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1章.無能チート冒険者になる
16.無能チートと薬草採取
しおりを挟む「門番さん、こんにちは! お疲れ様です!」
「貴女は……確か昨日の、身分証は無事作れましたか?」
街の入口で、門番さんに挨拶した、なんと私の事を覚えていたらしい。
「毎日、あんなに沢山の人を相手にしてるのに、よく覚えていましたね」
「職業柄、どんな人物が街に入ったか、覚えておく必要がありますからね。それに、ここら辺では珍しい黒髪ですし、顔も特徴的でしたからね」
「くふふっ、確かにトンボ、眉毛太くて、チャーミング」
「ぐぬぬっ……」
セヨンさんめ! ちゃんと整えてるから、そこまで可笑しくはないやい!
「いっ、いえ! 決してその様なことは! 可愛らしい顔だと思っていただけで!」
ほらっ! 真面目そうな門番さんが困ってるじゃない!
「すいませんね。はいっ、これ身分証です!」
「はい、お預かりしますって、あれ? 冒険者になったのですか?」
「あ、はい、たまたま魔法の才があったみたいで……」
「なるほど、魔法が使えるなら、冒険者も選択肢のひとつですからね」
危ない危ない、そうだった、私は田舎から出稼ぎに来た村娘Aって設定だった。
「はい、確認しました。門は20時には閉めますので、それまでに戻って来てくださいね。それと、最近魔物の目撃証言が多くなっていますので、気をつけ下さい」
こちらの世界でも、1日は24時間だ。
1週間は8日で、1年は400日らしい。
「わかりました! 行ってきます!」
門を抜け、見送ってくれる門番さんに手を振って、私達は始めに転移させられた、あの森を目指し歩き出した。
エルティスさんと門番さんが言う、森の魔物の変化に、若干の不安を覚えつつ。
森の中に入ると、思ったより早く、薬草の生えるスダの木は見つかった。
「というか、いっぱい生えてる!」
スダの木と思われる、根元が青みがかった背の低い木は、結構な数が生えていた。
こんな沢山見つかっていいものなの?
「スダの木、森の中じゃないと、育たない。その代わり、植林、いっぱいされてる」
「なんで森の中でしか育たないんですか?」
「それは、わかってない。森のマナが、関係している、いわれてる」
「マナ?」
「自然の中、漂う、魔力。森の中、緑のマナ、多い」
マナは色で別けられており、森の緑以外は、火山など火の思っい所は赤のマナ、湖など水の多い所は青のマナ、砂地や岩の多い所は黄のマナ、そして、どこにでも存在している、黒と白のマナ。
それが基本の六色だと言われているらしい。
「魔法、マナに呼び掛けて、使う。でも、中には色ないマナ、ある。トンボの壁魔法、ワタシの念動、色無い」
「無色のマナですか、なんか特別感ありますね」
「無色のマナ、無属性魔法しか、使えない」
「えっ、まさかそれって……」
「無属性魔法使い、他の魔法使えない」
私の、魔法使いへの道が閉ざされた瞬間だった。
ちくしょう! 別の意味での特別だった!
「こうなったら、なんとしても壁魔法の有効利用を考えないと……」
「ん、トンボなら、できる、がんばれ」
セヨンさんの励ましに、気を取り直した私は、フィレオの道具屋で買った(セヨンさんが)採取道具を使い、薬草の採取をはじめた。
「トンボ、薬草採るとき、周囲、気を付ける」
「はいっ、常に警戒を怠らず、いち早く危機の察知をできるようにします」
「ん、見るだけじゃない、音、匂い、魔力、使えるもの、なんでも、使う」
「はいっ、でも、私魔力の使い方わかりませんよ? そもそも魔力量少ないみたいですし」
「ん~、今度、使い方、教える」
会話をしつつ、採取を続けると(当然、周りにも注意を向けてるよ)、保存袋はあっという間に満杯になった。
「わちゃ、もういっぱいだ。まだまだ採れるのに」
周りには、まだまだ葉の付いたスダの木が、沢山生えている。
「エルティスさんが、1本の木から取りすぎないようにって言うから、抑え気味にしたのに、それでも多すぎない?」
「最近、新人、薬草採取しない。ゴブリン、フォレストウルフ、魔物退治、したがる」
なるほど、ゲームで例えると、チュートリアルを飛ばしたがる感覚なのかな?
私もゴブリン退治を選ぼうとしたし、気持ちもわからないでもない。
「最近、薬草少ない、フィー、困る、冒険者、もっと困る」
「なんでおっちゃんが困るんですか?」
「フィー、ポーション調合、できる。ポーション、色んなお店、安く卸す。材料少ない、ポーション作れないし、卸せない」
えぇ! あの巨体で調合?! 似合わないわー。
「おっちゃん、お店は繁盛してなさそうなのに、そんな所で稼いでたのか……」
「フィー、一度に沢山、ポーション作れる。街のポーションの半分、フィーが作ってる」
「うわー、おっちゃんスゲー」
あれ? おっちゃんって地味に、あの街の冒険者の生命線なんじゃないの?
おっちゃんが他の店に、ポーションを安く卸さなかったら、数少なくなるし、絶対値上がりして、冒険者はポーション買い辛くなるでしょ?
しかも、一番安くポーション買いたいはずの新人が、薬草採取をしないから、自分の首を絞めてる状況じゃん!
「じゃあ、おっちゃんのため、延いては私のために、薬草沢山採って行きましょう!」
「ワタシの、マジックバッグ、つかう?」
「マジックバッグ? 何ですかそれ?」
「これ」
鎧の胸部が開き、生セヨンさんが私に、小さな四角いバッグを見せてくれた。
「このバッグ、見た目小さい、でも中、いっぱい入る。色々入ってる、けど、まだ少し、入る」
「おお! アイテムボックスですね?! この世界にもあるんだ!」
「トンボの故郷、マジックバッグ、ある?」
「あっ、いえ、本当にある訳じゃなくて、物語の中とかにでてくるんです。名前もアイテム袋とか、アイテムボックスとか、四次元ポ◯ットとか、色々で……」
正確にはゲームの主人公とか、猫型ロボットが使ってるけど。
「もしかしたら、マジックバッグ、開発した、渡り人かも、しれない、ね」
「そうかも知れませんねぇ」
マジックバッグとアイテムボックス。元の世界では、想像の産物もだったものが、異世界で実用化されてる。
それは結構ロマンがあって、素敵な考えだと思った。
ふむ。ボックス……箱かぁ。
「壁は床に、壁は天井に、四方を囲めば……壁魔法『トンボ式アイテムボックス』!」
イメージを固め、壁魔法で壁を6枚出して、それぞれを組み合わせ、空中に正六面体を作る。
見た目はガラスでできた巨大サイコロ?
「トンボ、それは?」
「トンボ式アイテムボックスです! 見た目通りしか入りませんが、保存袋の代わりにはなりますし、見ての通り浮いてますから、持ち運びは楽ですよ」
イメージ的には、元の世界のコンテナかな。
箱の一面だけを動かし、箱を開けると、アイテムボックスの中に薬草を入れていく。
箱の中が満杯になったので、蓋をして完成。
壁が透明だから、遠目からは四角い緑色の物体に見えて、不気味だった。
「中身が入っても大丈夫だし、壁は一度出したら魔力を使わなくても維持できるみたい」
これなら、物を一度に沢山運べるよ。しかも手ぶらで済むのが便利。
「後は……セヨンさん、ちょっと実験したいので、少しここから離れましょう」
「トンボ、壁魔法の使い方、変」
確かめたい事ができたので、セヨンさんの方を向くと、マジックバッグを手にしたままのセヨンさんから、呆れたようなジト目を向けられていた。
失礼な! 壁魔法を壁として使わせてくれない、うっかり神が悪いのに!
「いいから、行きましょう」
壁魔法は、出現場所を視界の中に収める必要がある。実際はもっと不便だけど。
一度出した壁は、見えなくなる位離れたら消えるのか、それとも消えないのか、確かめるのだ。
私は無理矢理、セヨンさんの鎧の胸部を閉めると、その背中を押して、アイテムボックスを残したまま、その場を離れた。
まさかその先に魔物がいるなんて、この時の私は知るよしもなかった。
ーーーーーーーーーー
えっ? アイテムボックスって異空間収納と容量無限が当たり前? そのアイテムボックスは知らない子ですねぇ。
他所は他所、うちはうち。無能チートに期待してはいけない(戒め)。
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