ふたりの魔法は憎しみでしか発動しない—アラブとユダヤの魔法陣。世界を”救う”には残念ながらキスが必要らしい

霧人 イスラエル・ハイム

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首相だけが知っていること

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夜明け前のエルサレム上空。

巨大な“虚無の怪物”がまた現れた。

今度は体が世界地図の形をしている。

イスラエルとパレスチナの部分だけ、真っ黒に塗りつぶされている。

リナとレイラは即変身。

青と赤の光が交錯し、
屋上から屋上へ飛び移りながら戦う。

怪物が咆哮。

「この土地は永遠に血で染まる!!」

リナが青の光弾連射。

レイラ赤の刃で斬りつけ。

でも怪物はすぐに再生する。

二人は息を切らしながら叫び合う。

「どうしたら倒せるのよ!?」
「知らないわよ!!」

──

同じ時刻、
エルサレム郊外の地下150メートル、完全電波遮断の会議室。

画面は真っ黒。

声だけが流れるΩ-7回線。
参加者は前回と同じ10名。

しかし今日は、誰も余計な挨拶をしない。

そして、誰も声の変調を使っていない。

本物の声が、冷たく響く。
アメリカ大統領
「共鳴率99.8%。
 残り9時間12分で臨界点」

イスラエル首相
「確認」

サウジ皇太子(静かで、でも笑っているような声)
「では、そろそろ本題に入りましょうか。
 “プラン・ゼロ”の準備状況を」

全員の呼吸が止まる。

中国国家主席
「“空白化プロトコル”は既に展開済み。
 中東上空の全衛星軌道を48時間以内に無人化可能」

ロシア大統領
「“深層鏡像”も完了。
 必要なら、地球上の全通信網を3分で“鏡の世界”に切り替えられる」

ヴァチカン枢機卿(震えながら)
「……それは、聖書の記述を超える冒涜です」

フランス大富豪(氷のような声)
「冒涜ではなく、保険です。
 少女たちが失敗した場合、
 “この現実そのもの”を巻き戻すための」

サウジ皇太子
「巻き戻す? それとも“上書き”する?」

沈黙。
アメリカ大統領が、
初めて、本当に小さな声で言った。

「我々は既に、
 “次の世界”の設計図を完成させている。
 少女たちが望む世界とは、
 まったく別の形の“平和”を」

イスラエル首相(初めて感情を込めて)
「……それは、
 3000年前の契約を完全に破棄するということだ」

サウジ皇太子(楽しそうに)
「破棄ではなく、更新です。
 古い契約は子どもたちに任せ、
 新しい契約は我々が握る。」

中国国家主席
「技術的には可能。
 量子重ね合わせを利用して、
 “少女たちの世界”と“我々の世界”を
 同時に存在させ、
 好きなタイミングで切り替えるだけ」

全員が息を呑む。

ヴァチカン枢機卿
「……神の御業に手を出す気か」

フランス大富豪
「神はもう、
 我々に任せた」

イスラエル首相が、
最後に、
ほとんど聞こえない声で呟いた。

「では、赤い封筒は……?」

サウジ皇太子
「開けません。
 開ける必要はありません。
 我々が新しい封筒を書く番ですから」

回線が切れた。

画面は真っ暗。

世界で最も力のある10人が、
今夜、
完全に別の神になった。

——-

外では、
リナとレイラが、
最後の光を放ち、
怪物が砕け散った直後だった。

二人は息を切らしながら、
同じ空を見上げる。

リナ
「……なんか、めっちゃ怖いことになってる気がする」

レイラ

「……私も」

でも二人はまだ知らない。

世界が、
もう二度と元には戻らない場所まで
動き始めていることを。

そして、
朝日が昇ると同時に、
空を泳ぐ魚が、
一匹残らず、
忽然と消えたことを。



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