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⋯⋯1人か~
リュート殿下と婚約解消するまでは、取巻き?腰巾着?まぁ、そんな令嬢たちに囲まれていたけれど今は1人だ。
その令嬢たちはリュート殿下とエルザを引き離そうと必死のようだ。
馬鹿な子たち。たとえエルザに代わってリュート殿下と懇意になれたとしても、王妃になるのは難しいというのに⋯⋯
まあ、やるだけやってみればいいわ。
「メイ!」
「お兄様?」
いつもは生徒会の仕事で遅くなるのにどうしたのだろう?
「メイも今から帰るのか?」
「はい」
「じゃあ一緒に帰ろう」
「え?生徒会の仕事は大丈夫なのですか?」
「新しい生徒会長に引き継ぎしたから、今は一般生徒になったんだ」
「嬉しい!お兄様と下校まで一緒なんて嬉しいです!」
「可愛い妹と過ごす時間が増えて私も嬉しいよ」
そう言って私は頭を撫でられた。同時に周りから黄色い悲鳴は聞きなれたものだ。
きゃーきゃー騒がれても慣れているせいかお兄様は、令嬢たちに特別笑顔を向けることも無いけれど、不快そうな顔もせず至って普通に私と肩を並べて歩き出した。
彼女たちはどんなに騒いでもお兄様に媚びを売ったり、近付いて来ようとはしてこないんだよね。
お兄様は前世でいうアイドル的存在なのかもしれない。眼福眼福なんて拝んでいる令嬢もいるし⋯⋯
彼女たちの熱い視線を背中に受け馬車止めまであと少しのところで⋯⋯関わりたくない人物がまた現れた。
「レオ⋯クリフくん」
何だかな~前世を思い出したからか、彼女の仕草1つ取ってもわざとらしいんだよね。
祈るように手を組むのも、上目遣いも、その瞳に涙を浮かべているのも、すべてが計算づくのようで、女の私からするとイラッとする。
まあ、今までのこともあったからかもしれないけれど⋯⋯
周りを見渡してもリュート殿下は居ない。
まさかお兄様にまで⋯⋯
「メイ、帰りにカフェに寄らないか?」
「え?」
「最近できたカフェでケーキが美味しいと評判なんだよ」
「ケーキ!行きたい!」
今も昔もケーキは大好きだ!
お兄様ってば視界にも入れていない。彼女をまるっと無視するのね。
「レオクリフくん!」
無視されたからか、今度は頬を膨らませてぷんぷんと怒っているアピールしている。
やっぱりイラッとする。
それにしても、以前にも同じ呼び方をして注意を受けたのにエルザは直す気がないのね。
身分どうこう言うのは好きではないけれど、男爵令嬢が格上の公爵家嫡男に許されていない名を呼ぶだけでなくくん付けをするなんて⋯⋯ほら、お兄様のファンに睨まれているわよ。
「お、お願いレオクリフくん⋯⋯無視しないで⋯⋯」
今度は泣き落としか~い!
やっぱりイラッてくる。
「メイはケーキが好きだもんな。何個でも頼めばいいよ」
と、言いながらまた頭を撫でられた。
私に優しく微笑むお兄様の姿にファンの皆さまの悲鳴もヒートアップした。
さ、騒がしい⋯⋯
「やった~!お兄様大好き!」
いつものようにお兄様に抱きつく。
それを見たエルザが私を睨んだ⋯⋯うん、そんな気がしていたよ。
私の思っていたヒロインじゃないや。
もう、エルザは放置でいいや。
「レオクリフ殿」
馬車に乗り込もうとしたところでお兄様を呼んだのは、ザイフォン・デカリア伯爵家子息⋯⋯攻略対象者の1人。騎士団長の息子だ。
「⋯⋯なんだい?」
「エルザが話を聞いてほしいと言っています」
「何で?私は彼女をよく知らない。相談があるなら君が聞いてあげればいい」
「レ、レオクリフくん⋯⋯」
「名を呼ぶのを許していないと言ったはずだが?⋯⋯悪いが常識を知らない令嬢の話を聞く無駄な時間は私にはないよ」
「そ、そんな⋯ひ、ひどいわレオクリフくん⋯⋯」
お兄様が何度言っても分からないようだ。
いや、ワザと聞かないのかもしれない。
ザイフォンに肩を抱かれて見上げる彼女の上目遣いに、またまたイラッときた。
「ふぅ~君の話を聞かない私は酷い人間なのかい?」
「ち、違います。わたしはレオクリフくんとお話がしたくて⋯⋯」
また、上目遣いか⋯⋯しかもお兄様と視線が合った途端頬を染めるなんて下心丸出し!
「話なんて聞かなくていいさ。メイジェーンと一緒にカフェに行くんだろ?」
今度はカイザックの登場だ。
「カイザックくん!」
カイザックの登場に今度はこっちにも上目遣いだ。忙しいな。
「⋯⋯お前ワザとだろ?」
「え?」
「ワザと名で呼んでいるだろ?何度許可を出していないと言っても止めないよな?それにレオクリフ殿に話しかける前にメイジェーン嬢に謝る方が先じゃないか?」
それ!本当にそれ!
「え?」
まるで何で謝るの?って顔をしているのに、またまたまたイラッとする。
「カイザック、もうそれはいいだろ?」
それ?
「よくないね。ウチのメイに謝るまで私たちの前に現れないでくれる?それと君のその演技、私には通用しないから」
だよね!そうだよね!やっぱり演技だよね!
「ああ、俺にも通用しないぞ。⋯⋯ほら、メイジェーン嬢はカフェを楽しんでおいで」
と、また頭を撫でられた⋯⋯
落ち着いた彼はやっぱり年齢を偽っているのでは?と思ってしまった。
私たちが去ったあと、取り残されたエルザはザイフォンの胸で泣いていたそうだ。
が、その瞳から涙が流れることはなく、私の背中を睨んでいたのをカイザックは見逃さなかった。
リュート殿下と婚約解消するまでは、取巻き?腰巾着?まぁ、そんな令嬢たちに囲まれていたけれど今は1人だ。
その令嬢たちはリュート殿下とエルザを引き離そうと必死のようだ。
馬鹿な子たち。たとえエルザに代わってリュート殿下と懇意になれたとしても、王妃になるのは難しいというのに⋯⋯
まあ、やるだけやってみればいいわ。
「メイ!」
「お兄様?」
いつもは生徒会の仕事で遅くなるのにどうしたのだろう?
「メイも今から帰るのか?」
「はい」
「じゃあ一緒に帰ろう」
「え?生徒会の仕事は大丈夫なのですか?」
「新しい生徒会長に引き継ぎしたから、今は一般生徒になったんだ」
「嬉しい!お兄様と下校まで一緒なんて嬉しいです!」
「可愛い妹と過ごす時間が増えて私も嬉しいよ」
そう言って私は頭を撫でられた。同時に周りから黄色い悲鳴は聞きなれたものだ。
きゃーきゃー騒がれても慣れているせいかお兄様は、令嬢たちに特別笑顔を向けることも無いけれど、不快そうな顔もせず至って普通に私と肩を並べて歩き出した。
彼女たちはどんなに騒いでもお兄様に媚びを売ったり、近付いて来ようとはしてこないんだよね。
お兄様は前世でいうアイドル的存在なのかもしれない。眼福眼福なんて拝んでいる令嬢もいるし⋯⋯
彼女たちの熱い視線を背中に受け馬車止めまであと少しのところで⋯⋯関わりたくない人物がまた現れた。
「レオ⋯クリフくん」
何だかな~前世を思い出したからか、彼女の仕草1つ取ってもわざとらしいんだよね。
祈るように手を組むのも、上目遣いも、その瞳に涙を浮かべているのも、すべてが計算づくのようで、女の私からするとイラッとする。
まあ、今までのこともあったからかもしれないけれど⋯⋯
周りを見渡してもリュート殿下は居ない。
まさかお兄様にまで⋯⋯
「メイ、帰りにカフェに寄らないか?」
「え?」
「最近できたカフェでケーキが美味しいと評判なんだよ」
「ケーキ!行きたい!」
今も昔もケーキは大好きだ!
お兄様ってば視界にも入れていない。彼女をまるっと無視するのね。
「レオクリフくん!」
無視されたからか、今度は頬を膨らませてぷんぷんと怒っているアピールしている。
やっぱりイラッとする。
それにしても、以前にも同じ呼び方をして注意を受けたのにエルザは直す気がないのね。
身分どうこう言うのは好きではないけれど、男爵令嬢が格上の公爵家嫡男に許されていない名を呼ぶだけでなくくん付けをするなんて⋯⋯ほら、お兄様のファンに睨まれているわよ。
「お、お願いレオクリフくん⋯⋯無視しないで⋯⋯」
今度は泣き落としか~い!
やっぱりイラッてくる。
「メイはケーキが好きだもんな。何個でも頼めばいいよ」
と、言いながらまた頭を撫でられた。
私に優しく微笑むお兄様の姿にファンの皆さまの悲鳴もヒートアップした。
さ、騒がしい⋯⋯
「やった~!お兄様大好き!」
いつものようにお兄様に抱きつく。
それを見たエルザが私を睨んだ⋯⋯うん、そんな気がしていたよ。
私の思っていたヒロインじゃないや。
もう、エルザは放置でいいや。
「レオクリフ殿」
馬車に乗り込もうとしたところでお兄様を呼んだのは、ザイフォン・デカリア伯爵家子息⋯⋯攻略対象者の1人。騎士団長の息子だ。
「⋯⋯なんだい?」
「エルザが話を聞いてほしいと言っています」
「何で?私は彼女をよく知らない。相談があるなら君が聞いてあげればいい」
「レ、レオクリフくん⋯⋯」
「名を呼ぶのを許していないと言ったはずだが?⋯⋯悪いが常識を知らない令嬢の話を聞く無駄な時間は私にはないよ」
「そ、そんな⋯ひ、ひどいわレオクリフくん⋯⋯」
お兄様が何度言っても分からないようだ。
いや、ワザと聞かないのかもしれない。
ザイフォンに肩を抱かれて見上げる彼女の上目遣いに、またまたイラッときた。
「ふぅ~君の話を聞かない私は酷い人間なのかい?」
「ち、違います。わたしはレオクリフくんとお話がしたくて⋯⋯」
また、上目遣いか⋯⋯しかもお兄様と視線が合った途端頬を染めるなんて下心丸出し!
「話なんて聞かなくていいさ。メイジェーンと一緒にカフェに行くんだろ?」
今度はカイザックの登場だ。
「カイザックくん!」
カイザックの登場に今度はこっちにも上目遣いだ。忙しいな。
「⋯⋯お前ワザとだろ?」
「え?」
「ワザと名で呼んでいるだろ?何度許可を出していないと言っても止めないよな?それにレオクリフ殿に話しかける前にメイジェーン嬢に謝る方が先じゃないか?」
それ!本当にそれ!
「え?」
まるで何で謝るの?って顔をしているのに、またまたまたイラッとする。
「カイザック、もうそれはいいだろ?」
それ?
「よくないね。ウチのメイに謝るまで私たちの前に現れないでくれる?それと君のその演技、私には通用しないから」
だよね!そうだよね!やっぱり演技だよね!
「ああ、俺にも通用しないぞ。⋯⋯ほら、メイジェーン嬢はカフェを楽しんでおいで」
と、また頭を撫でられた⋯⋯
落ち着いた彼はやっぱり年齢を偽っているのでは?と思ってしまった。
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