無能チートで冒険者! ~壁魔法も使いよう~

白鯨

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 1章.無能チート冒険者になる

27.無能チートとスタンピード

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「警鐘だと?! オーク共が近くまで来たのか?!」


 鳴り響く鐘の音に、いち早く反応したのは、おっちゃんだった。


「娘っ子! 冒険者ギルドに行け! そこでセヨンと合流できる! 俺様は魔力ポーションを瓶に詰めて、各種ポーションを運び出せるように準備する!」
「わ、わかった!」
「低ランクだから、やることは避難誘導位だろうが、気を付けろよ!」


 おっちゃんの指示に従い、私は店を飛び出した。

 大通りには、警鐘に何事かと出てきた人で、ごった返している。
 門番さんと同じ鎧を着た兵士が、詳細は後で説明するから、今は家に戻るようにと、言って回っていた。
 行商人などは慣れたもので、すでに屋台や露店を閉じはじめていた。その後は商業ギルドで情報を集めて、どう行動するか決めるんだろう。
 それでも、誰も彼もが不安そうな顔をしている。
 私はその光景を目に焼き付け、道具屋の向かいの冒険者ギルドに飛び込んだ。

「おお! トンボ嬢ちゃんも来たか! セヨンはどうした?」
「今日はお休みで、別行動してたから、セヨンさんが今何処にいるかわからない……」
「まぁ、三連叩きの警鐘は“斥候による脅威の接近確認”だからな、二連以下だと物見による脅威の接近確認になって、集まってる時間なんて無くなるが、三連なら大抵の冒険者はギルドに集まる。その内セヨンも来るだろうさ」


 ギルドに入ってすぐ、ロジャーが私に気付き、話しかけてきた。
 どうやらまだ時間はあるらしい。その話を聞いて、焦っていた心を落ち着けようとした。しかし、なにもしていないのに早鐘を打つ心臓の音が、余計に私を焦らせた。

 その時セヨンさんが、慌てた様子で冒険者ギルドに入って来た。その忙しなく動く視線が、私を捉えた。


「トンボ!」
「セヨンさん!」


 私とセヨンさんは、互いに駆け寄ると、無事を確認しあった。
 セヨンさんが近くに居るだけで、不思議と焦りは消えていった。
 落ち着いて周りを見ると、すでに結構な数の冒険者が集まっていた。私と同じ新人冒険者もいて、中にはあの4人組の姿も確認できた。
 先程の私と同じく、新人達の表情は固かった。


「大体集まったか?!」


 2階の吹き抜けから、ギルド全体に響く声で、ギルマスが全員に呼び掛けた。
 冒険者達の視線が集まったのを確認し、ギルマスは続けた。


「もう知っている人間もいるかもしれないが、今この街に向かって数百のオークの軍勢が迫って来ている! 冒険者ギルドの規約に則り、お前達にも街を守るため、力を貸してもらう!」


 やっぱりオークロードのスタンピードが起きたんだ。
 事情を知らなかった冒険者達がざわめきだした。新人冒険者達に至っては、顔を青くしている。


「そんな大量のオークがいたなら、もっと早く発見できたんじゃないのか?」
「うむ、オークの集落など近くの森にはなかったはず……確かにおかしいな」


 誰かが疑問を口にした。
 確かにオーク達が、遠くの集落から態々出てきたのだとすれば、はじめに出した斥候で発見できていただろう。


「オークの軍勢を率いているのはオークロードだ。しかもかなり頭の良い個体らしくてな。地下に穴を掘って街に近づいていたらしく、ウチから出していた斥候が捜索範囲を広げた途端、一気に出てきたそうだ。地下に穴を掘っているのが気付かれる前に、攻めにきたんだろう」
「オークロード……」
「オークがそんな戦略的な行動を取るなんて、聞いた事ないぞ」


 先程よりざわつきが大きくなる。
 やはりこのオークロードは、おかしいみたいだ。


「静かに! 大事なのは、どうやってオークが接近できたのかを議論することではなく、これからどう対応するかだ! ……話を続けるぞ。Cランク以上の戦闘のできる冒険者には、領軍と協力して、オークの軍勢の殲滅をしてもらう! 戦闘が得意ではない者と、Dランクには街の避難誘導や見回りを、警備隊に代わり行ってもらう!」


 ギルマスの言葉に、一時疑問を呑み込み頷く冒険者達。これも、ギルマスが信頼されているからできることだよね。
 

「よし! 戦闘員は東門前に集合! 残りはサブマスの指示に従え! Eランクは避難しても構わない! では行動開始!」
「「「「おう!」」」」
「よっしゃー! 新しい武器の試し切りだ!」
「パーティーの中で、誰が一番オークを狩れるか勝負だ!」
「今夜はオーク肉で焼き肉パーティーだ!」


 力強く返事をするベテラン冒険者達の表情に、不安など微塵も表れてはいなかった。
 いつもの酒場で騒いでいる時のように、どこまでも気楽で、自然体な彼らは、私の目に頼もしく映った。


「トンボ、ワタシ達、パーティーランクはD、エルの所、いく」
「はい! ってなんでエルティスさんの所に?」


 冒険者のパーティーランクは、個人のランクと異なり、パーティーで一番ランクの高い人のランクと同じになる。
 なので、私達グル・グルヴはDランクになり、パーティーで活動する限り、私はDランクと同じ扱いになる。
 しかし、私達が指示を受けるのはまだ会ったことないサブマスであり、関係ないエルティスさんの所に何をしにいくのかと、私がセヨンさんの指示に疑問をおぼえていると、呆れた顔を向けられた。


「トンボ、ギルマスの指示、聞いてた? ワタシ達、サブマスの所いく」
「えっ! あっ、じゃあ、まさかエルティスさんって……」
「ん、サブマス」


 なんと! あのビビりのエルティスさんが、ギルドのサブマスターだったなんて!
 確かに仕事はできる。物腰も丁寧。ギルマスのサポートをするサブマスとしては、これ以上ない人材か。よくビビるけど。


「トンボ、セヨン!」


 衝撃の新事実に驚いていると、私達を呼びながら、ギルマスが近づいて来た。


「すまんが、お前達には物資を東門に運ぶのを手伝ってもらう」
「おぉうそうか、私達の魔法なら、一時に沢山運べるから、だね!」
「そうだ、ウチのギルドに、お前達以上の運び屋はいないからな、ついてこい」
「ははっ、煽てても何も出ないよ」


 と言いつつ、実は内心大喜びだぜ!
 私とセヨンさんの魔法は、荷物運びに特化している。ギルドの依頼で荷運びをした時は、グル・グルヴだけで、3日分の荷物運びを1日で終わらせた実績があるのだ!
 そりゃ、天狗にもなりますよ。

 ギルマスに案内された倉庫には、ポーションや武器防具、様々な道具の入った木箱が置いてあった。
 あれがおっちゃんの言っていた、納品したポーション類なんだろう。
 私は壁魔法の床を出し、そこにセヨンさんが念動で動かした木箱を乗せ、一気に運び出していく。
 
 ギルマスの誘導に従い、東門に向かって物資を運んでいると、前方から、騎士のような装飾過多な鎧姿の男達が、馬を走らせやってきた。


「やっと来たか、冒険者のギルドマスターよ!」
「ああん? 領軍の軍団長様が、こんな所にいていいのか? 東門に軍の配置は済んでるんだろうな?」


 無駄に立派なカイゼル髭を生やした、一番豪奢な鎧を着たおじさん騎士が、馬に乗ったまま、ギルドマスターに話しかけてきた。
 どうやらこの人が、領軍の責任者らしい。
 ギルマスの真っ当な指摘に、馬鹿にしたような、いやらしい笑みを浮かべて、軍団長は言った。


「領軍は領民の避難誘導を優先する、東門はお前達冒険者だけで守れ」


 理解不能なその言葉に。
 私の中で。
 何かが。
 軋む音が聞こえた。





ーーーーーーーーーー

堪忍袋の緒「ぐぎぎっ」
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