箱庭世界の壁魔法使い ~神様見習いはじめました~

白鯨

文字の大きさ
37 / 51
第二章 箱庭の発展と神の敵対者

11.「助けて」

しおりを挟む

 ちょっぴり鬱回です。

ーーーーーーーーーー


side.ミウ・リーロット

 
 悪い盗賊にさらわれたら“ドレー”にされるんだって、お隣のジジにーちゃんが言ってたの。

 “ドレー”って何? ってお兄ちゃんに聞いたら、ピコット村にはお父さんがいるから知らなくても大丈夫だって言ってた。
 お兄ちゃんは凄い物知りなの!
 
 それに、ミウのお父さんは凄い強いの!
 いっつもおっきなイノシシとか捕まえてくるの!

 母さんはもういないけど、ミウには父さんとお兄ちゃん、それにピコット村のみんながいるから寂しくないよ。

 だけど、村に凄い怖いおじちゃん達がやって来たの。
 おじちゃん達は、お父さんが触ると危ないってミウに触らせてくれない、剣ってやつを持っていたの。

 怖い顔で剣を振り回して、ピコット村のみんなを追いかけるおじちゃん達。
 すごい……すごい怖かったの。

 でもお父さんが不思議な力でミウ達を守ってくれたの。
 お父さんは猫人族の中でも珍しい、“ふたお”って力を持っているってお兄ちゃんが言っていたの。

 でもお父さんが強くても、おじちゃん達は沢山いて、他のみんなが捕まっちゃったの。
 ジジにーちゃんとヒコねーちゃんも、ダヤンねーちゃんとトムくんも、みんな、みんな。

 おじちゃん達がみんなに剣を向けると、みんなは泣きながら「助けて」「おじさん助けて」って言ったの。

 そうしたら、お父さんは不思議な力を使うのを止めちゃったの。

 お父さんは泣きそうな顔で「子ども達は見逃してくれ」って、おじちゃん達に言ってたけど、おじちゃん達は何も言わないで、お父さんに剣を。

 そこから先はよくわからないの。
 お兄ちゃんが手でミウに目隠しして、何も見えなかったの。

 それからミウ達は、おじちゃん達の馬車に乗せられて、遠い所に連れていかれたの。

 手足と首に変な物を付けられて痛かったけど、それを言ったらおじちゃん達に叩かれたの。
 怒鳴ったおじちゃん達はすごい怖いから、ミウは少し痛いのも我慢したの。

 ごはんも少なくて、みんなでひとつのパンをわけっこして食べたの。
 お兄ちゃんは、「お腹減ってない」って言って、ミウとトムくんに自分の分をわけてくれたけど、夜中お腹がグーグーいってたから、ミウはいらないって言うようにしたの。

 水浴びもできなくて身体中がかゆいし、お腹も減ってるけど、それを言うとまたおじちゃん達に叩かれるから、ミウは我慢したの。

 そしたら、ミウより小さいトムくんが、寝たまま起きなくなっちゃったの。
 ミウが強く揺すっても、名前を呼んでも、起きなくなっちゃった……。

 ダヤンねーちゃんとヒコねーちゃんは泣いちゃうし、ジジにーちゃんはすごい怖い顔をしてたの。
 それを見てミウも泣きそうになったけど、お兄ちゃんがぎゅってしてくれたから我慢できたの。

 トムくんはおじちゃん達に連れていかれちゃったの。
 お兄ちゃんは「トムは疲れて長く寝ちゃってるんだ」って言ってたの。
 だから別の所で休ませるんだって。
 トムくん、はやく元気になるといいの。

 トムくんがいなくなってから、ごはんがちゃんと出るようになったの。
 でも、「きっと助けが来るよ」「大丈夫だよ」っていつも言ってたダヤンねーちゃんも黙るようになったし、ジジにーちゃんはブツブツと、聞こえない小さい声でずっと何か言ってて、ミウはすごく寂しくなったの。

 そしたらその日の夜、ジジにーちゃんがパンを持って来たおじちゃんに体当たりしたの。
 手と足についてるやつのせいで、一緒にジジにーちゃんも転んじゃったけど。

 ジジにーちゃんはすごい怖い顔で「トムの“カタキ”だ!」って言いながら、おじちゃんの首に噛みついたの。
 すぐに他のおじちゃん達が気付いて、ジジにーちゃんは引きはがされて、おじちゃん達に囲まれたの。

 お兄ちゃんが「聞くな!」って言って、ミウの顔ををぎゅってつつんでくれて、手が小さくてまだ自分で耳をふさげないミウのかわりに、おっきな手でミウの耳をふさいでくれたの。
 何も見えなくて何も聞こえないの。

 でも、ミウの耳をお兄ちゃんがふさいだら、お兄ちゃんの耳は誰がふさぐの?
 
 ジジにーちゃんはトムくんと同じで、どっかに行っちゃった。
 
 ジジにーちゃんとトムくんが心配で眠れなかった時、おじちゃん達が話しているのを聞いてしまったの。
「ここではあのガキどもを“ドレー”として売れないから、さらに隣の領に行く」って。

 おじちゃん達は悪い盗賊で、ミウ達は“ドレー”だったんだ。
 
 なんだかミウは怖くなっちゃったの。
 “ドレー”って何をされちゃうの?
 ピコット村には帰れるの?

 だれか……ミウ達を助けて。

 ミウはそのまま、朝までねむれなかったの。

 次の日に、盗賊さん達が「お前らすげぇ臭い」って言うから、ミウ達は川で水浴びする事になったの。
 
 ダヤンねーちゃんとヒコねーちゃんは、久しぶりに水浴びができて、少しだけ元気が戻ったの。
 それに、やっぱり二人とも美人さんなの。
 
 そしたら、「久々の女がなんとか」とか「味見がなんとか」って言って二人を連れて行っちゃったの。

 その日もお兄ちゃんはミウをぎゅってしてくれて、耳をずっとふさいでいたの。
 お兄ちゃんは耳をふさがなくて大丈夫なの?
 ふるえる手でミウを力強くぎゅってするお兄ちゃんが、ミウは心配なの。

 ダヤンねーちゃんとヒコねーちゃんも帰って来ない。
 
 そのかわり、盗賊さん達がケンカをしたの。
 「“ショウヒン”を壊しやがって!」とか、「追加を“チョウタツ”する!」とか言ってたの。

 ミウとお兄ちゃんはどうなっちゃうの?


ーーー


 ミウとお兄ちゃんは馬車から下ろされて、テントの隣に置いていかれたの。
 二人の盗賊さんとお留守番なんだって。

 何もしないと、ピコット村の楽しかった事を思い出しちゃうの。
 かわいいトムくん、ヤンチャなジジにーちゃん、美人のダヤンねーちゃん、優しいヒコねーちゃん。

「お兄ちゃん、みんなどこ行ったの?」

 ミウはお兄ちゃんに聞いてみたの。
 物知りなお兄ちゃんならきっと知ってるの。

「ミウ……ゴメン、兄ちゃんにもわからないや……」

 お兄ちゃんは震える声で言ったの。
 お兄ちゃんがわからないなら、きっと誰にもわからないの。
 だから、ミウはそれでなっとくするの。
 
「へへっ、それならさぁ……俺が教えてやろうか?」 
「え?」
 
 お留守番の盗賊さんが、ニヤニヤしながらそう言ったの。

「ミウダメだ!」

 なんだかすごくイヤな感じがしたの。
 お兄ちゃんの言う通り、聞いちゃダメだと思ったの。

 でも、ずっと、ずっと我慢してたの。
 本当はずっと聞きたかったの。
 お父さんはどうなったのか、みんながどこに行ったのか。

 ただ、みんなにまた会いたかっただけなの。
 お父さんに、ピコット村のみんなに……また会いたかっただけなの。
 だから、ミウは盗賊さんに聞いたの。

「みんな…………どこに行ったの?」

 盗賊さんは優しそうにニッコリと笑って。

「みーんな死んじゃったよぉ。知ってるかなぁ死ぬって、もう、会えないって事だよぉ。君のお父さんも剣でザックリ斬っちゃったし、チビは餓死したからその辺にポイッて捨てた」

 ナニを言ってるの?

「生意気に噛みついてきたガキはボコボコにしてたら死んだし、女はちょっと遊び過ぎて死んじゃった。村だって火を着けて燃やしちゃったから、もう帰れないし誰にも会えないの。わかるかなぁ」

 みんな、もう、会えない?
 もうピコット村はない?

「おいあんま挑発すんな! お前ついこの前、チビが死んだのを煽ってガキに噛みつかれたの忘れたのかよ!」
「へへへっ、ちょっとした遊び心だよぉ。それに逆らうようならまた殺せばいいじゃん」
「バカ野郎。あのワケわからねぇ力を使った猫人のガキだぞ、高く売れそうなんだから殺すんじゃねぇよ」

 死。
 知ってるの。
 ミウのお母さんは死んだの。
 死んだら、もうずっと会えないの。

「で、でも……みんな言ってたの! 「助けて」って言ってたの!」
「はぁ? いきなりなに?」
「お父さんが言ってたの! 「みんな助け合って生きているんだから、助けを求められたら助けてあげなさい」って!」

 みんな「助けて」って言ったんだから、盗賊さん達も、みんなを助けてあげたはずなの!

「へへ……エへへへッ! マジぃ? だからあの猫人、抵抗しなくなったの? ウケるぅ!」
「ハハハッ! 自分の子どもでもないガキを人質にしても無駄だと思って、一か八かでやった事だったが大正解だったワケだ!」

 なんで笑ってるの?
 
「みんな「助けて」って……」
「ミウ!」

 お兄ちゃんがぎゅってしてくれる。
 いつもならそれだけで安心できるのに。
 どうしてなの? 涙が止まらないの。

「言ってたのに……だ、だって…………助けてって……うぇ……言って、うわあぁぁん!」
「チッ! あんま騒がれると魔物が寄ってくるかもしれんぞ!」
「へへっ、任せなよ。ほら黙らないと、お父さんを殺したこの剣で、今後はお兄ちゃんを刺しちゃうよ?」

 盗賊さんが剣をお兄ちゃんに向けてきた。
 なんでそんな事が言えるの?

 すごい怖くて、わけがわからないの。
 だから涙が止まらないの。
 でもお兄ちゃんも守りたいの。
 だから……。

「誰か…………助けて」

 思わずそう呟いたの。

 でも、「助けて」って言っても、みんな助からなかったから、ミウが「助けて」を言っても、誰も助けてくれないと思ったの。

「当たり前だ」

 だから返事があったことに、すごいおどろいたの。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...