはそう見えるんだ……

『ええ、初対面の時から最悪でしたわ』

 そうだろうね。もう好きに言ってくれ。
 すべて僕が悪い。
 何を言われても怒らないよ。

『それに……私だけを見てくれる人がいいわ』

 男も女も関係なく普通はそうだよね。
 ……最悪だ。
 僕は今まで何をやっていたんだよ。
 もう消えてしまいたい。
 いや、令嬢たちの貴重な意見が聞けたんだ、これを参考にして直すべきところは素直に直せばいいんだ。
 もう、彼女との縁は切れてしまったんだから……



  第二章 終わりと新たな出会い


 私の噂話も聞かなくなった頃、リアム兄様たち三年生の卒業式が行われた。
 これから登下校も、ランチタイムもリアム兄様とご一緒出来なくなると思うとすごく寂しい……
 邸で毎日会えるといってもこればかりは気持ちの問題なのだ。
 私も二学年に上がれば後輩も入ってくる。
 それは少し楽しみだけれど、その前に春休みがある。
 その間に王城ではトライガス王国からの使者の方を歓迎するパーティーが開かれるそうだ。
 実はそのパーティーに私も参加することになったんだよね。お父様とルイス兄様から『ヴィーを誰にも見せたくないけれど、夜会に参加しなければならなくなってしまった』と、泣きそうな顔でそう言われたら断れないよ。
 この国では十七歳になると成人と認められて、夜会にも参加出来るようになる。
 それに婚姻も認められている。
 そしてパーティーに参加するならドレスがいる。
 で、誰が私に一番似合うドレスを作れるかで、お父様、ルイス兄様、リアム兄様の三人が競い合っているんだよね。
 真剣にデザインを考えてくれている姿を見て、大切にされていると実感する。
 少し照れくさいけどね。
 で、選ばれたのはお母様が用意してくれていたドレス……
 着られれば何でもいいと思っていたけれど、あれは無いわ~。
 だって三人とも露出が少ないドレスだったのはまだいい。ただ生地は分厚く、ダボッとしていて身体のラインが分からないドレスを、示し合わせたように用意していたんだよね。
 あれじゃあマタニティドレスか何処かの民族衣装にしか見えないよ……
 そんな理由でお母様から却下され、今の私は光沢のある絹の青い生地に銀糸で繊細な刺繍のされたドレスを身にまとい、普段はしない化粧を施され自分で言うのもなんだが、とても似合っていると思う。
 エントランスで待っていたお父様とお兄様二人は私の姿を見てスゴく褒めてくれたけれど、絶対に一人にならないと約束させられた。
 海外のお客様も参加するパーティーで危険などないと思うんだけどな。
 でもここは素直に頷いておこう。
 初めての夜会とはいえ緊張をしないのは、きっとルイス兄様やリアム兄様が側にいてくれるから。
 二人のお兄様に挟まれてお父様とお母様の後に続いて入場した。
 ホールに入った瞬間目が開けられないほどの眩しさに目眩がした。
 目が開いた先には凄いとしか言えない光景が。
 前世でもこんなきらびやかな光景は見たことがない。
 ヤバイ急に緊張してきた。さっきまで平気だったのに手足が震える。

「大丈夫だよ」
「僕たちがそばにいるから安心して」

 左手はルイス兄様、右手はリアム兄様がギュッと握って優しく微笑んでくれた。
 それだけで落ち着いた。

「はい!」

 そうだよ、緊張する必要などなかったよね。
 私にはこんなに頼りになるお兄様たちがいるんだから。

「ルイス兄様、リアム兄様大好きです!」
「「ヴィーが可愛い!」」

 それからはお父様とお母様と一緒に挨拶回りをしたけれど、婚約者のいない私たち兄妹に自分の娘さんや息子さんを薦めてくる貴族がとても多くて驚いた。
 ルイス兄様は次期ディハルト公爵家当主だし、リアム兄様は一人娘だったお母様の実家バトロア侯爵家を継ぐし、二人とも頭脳明晰で、眉目秀麗、さらに優しくて超優良物件だもんね、そりゃあ狙われるよ。

「我が家は恋愛結婚を推奨していますから、本人に任せているんです」

 お父様もお母様も同じ言葉で何度も相手に断っていた。
 この国の女性の結婚適齢期は十七歳から二十四歳と早過ぎず、遅過ぎず。
 十七歳になって半年ほどの私は別に焦ってもいないし、最悪本当に嫁ぎ先がなければディハルト公爵家でお世話になるつもりだ。
 お母様は家格など気にせず好きな人のところにお嫁にいけばいいと言ってくれる。
 おや? 音楽が変わったと思ったら王族の登場のようだ。
 皆が頭を下げて臣下の礼をとる。
 ……あれが我が国の国王と王妃様。
 国王様はダンディで威厳もあり男前だ。
 王妃様は小柄で華奢なのに貫禄もある美女。あれで三人の男の子の母親なんだ。
 続いて王太子のアンドリュー殿下。国王によく似ている。
 第二王子のジョシュア殿下。王妃様似だったのね。
 最後にドルチアーノ殿下。彼も父親似ね。
 三人の王子に共通するのは黒髪に金色の瞳。それも国王様と同じ。そしてイケメンだということ。

「ヴィー、後で王太子殿下に軽く挨拶に行こうか。挨拶だけでいいからね。何も話さなくていいよ」
「ルイス兄様も一緒に居てくれる?」
「勿論だよ。ヴィーを一人にしないから安心して」
「じゃあ挨拶だけなら……」
「僕も隣にいるからね」

 リアム兄様が頭を撫でてくれた。
 次はトライガス王国からの使者の方々の入場だ。

「スカーレット・トライガス王女殿下のご入場~」

 紹介者の声がホールに響く……
 海外からの使者に王女様が含まれていたの?
 赤い髪に赤い瞳。白い肌に知性のある瞳、スッキリとした鼻梁、真っ赤な口紅もよく似合っている。そして魅惑的なスタイル。王女様のような方を絶世の美女って言うのね。
 王女様から目が離せなくて、続く使者の方の紹介は耳には入ってこなかった。
 国王様と王女様との挨拶が終わり、国王様の開始の言葉でパーティーが始まった。
 ホールの中央ではダンスを踊るお父様とお母様も見える。

「ヴィー、私と踊ってくれるかい?」

 ルイス兄様がひざまずいて手を差し出してくる。その顔はイタズラっ子のよう。
 私は手と自然と兄様の手に乗せていた。

「ヴィー、次は僕だからね」
「はい! 行ってきます」

 リアム兄様に送り出され、ルイス兄様と中央のダンスの輪に入って行く。

「ヴィーの初めてのダンスの相手が私で嬉しいよ」
「私もです! 緊張してますが頑張りますね」

 いつもルイス兄様とリアム兄様が練習に付き合ってくれていたから思いのほか、すぐに緊張もほぐれ楽しく踊れた。
 ルイス兄様はキリリとしたお顔が崩れっぱなしだったし、甘いお顔のリアム兄様は優しく微笑みながらだったから、周りの令嬢からの黄色い悲鳴があちこちから聞こえた。
 兄様たちが騒がれるのも納得だ。
 こんな素敵な二人が私の兄なのよ!
 変な優越感に浸りながらダンスを二曲踊りきった。
 それから疲れただろうと言って、ホールに用意された壁際のソファに座らせてくれた。
 突然ルイス兄様がチッと舌打ちした。
 珍しいなとルイス兄様が見ている方に視線を向けると、アンドリュー王太子殿下、ジョシュア殿下、ドルチアーノ殿下がこっちに向かって来ていた。

「おい! ルイス! お前の妹がこんなに可愛いなんて聞いてないぞ!」

 チッ!
 私が挨拶しようと立ち上がろうとするのを止めたルイス兄様からまた舌打ちが……

「言いましたよ? 私の妹は世界一可愛いとね」

 兄様! そんなことを外で言ってるの! やめて! 恥ずかしいよ~!

「ディハルト嬢、卒業式以来だね」
「そうですね」

 ジョシュア殿下は相変わらずマイペースだ。
 隣では王太子殿下とルイス兄様がまだ言い争っている……不敬罪とかにならないのかな?

「それにしてもディハルト兄妹が三人揃うと圧巻だね」

 なにが圧巻なんだろう? それに、ドルチアーノ殿下は何しに来たんだろう?
 何も言わず、ジョシュア殿下の後ろで以前同様ずっと私を睨んでるんだけど……そんなに私が嫌いか?
 ……もう赤の他人だし放っておこう。
 リアム兄様とジョシュア殿下も何やら話し込んでるし、暇だな~なんて思っていたらホールが騒がしくなった。背の高い男たちが私を囲んで会話しているから、ホールで何があったのか気になっても全然見えない。それに私座ったままだしね。

「お久しぶりです殿下方」

 誰かが挨拶に来たの?

「「「アレクシス!」」」

 アレクシス様って方ね。

「ルイス殿とリアム殿もお久しぶりです」

 みんなアレクシス様の知り合いなんだ。

「いつ帰ってきたんだ?」
「たった今ですよ」

 声しか聞こえないけれど、低音ボイスが耳に心地いいわね。

「もう一年留学期間があったはずだろ?」
「はい、ですが彼女が婚約者候補を辞退したと聞きましたので、帰ってきました」

 ん?

「お前まだ諦めていなかったのか?」

 ルイス兄様が呆れたように言った。

「はい、何年経とうと俺が諦めることはありません」


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