草鞋の霊媒師~生前、魔王軍で人を苦しめる呪術師でしたが今世は魔王軍もいなくなったことですし、霊媒師として人のために生きてみようと思います~

まほまほ

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喜ばしくも不穏な目覚め

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 見覚えのない天井だ。

 むくりと起き上がる。あ、こんなに起き上がりやすいの初体験。

 え、なにこれ。
 その正体は、ふかふかで自分の体温でぬくぬくに温まった真っ白いベッド。

 俺が、〝こんなの〟に寝ていた?
 驚愕の事実。今まであり得なかった夢が一つ、気づくと叶っていた。

 ああ、よかった。
 安堵の涙。喜びの絶頂。それは、〝前世〟では味わえなかった感触。

「生まれ変わって……よかったぁ!!」

 そう、俺は転生者だ。

 元魔王軍の下っ端呪術師だった。
 魔王軍で活躍すれば、家をくれるという契約で加入しただけの、ただの呪術師だ。
 それが、あろうことか俺の活躍はどんどん蔑ろにされて、結果、与えられたのはたったの小隊一個分だけ。

 俺の下についた奴は、可哀そうな奴らばかり。
 そんな魔王軍なんて、別にどうなったっていいよね。

 そんなこんながあり、俺は呪術師の間だけに伝わる転生の秘術の書を、呪術神殿ダンジョンから盗み出し、今ココ。

「俺って天才じゃんね!? これってスゴイことじゃんね!? やっぱそうじゃんね!?」

 気分が上がる。

「フン! 魔王軍、さらば! すなぬ、部下達よ……。だが、俺は成し遂げた! 最強の秘術を成功させた呪術師は、まぁ実際どの程度の数いるか知らないが。それでも俺は成った! さらば呪術師生活! こんにちは新しい生活!」

 ベッドの上でルンルン。

 だが、大事なことの確認を忘れていたな。

「あ、まてよ。俺は今、種族はなんだ? 体の特徴的には、ほとんど人間だ。耳も……短い。腕の関節も……人間のものだ。尻尾なんかもない」

 赤茶系の短髪に、鏡で見ると、割とイケてそうな顔。

「体格は生前とほとんど変わらず、細身だが、すこし筋肉質だな。体力的に、生前よりも起き上がるのに苦がなかったし……」

 ……。

「起き上がるのに苦い思い出があるのは、地べたで寝てたりする生活だったからで……」

 なんかむしゃくしゃしてきた。

「だぁぁぁ!! くそ! 前世の記憶なんか残ってなけらよかったぜ!」

 はい、気を取り直して。

「俺は見るからに人間だ。 つまるところ、出来ていてもうれしくはないが、まぁ出来ないよりはマシなアレの存在はどうだろうか……」

 アレとは、すなわち、アレだ。

呪詛眼カースアイ‼」

 俺は、呪詛眼カースアイを発動した。
 呪詛眼カースアイは、生命が生み出すあらゆる想念を自分の目だけに可視化することができる呪術だ。
 スピリット体の魔物や、人のスピリット、場に残ったスピリットの残滓などを一目で見抜くことができ、未踏破のダンジョンなどで過去の先駆者達がどのように攻略し挫折したかなんてのもわかるため、呪術師であれば必須の能力だ。

 つまり、俺は……

「生まれ変わっても呪術師ってことかぁ……」

 使えなきゃいいのに、何か新しい職業になれたらなって考えてたのに。

 しょぼぼん。

 ともかく。

「ともかくだ! 俺は今までにない生活をすでに手に入れて生まれ変わっていた事実がある! そして、いつまでも寝巻のままでいられない! そう俺は目覚めたばかりなんだ! 俺にはまだまだ明るい未来が……ん?」

 俺は、寝巻の上を脱いで気持ちよく半裸になろうとした。

 その時、服の下から、何やら見覚えのある「残滓」がハラリと床に落ちた。


 
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