45 / 103
四章 探す蓮と大剣士
四章 [14/16]
しおりを挟む* * *
「すごくいい眺め!」
午後の山登りは、予想したほど難しくなかった。帝都「源京」を見下ろすのならば、高い山にと思い源京西部の山に登ることを決めたが、赤覇は小柄で筋力もあまりない水蓮は苦戦すると思っていたのだ。
しかし水蓮は予想以上の身軽さで、大きな岩が取り除かれただけの急な道を登っていく。
「お前、どこにそんな体力があるんだ?」
不思議になって赤覇は尋ねた。
「気で強化してるんですよ」
水蓮は得意げに笑んで、いつか王紀がしたのと同じ答えをした。額ににじんだ汗を元気に拭っている。
「仙術ってすげぇんだな……」
「使い方を間違うと、国一つ消えかねませんけどね」
「『国』?」
規模の大きな話に、赤覇は問い返した。
「そういう悪い仙術使いもたまにいるかも、って話です」
――それはお前のことか?
さすがにそんなことは聞けなかった。
「…………」
水蓮のあまりの無邪気さに消えかかっていた警戒心が、少しだけよみがえった。
そんなことには気づかず、水蓮はどんどん登っていく。そして――。
「あれ? 飛露将軍?」
「は?」
赤覇はすっとんきょうな声を上げながら、水蓮の指差す先を見た。
背の低い木の茂みの先、野花が生い茂る急な斜面に座り瞑想している人影。確かに飛露だ。
「あいつ今日休みだろ? 何やってんだ?」
赤覇は同僚の意外な休日の過ごし方に足を速めた。
「あ、ちょ、待ってください!」
それを水蓮が慌てて追いかける。
飛露もこちらに近づいてくる何者かの気配を感じたのだろう。瞑想の集中力を維持したまま、顔を上げた。
「なぜ貴様らがここにいる?」
飛露は不快そうに顔をしかめている。
「水蓮が源京を見下ろせる場所に行きたいって言ったんでな」
赤覇は追いついてきた水蓮の頭を軽くたたきながら答えた。
「お前こそ何してんだ? まさか休日のたびにこんな辺境で瞑想してるんじゃねぇだろうな?」
「馬鹿を言うな。前線に行ったり、源京周辺に危険なものがないか確認したりしておるわ」
どちらにしても、休日らしい過ごし方はしていないようだ。
「あ、もしかしてここ、将軍の憩いの場ですか?」
「憩いの場というほどではない。が、確かによく来る」
「とってもいい眺めです」
水蓮はそこから源京を見下ろして、ため息交じりに言った。
「あの辺――宮殿の奥にある黄色い屋根の建物が帝の住まれているところですか?」
王宮を指して尋ねる。
「それを聞いてどうする?」
「ただの興味本位です」
飛露の低い声にひるみつつも、水蓮はできるだけ明るく答えた。
「あそこを中心に気が緩やかに渦をつくりながら、湧き出しているので。とてもきれいな淡い虹色の光……。ずっと禁軍の拠点で、この気の流れはどこから来てるんだろうって思ってたんです。それを知りたくて、源京が見下ろせる場所へ行きたかったんですけど……」
「ふん」
飛露は鼻であしらった。くだらんとでも言いたげだ。
「湧き出した気が、源京中を覆って――。守られているって感じます」
気を見ることができない赤覇は、何と答えれば良いのかわからない。
――つーか、このかしこまり具合からして飛露に話しかけてんだろ?
そう思って飛露を見たが、彼は仏頂面で座っているだけで何か応える気はないようだ。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる