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四章 探す蓮と大剣士
四章 [13/16]
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「おおっ、赤覇将軍が昼間に来るなんて珍しいっすね!」
若い給仕がすぐに注文を取りに来る。
「お隣の娘さんは、これですかい?」と小指を立てるしぐさで「彼女か?」と聞いてきたので、赤覇はそれをしっかりと握りしめた。
「この指邪魔みてぇだから、へし折ってやろうか?」
「うわわわ、冗談っすよ!」
給仕は空いた手をぶんぶん振る。
「部下っすよね?」
「わかってるじゃねぇか」
赤覇は満足げに言って、給仕の指を放してやった。
赤覇が給仕に注文を告げる間にも、水蓮はちらちらと店内を見回している。時間が早いこともあり、客は少ない。しかも、みな陰気な顔をしている。
「本当なら、家族連れや若い奴らでにぎわってるんだけどな」
「戦だから?」
人々の暗さが移ってしまったのか、不安そうな顔で水蓮が首をかしげる。
「……そうだな。戦が終わったらまた連れてきてやるよ。仙術の研究機関も見たいんだろ?」
「……うん」
赤覇の言葉でも気が晴れなかったのか、水蓮は寂しそうな顔でうなずいた。
「子どもっぽいと思ってたが、そういう顔をするとまだましだな」
なんとか水蓮の気分を明るくできないかと、そう茶化す赤覇。
「そう?」
「普段は六歳くらいに見える時がある。志閃もそうだな。仙術使いってのは、子どもっぽい奴が多い」
赤覇はにっと笑った。
「ひどいです……」
水蓮は眉間にしわを寄せた。
「お前の場合はもちろん『無邪気』とか、『明るい』とか、いい意味で、だ」
「その言い方、志閃さんは悪い意味で子どもっぽいってことになりません?」
「その通りだろ?」
赤覇がそう笑うと、「……そうかも」と水蓮も笑みを浮かべてくれた。それに少し安堵しながら、赤覇はさらに明るく楽しい話題をさがす。
そうやって、談笑しながら早い昼食をとった。
雑穀のごはんは香草と炊かれていて、湯気とともに良い匂いが立ち上っていた。川魚中心の料理も汁物も味が良い上に量が多い。赤覇がここを気に入っている理由だ。
「午後はどこに行く? 明日からまた稽古があるんならもう帰って休むか?」
「う~ん、もうちょっと良いですか?」
「オレは別にかまわねぇぜ」
水蓮には言わないが、これも仕事だ。
「私、高いところから源京を見てみたいんです。扇状地にあるんだよって言われても全然想像つかないし」
「それならとっととメシ食って、山にでも登るか」
「あ、はいっ!」
赤覇がためらいなく承諾したのが意外だったのか、水蓮は驚きつつも明るく返事した。早く昼食を片付けようと食べる速度を上げる。
「よく噛んで食えよ」と母親めいたことを言いながら、赤覇も自分の食事をかき込んだ。そうしながら、山間にある帝都が最も良く見下ろせる場所を考えた。仕事だからと言う気持ちは少しずつ薄れ、少しでも、この無邪気な少女に喜んで欲しくて――。
若い給仕がすぐに注文を取りに来る。
「お隣の娘さんは、これですかい?」と小指を立てるしぐさで「彼女か?」と聞いてきたので、赤覇はそれをしっかりと握りしめた。
「この指邪魔みてぇだから、へし折ってやろうか?」
「うわわわ、冗談っすよ!」
給仕は空いた手をぶんぶん振る。
「部下っすよね?」
「わかってるじゃねぇか」
赤覇は満足げに言って、給仕の指を放してやった。
赤覇が給仕に注文を告げる間にも、水蓮はちらちらと店内を見回している。時間が早いこともあり、客は少ない。しかも、みな陰気な顔をしている。
「本当なら、家族連れや若い奴らでにぎわってるんだけどな」
「戦だから?」
人々の暗さが移ってしまったのか、不安そうな顔で水蓮が首をかしげる。
「……そうだな。戦が終わったらまた連れてきてやるよ。仙術の研究機関も見たいんだろ?」
「……うん」
赤覇の言葉でも気が晴れなかったのか、水蓮は寂しそうな顔でうなずいた。
「子どもっぽいと思ってたが、そういう顔をするとまだましだな」
なんとか水蓮の気分を明るくできないかと、そう茶化す赤覇。
「そう?」
「普段は六歳くらいに見える時がある。志閃もそうだな。仙術使いってのは、子どもっぽい奴が多い」
赤覇はにっと笑った。
「ひどいです……」
水蓮は眉間にしわを寄せた。
「お前の場合はもちろん『無邪気』とか、『明るい』とか、いい意味で、だ」
「その言い方、志閃さんは悪い意味で子どもっぽいってことになりません?」
「その通りだろ?」
赤覇がそう笑うと、「……そうかも」と水蓮も笑みを浮かべてくれた。それに少し安堵しながら、赤覇はさらに明るく楽しい話題をさがす。
そうやって、談笑しながら早い昼食をとった。
雑穀のごはんは香草と炊かれていて、湯気とともに良い匂いが立ち上っていた。川魚中心の料理も汁物も味が良い上に量が多い。赤覇がここを気に入っている理由だ。
「午後はどこに行く? 明日からまた稽古があるんならもう帰って休むか?」
「う~ん、もうちょっと良いですか?」
「オレは別にかまわねぇぜ」
水蓮には言わないが、これも仕事だ。
「私、高いところから源京を見てみたいんです。扇状地にあるんだよって言われても全然想像つかないし」
「それならとっととメシ食って、山にでも登るか」
「あ、はいっ!」
赤覇がためらいなく承諾したのが意外だったのか、水蓮は驚きつつも明るく返事した。早く昼食を片付けようと食べる速度を上げる。
「よく噛んで食えよ」と母親めいたことを言いながら、赤覇も自分の食事をかき込んだ。そうしながら、山間にある帝都が最も良く見下ろせる場所を考えた。仕事だからと言う気持ちは少しずつ薄れ、少しでも、この無邪気な少女に喜んで欲しくて――。
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