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Episode.06
祖父を手伝っています
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鷹也は獣医師の国家試験に合格し、卒業後、実家で祖父と仕事をするようになって、2年が過ぎた。
鷹也は祖父の仕事を手伝い始めた当初、裕二と共に実家近くに住居を借り、2人で暮らすつもりだった。が、家族に押し切られ、祖父母との同居になった。
彼の実家には、動物病院が併設されている。訪れた患畜を診察するためだが、2人は畜産獣医なので、畜産や酪農家の牧場への往診の方が多い。しかも、仕事柄、時間を問わず、急患対応で出かけることもある。なので、この家で暮らしていた方が便利、と押し切られた。
実はもう1つ、理由があった。鷹也と裕二が実家近隣に戸建てや部屋を借りたり、新築しようものなら、それが三ツ橋家の敷地内であっても、裕二の兄からどんな横槍が入るかわからない、という懸念だった。
実際、裕二は、調剤薬局つきのドラッグストアをこの町に構え、鷹也とのんびりと生活する予定だった。そのため、チェーンのドラッグストアに就職しようとした。が、ある意味当然なのだが、それを兄に阻まれていたのである。
裕二は今、兄が立ち上げたプロジェクトの代表に就任させられ、道内を駆け回っている。
本社で兄の右腕として働かされるより、鷹也の実家を中心に、広いとはいえ、北海道で動けるだけマシ、という状況だった。
深夜、裕二と鷹也の部屋に、祖父がやってきた。
「鷹也、出られるか?
サイトウファームさんから緊急だ」
「うん」
疲れて眠る裕二を起こさないように、ベッドを抜け出し、着替えを手に、部屋を出る。
そのまま、2人は隣町の牧場まで車を走らせた。
2人が戻ったのは、翌日の昼前だった。
珍しく、裕二が、鷹也と祖父を出迎える。
「片づけるの手伝うから、シャワー浴びといで
おばあさんが食事を用意してくれている」
「じゃぁ、じいちゃん先に」
「おう、すまんな」
祖父は白衣と長靴を脱ぎ、そのまま屋内に向かう。車から、使用した機器を運び出す鷹也を手伝い、裕二が声をかけた。
「今日の予定、覚えてる?」
「え?
…… あ、あれ、今日?!」
思い出した鷹也が、車内の時計を見る。
「えっと、夕方だっけ?」
「札幌のホテルに17時、だ」
「何で行くの?」
「俺の車で」
うわぁ と、裕二の言葉に、鷹也が慌て始める。
通常、1時間以上かかる使用機器と車の洗浄消毒作業を、裕二が要領よく手伝い、40分程度で終わらせた。
それから、鷹也は急いてシャワーを浴びて、スーツに着替える。そこへ、祖母が、大きめのおにぎりを3つ、持ってきた。
「ありがとうございます
じゃぁ、鷹也を連れて行きますね
今夜は向こうに泊まるので、よろしくお願いします」
裕二が頭を下げ、2人は彼の大きな車に乗り込んだ。
途中休憩を入れ、4時間以上かけ、車は札幌中心部にあるホテルの駐車場にたどり着いた。
「着いたよ」
助手席で熟睡していた鷹也を、裕二が起こす。
「あ、もう?」
車内の時計は、16時過ぎを示していた。鷹也は車内で祖母のおにぎりを食べてからすぐ、移動中はぐっすりと熟睡していた。
「兄たちが昨日から泊まってるから、挨拶に行くけど
大丈夫?」
「え?
あ、うん うん」
驚いて、鷹也は激しく首を上下に振る。それを見て、裕二が笑った。
ホテルの最上階、デラックススイートとその隣室に、裕二の両親と兄・高遠征一郎の家族、征一郎の専属秘書が宿泊していた。
征一郎の家族は、オメガで妻の優美、5歳の長男の亮仁、3歳の次男の彬史、1歳の長女の美果の5人。専属秘書は遠縁の、A+ランクアルファの高遠利夫が勤めている。珍しく裕二の両親も揃っているのは、孫たちと次男・裕二のパートナーである鷹也が、久しぶりに揃うからだ。
事前に聞かされていたとはいえ、実質、高遠家親族の集まりだ。1人、血縁ではない鷹也にとっては、居心地の良いものではない。
裕二の後ろに続いて、鷹也が部屋に入ると、挨拶する前に、征一郎の子2人が飛びついてきた。
「タカちゃん、ひさしぶり!」
「ひさしぶりー」
孫2人に逃げられ、残念そうな裕二の父に、気まずくなりながら、鷹也が頭を下げ、挨拶をする。
「ご無沙汰しています」
「ああ
鷹也くん、元気そうでなによりだ」
義両親への挨拶もそこそこに、鷹也は子供2人の相手をし始める。それを眺めながら、裕二が兄と義姉に挨拶をした。征一郎と、長女を抱いた義姉が、鷹也にすまなそうに微笑む。
「ごめんなさいね
うちの子たち、鷹也さんが大好きみたいで」
「まさか、
鷹也がオメガだからってことないですよね?」
義姉の優美に、おどけて裕二が言う。それに気まずそうに、征一郎が答えた。
「上の子は先日、アルファだと判定された
もちろん、ランクはまだ不明だが」
「友人のオメガには、反応してないから
そんなことはないとは、思うんだけど」
優美は伏し目がちに話す。その、彼女の友人はA?、高ランクのオメガだった。
征一郎はA+++のアルファ、優美はA+のオメガ、運命の番の夫婦だ。その2人の子のアルファが、A++である裕二以上の高ランクである可能性は非常に高い。なので、A++オメガである鷹也のフェロモンに反応している、とは否定できなかった。
「亮仁は、鷹也くんのドコが好き?」
義父がさりげなく尋ねる。
「いいかおり!
おはなのおちゃの、すきなにおい!」
亮仁は嬉しそうに叫んで、鷹也にしがみつく。それを見て、やっぱり、という顔をし、裕二が甥を容赦なく引き剥がした。
「残念 この人は俺の」
鷹也が真っ赤になって、裕二を止める。
「子ども相手に、ムキにならなくても」
「甥でも何でも、フェロモンに反応するアルファだ」
それを見て、征一郎も笑った。
「亮仁は裕二と同ランクかもしれないな
血縁だから、相性も良いだろうし、なあ」
「兄さん
下手なコト言って、炊きつけないでください」
征一郎の言葉で緩んだ裕二の手をすり抜け、亮仁は嬉しそうに鷹也の足にしがみついた。
「ぼくじゃダメ?」
「ボクは裕二さんのパートナーだからね
亮仁くんは亮仁だけの相手をみつけなきゃ」
「えー
じゃぁ、ゆうじおじさんがいなくなったら
ぼくのとこにきてくれる?」
「裕二さんがいなくなったら
亮仁くんとはもう会えないよ」
「えー」
鷹也の返答に、亮仁がムクれたちょうどその時、部屋のドアがノックされた。
秘書の高遠利夫が対応する。
「お時間です」
ホテルの一番広いパーティ会場には、北海道を拠点とする企業だけではなく、全国規模の政財界のトップが集まっていた。
征一郎に続き裕二が簡単な挨拶と現状の報告、今後の事業計画を発表してから、立食パーティが始まった。
征一郎と裕二は、財界人だけでなく、地元の政治家や役人など、発言力のある人物たちと、挨拶と対話のために、会場内を忙しく歩き回っている。
残されて、1人ホテルディナーを楽しんでいる鷹也に、見知った顔の人物が声をかけてきた。
「三ツ橋くん、久しぶり」
「あ、加藤教授、いらしてたんですね
お久しぶりです」
札幌に北海道内外の政財界の重鎮が集まる、ということで、畜産獣医学の重鎮である加藤慶祐教授も、このパーティに参加していた。
鷹也は馬術部部員だった、というだけではなく、加藤教授の研究室に所属し、学位を受けている。
「三ツ橋くんはどう?
仕事にも慣れた?」
「はい、まだまだ祖父には及びませんが
若さと体力で、なんとがやっています」
「十勝だっけ?
やっぱり牛ばかり?」
「あ、いや、馬も結構多いです
最近は羊も」
「羊?」
「食用のブランド羊、増えてきましたよ」
「北海道の名物だもんねぇ」
「最近は本州に出すところも、多くなりましたから」
話が弾んできたところへ、初老の、恰幅の良い紳士が声をかけてきた。
「加藤先生、ご無沙汰しております」
「ああ、斎藤さん、お久しぶりです」
挨拶しあう2人に釣られ、鷹也も頭を下げる。それを見て、加藤教授が紹介をしてくれた。
「ああ、彼は僕の研究室の卒業生、三ツ橋鷹也くん
今、十勝で畜産獣医をしている」
「はじめまして、三ツ橋です
祖父を継ぐために、手伝い始めたばかりですが」
「あれ? 三ツ橋って、
三ツ橋畜産医院の、お孫さん?」
「ご存知ですか?」
「今朝、サラブレッドを、ウチの仔を取り上げてくれた先生、君?」
「あ、今朝の逆子」
「君たちだったか おかげで助かったよ
両オヤともG1優勝馬だったからね
アレがダメだったら、もうファームを閉じるくらいの損失だったよ」
「ありがとうございます
祖父にも、伝えておきます」
にこやかな斎藤氏の言葉に、鷹也は内心冷や汗をかいた。それでも、できるだけ、笑顔を保つ。
「でも、三ツ橋のお孫さんが、どうしてここに?」
「え、あ、それは」
「彼、高遠裕二氏のパートナーなんですよ」
赤面して言葉に詰まる鷹也をフォローするように、加藤教授が答える。
斎藤氏は、えっ と大きく目を見開いて鷹也をまじまじと見つめ、それから、うんうん と頷いた。
「なるほど、だからか」
斎藤氏はそう言うと、加藤教授に頭を下げ、その場を後にした。彼の言葉の意味がわからず、残された鷹也は首をかしげる。
「斎藤さんは、このパーティの意味がわかったみたいだね」
鷹也を見がなら、加藤教授がニヤリと微笑む。
「え、どういうことです?」
「高遠征一郎氏は弟思いだから、この案件は出資しても損はない、と彼は判断した、というところでしょう」
鷹也の頭上に、さらに多くの『?』が浮かんだ。
鷹也は祖父の仕事を手伝い始めた当初、裕二と共に実家近くに住居を借り、2人で暮らすつもりだった。が、家族に押し切られ、祖父母との同居になった。
彼の実家には、動物病院が併設されている。訪れた患畜を診察するためだが、2人は畜産獣医なので、畜産や酪農家の牧場への往診の方が多い。しかも、仕事柄、時間を問わず、急患対応で出かけることもある。なので、この家で暮らしていた方が便利、と押し切られた。
実はもう1つ、理由があった。鷹也と裕二が実家近隣に戸建てや部屋を借りたり、新築しようものなら、それが三ツ橋家の敷地内であっても、裕二の兄からどんな横槍が入るかわからない、という懸念だった。
実際、裕二は、調剤薬局つきのドラッグストアをこの町に構え、鷹也とのんびりと生活する予定だった。そのため、チェーンのドラッグストアに就職しようとした。が、ある意味当然なのだが、それを兄に阻まれていたのである。
裕二は今、兄が立ち上げたプロジェクトの代表に就任させられ、道内を駆け回っている。
本社で兄の右腕として働かされるより、鷹也の実家を中心に、広いとはいえ、北海道で動けるだけマシ、という状況だった。
深夜、裕二と鷹也の部屋に、祖父がやってきた。
「鷹也、出られるか?
サイトウファームさんから緊急だ」
「うん」
疲れて眠る裕二を起こさないように、ベッドを抜け出し、着替えを手に、部屋を出る。
そのまま、2人は隣町の牧場まで車を走らせた。
2人が戻ったのは、翌日の昼前だった。
珍しく、裕二が、鷹也と祖父を出迎える。
「片づけるの手伝うから、シャワー浴びといで
おばあさんが食事を用意してくれている」
「じゃぁ、じいちゃん先に」
「おう、すまんな」
祖父は白衣と長靴を脱ぎ、そのまま屋内に向かう。車から、使用した機器を運び出す鷹也を手伝い、裕二が声をかけた。
「今日の予定、覚えてる?」
「え?
…… あ、あれ、今日?!」
思い出した鷹也が、車内の時計を見る。
「えっと、夕方だっけ?」
「札幌のホテルに17時、だ」
「何で行くの?」
「俺の車で」
うわぁ と、裕二の言葉に、鷹也が慌て始める。
通常、1時間以上かかる使用機器と車の洗浄消毒作業を、裕二が要領よく手伝い、40分程度で終わらせた。
それから、鷹也は急いてシャワーを浴びて、スーツに着替える。そこへ、祖母が、大きめのおにぎりを3つ、持ってきた。
「ありがとうございます
じゃぁ、鷹也を連れて行きますね
今夜は向こうに泊まるので、よろしくお願いします」
裕二が頭を下げ、2人は彼の大きな車に乗り込んだ。
途中休憩を入れ、4時間以上かけ、車は札幌中心部にあるホテルの駐車場にたどり着いた。
「着いたよ」
助手席で熟睡していた鷹也を、裕二が起こす。
「あ、もう?」
車内の時計は、16時過ぎを示していた。鷹也は車内で祖母のおにぎりを食べてからすぐ、移動中はぐっすりと熟睡していた。
「兄たちが昨日から泊まってるから、挨拶に行くけど
大丈夫?」
「え?
あ、うん うん」
驚いて、鷹也は激しく首を上下に振る。それを見て、裕二が笑った。
ホテルの最上階、デラックススイートとその隣室に、裕二の両親と兄・高遠征一郎の家族、征一郎の専属秘書が宿泊していた。
征一郎の家族は、オメガで妻の優美、5歳の長男の亮仁、3歳の次男の彬史、1歳の長女の美果の5人。専属秘書は遠縁の、A+ランクアルファの高遠利夫が勤めている。珍しく裕二の両親も揃っているのは、孫たちと次男・裕二のパートナーである鷹也が、久しぶりに揃うからだ。
事前に聞かされていたとはいえ、実質、高遠家親族の集まりだ。1人、血縁ではない鷹也にとっては、居心地の良いものではない。
裕二の後ろに続いて、鷹也が部屋に入ると、挨拶する前に、征一郎の子2人が飛びついてきた。
「タカちゃん、ひさしぶり!」
「ひさしぶりー」
孫2人に逃げられ、残念そうな裕二の父に、気まずくなりながら、鷹也が頭を下げ、挨拶をする。
「ご無沙汰しています」
「ああ
鷹也くん、元気そうでなによりだ」
義両親への挨拶もそこそこに、鷹也は子供2人の相手をし始める。それを眺めながら、裕二が兄と義姉に挨拶をした。征一郎と、長女を抱いた義姉が、鷹也にすまなそうに微笑む。
「ごめんなさいね
うちの子たち、鷹也さんが大好きみたいで」
「まさか、
鷹也がオメガだからってことないですよね?」
義姉の優美に、おどけて裕二が言う。それに気まずそうに、征一郎が答えた。
「上の子は先日、アルファだと判定された
もちろん、ランクはまだ不明だが」
「友人のオメガには、反応してないから
そんなことはないとは、思うんだけど」
優美は伏し目がちに話す。その、彼女の友人はA?、高ランクのオメガだった。
征一郎はA+++のアルファ、優美はA+のオメガ、運命の番の夫婦だ。その2人の子のアルファが、A++である裕二以上の高ランクである可能性は非常に高い。なので、A++オメガである鷹也のフェロモンに反応している、とは否定できなかった。
「亮仁は、鷹也くんのドコが好き?」
義父がさりげなく尋ねる。
「いいかおり!
おはなのおちゃの、すきなにおい!」
亮仁は嬉しそうに叫んで、鷹也にしがみつく。それを見て、やっぱり、という顔をし、裕二が甥を容赦なく引き剥がした。
「残念 この人は俺の」
鷹也が真っ赤になって、裕二を止める。
「子ども相手に、ムキにならなくても」
「甥でも何でも、フェロモンに反応するアルファだ」
それを見て、征一郎も笑った。
「亮仁は裕二と同ランクかもしれないな
血縁だから、相性も良いだろうし、なあ」
「兄さん
下手なコト言って、炊きつけないでください」
征一郎の言葉で緩んだ裕二の手をすり抜け、亮仁は嬉しそうに鷹也の足にしがみついた。
「ぼくじゃダメ?」
「ボクは裕二さんのパートナーだからね
亮仁くんは亮仁だけの相手をみつけなきゃ」
「えー
じゃぁ、ゆうじおじさんがいなくなったら
ぼくのとこにきてくれる?」
「裕二さんがいなくなったら
亮仁くんとはもう会えないよ」
「えー」
鷹也の返答に、亮仁がムクれたちょうどその時、部屋のドアがノックされた。
秘書の高遠利夫が対応する。
「お時間です」
ホテルの一番広いパーティ会場には、北海道を拠点とする企業だけではなく、全国規模の政財界のトップが集まっていた。
征一郎に続き裕二が簡単な挨拶と現状の報告、今後の事業計画を発表してから、立食パーティが始まった。
征一郎と裕二は、財界人だけでなく、地元の政治家や役人など、発言力のある人物たちと、挨拶と対話のために、会場内を忙しく歩き回っている。
残されて、1人ホテルディナーを楽しんでいる鷹也に、見知った顔の人物が声をかけてきた。
「三ツ橋くん、久しぶり」
「あ、加藤教授、いらしてたんですね
お久しぶりです」
札幌に北海道内外の政財界の重鎮が集まる、ということで、畜産獣医学の重鎮である加藤慶祐教授も、このパーティに参加していた。
鷹也は馬術部部員だった、というだけではなく、加藤教授の研究室に所属し、学位を受けている。
「三ツ橋くんはどう?
仕事にも慣れた?」
「はい、まだまだ祖父には及びませんが
若さと体力で、なんとがやっています」
「十勝だっけ?
やっぱり牛ばかり?」
「あ、いや、馬も結構多いです
最近は羊も」
「羊?」
「食用のブランド羊、増えてきましたよ」
「北海道の名物だもんねぇ」
「最近は本州に出すところも、多くなりましたから」
話が弾んできたところへ、初老の、恰幅の良い紳士が声をかけてきた。
「加藤先生、ご無沙汰しております」
「ああ、斎藤さん、お久しぶりです」
挨拶しあう2人に釣られ、鷹也も頭を下げる。それを見て、加藤教授が紹介をしてくれた。
「ああ、彼は僕の研究室の卒業生、三ツ橋鷹也くん
今、十勝で畜産獣医をしている」
「はじめまして、三ツ橋です
祖父を継ぐために、手伝い始めたばかりですが」
「あれ? 三ツ橋って、
三ツ橋畜産医院の、お孫さん?」
「ご存知ですか?」
「今朝、サラブレッドを、ウチの仔を取り上げてくれた先生、君?」
「あ、今朝の逆子」
「君たちだったか おかげで助かったよ
両オヤともG1優勝馬だったからね
アレがダメだったら、もうファームを閉じるくらいの損失だったよ」
「ありがとうございます
祖父にも、伝えておきます」
にこやかな斎藤氏の言葉に、鷹也は内心冷や汗をかいた。それでも、できるだけ、笑顔を保つ。
「でも、三ツ橋のお孫さんが、どうしてここに?」
「え、あ、それは」
「彼、高遠裕二氏のパートナーなんですよ」
赤面して言葉に詰まる鷹也をフォローするように、加藤教授が答える。
斎藤氏は、えっ と大きく目を見開いて鷹也をまじまじと見つめ、それから、うんうん と頷いた。
「なるほど、だからか」
斎藤氏はそう言うと、加藤教授に頭を下げ、その場を後にした。彼の言葉の意味がわからず、残された鷹也は首をかしげる。
「斎藤さんは、このパーティの意味がわかったみたいだね」
鷹也を見がなら、加藤教授がニヤリと微笑む。
「え、どういうことです?」
「高遠征一郎氏は弟思いだから、この案件は出資しても損はない、と彼は判断した、というところでしょう」
鷹也の頭上に、さらに多くの『?』が浮かんだ。
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