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ep.1
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大河と魔術の国、ゼリーヴァ王国。この国は大河の国と言われるだけあって大小様々な川が流れており、その無数の川は人々の通り道となっている。また、人口の川もつくられているため王国内、特に王都フィローメでは縦横無尽に水路とも言える川があちこちに存在する。
その中で有名な川を挙げるとするならば、5本ある。王都の中心にある『始まりの湖』から東西南北に流れる北方川《ほっぽうがわ》・南方川《なんぽうがわ》・東方川《とうほうがわ》・西方川《せいほうがわ》と、その4本の川を繋ぐ円形の蒼碧川《そうへきがわ》である。5本の川は人口に作られた大きな川で、特に蒼碧川は広大な王都をぐるっと囲む様に作られたためとても長大である。そして蒼碧川を囲うように外壁があり、東西南北には外へと繋がる水門がある。
余談だが、蒼碧川の円内・円外で街並みの様相が変わってくる。ざっくり言えば円内が貴族街、円外が市民街である。というのも、始まりの湖を囲うように、南に王宮、北に神殿、東に行政府、西に軍事部門があり、その4つの建物を囲うように城壁がある。したがって、その4建物に用があることが多い貴族がその近くを占めることになり、自然と市民は外壁近くに住むようになったのだ。
さて、その多くの川を移動する手段は水上魔車《すいじょうましゃ》という乗り物である。形はアーモンドのような形、いわゆる手漕ぎボート・ゴンドラの形である。そして、その側方の両前後に水車のような車輪がついており魔力で車輪が動くのである。現代社会に言い換えるならば手漕ぎボートと自動車、水上バスが組み合わさった、なんとも言えない独特な乗り物だ。
「次は、蒼碧外《そうへきがい》3番乗り場~。次は、3番乗り場~。お下りの方はご支度くださあ~い。」
水上乗合魔車の乗務員アルフレッドは、今日も今日とてのほほんとどこか気の抜けるような緩やかな声で乗客に停留所名を告げていた。
水上乗合魔車は、その名の通り定期的に運行している水上魔車である。この水上乗合魔車は国が運営しており、停留所は蒼碧川と始まりの湖にあり全部で16箇所だ。通常は蒼碧川の周囲にある12箇所、1番停留所から12番停留所までを時計回りと反時計回りでそれぞれ約4台ずつ計8台が運航している。アルフレッドはその8台のうちの1台の運転手として、水上乗合魔車を運転していた。
「アル坊、今日も精が出てるねぇ。」
「ありがとう、花屋のおばあちゃん。乗るなら5タッロだよ~。」
「知ってるさ、はい。持ってきな。」
「はーい、1名様ご乗車~。」
「わたくし達の10タッロも、お受け取りくださいまし。」
「……よろこんで、セニョリータ。」
いつもの3番乗り場で、常客の花屋のおばあちゃんといつのもやり取りをしていると、後ろに2人並んでいることに気が付いた。視線を向けると落ち着いた色合いの、しかし気品のある深緑色のローブを羽織った少女と付き従う侍女の2人組が、2人分の乗車料である10タッロを差し出して来る。一瞬、面食らったアルフレッドであったが、プロ意識か生来ののほほんとした穏やかな性格ゆえか、すぐ笑みを浮かべると彼女達の乗車の手伝いをすべく手を差し出した。
(珍しいお客さんが乗ってきたなぁ)
乗車規定などないので誰が乗っても構わないけど、とアルフレッドは内心で思う。乗り込んできた彼女が羽織っている深緑色のローブは、ゼリーヴァ王国立魔学術院の生徒ということに他ならない。深緑色の中でも比較的明るい碧色が学部生、暗い深碧色が研究院生であるため、明るめの碧色ローブを羽織っている彼女は学部生だろう。そして、侍女らしき女性を従えていることからも彼女が貴族であることが伺える。
水上乗合魔車は、基本的に庶民が乗るものであるという共通認識がどこかあるので、アルフレッドはもちろん、周りの乗客も驚いたという訳である。ただ、珍しいというだけで絶対にない訳ではないので、乗客達は少しだけ声を潜めて元のお喋りに戻った。
アルフレッドは安全確認と称して、彼女の方をチラっと盗み見る。淡い桃色の髪を2つのお下げにしていて、瞳はたぶんピンクオパール、手前の席で本を開き読んでいた。魔学術院の生徒ということは魔術師のタマゴで、見た目に属性が現れることが多いので火属性の魔力を持つことが分かる。代表的な貴族家だと、ロッソィーノ侯爵家やロザディッチ男爵家だろうか。ロッソィーノの姫様は王国立魔術院学園で間違いないだろうから、たぶんロザディッチ男爵家のお嬢様だろう、と当たりをつけた。
ただまあ、とアルフレッドは思う。自分のやるべきことは変わらないし、でもやっぱりなんで来たんだろうなぁ、と野次馬根性たっぷりに時折、彼女達の方を振り返っては盗み見るのだった。
「おおっと、次は、蒼碧外4番乗り場~。次は、4番乗り場~。お下りの方はご支度くださあ~い。」
うっかりアナウンスし忘れそうになりながらも、アルフレッドの一日は過ぎてゆく。例のお騒がせな桃色の少女は、クスッと笑ってから本の続きに戻った。
その中で有名な川を挙げるとするならば、5本ある。王都の中心にある『始まりの湖』から東西南北に流れる北方川《ほっぽうがわ》・南方川《なんぽうがわ》・東方川《とうほうがわ》・西方川《せいほうがわ》と、その4本の川を繋ぐ円形の蒼碧川《そうへきがわ》である。5本の川は人口に作られた大きな川で、特に蒼碧川は広大な王都をぐるっと囲む様に作られたためとても長大である。そして蒼碧川を囲うように外壁があり、東西南北には外へと繋がる水門がある。
余談だが、蒼碧川の円内・円外で街並みの様相が変わってくる。ざっくり言えば円内が貴族街、円外が市民街である。というのも、始まりの湖を囲うように、南に王宮、北に神殿、東に行政府、西に軍事部門があり、その4つの建物を囲うように城壁がある。したがって、その4建物に用があることが多い貴族がその近くを占めることになり、自然と市民は外壁近くに住むようになったのだ。
さて、その多くの川を移動する手段は水上魔車《すいじょうましゃ》という乗り物である。形はアーモンドのような形、いわゆる手漕ぎボート・ゴンドラの形である。そして、その側方の両前後に水車のような車輪がついており魔力で車輪が動くのである。現代社会に言い換えるならば手漕ぎボートと自動車、水上バスが組み合わさった、なんとも言えない独特な乗り物だ。
「次は、蒼碧外《そうへきがい》3番乗り場~。次は、3番乗り場~。お下りの方はご支度くださあ~い。」
水上乗合魔車の乗務員アルフレッドは、今日も今日とてのほほんとどこか気の抜けるような緩やかな声で乗客に停留所名を告げていた。
水上乗合魔車は、その名の通り定期的に運行している水上魔車である。この水上乗合魔車は国が運営しており、停留所は蒼碧川と始まりの湖にあり全部で16箇所だ。通常は蒼碧川の周囲にある12箇所、1番停留所から12番停留所までを時計回りと反時計回りでそれぞれ約4台ずつ計8台が運航している。アルフレッドはその8台のうちの1台の運転手として、水上乗合魔車を運転していた。
「アル坊、今日も精が出てるねぇ。」
「ありがとう、花屋のおばあちゃん。乗るなら5タッロだよ~。」
「知ってるさ、はい。持ってきな。」
「はーい、1名様ご乗車~。」
「わたくし達の10タッロも、お受け取りくださいまし。」
「……よろこんで、セニョリータ。」
いつもの3番乗り場で、常客の花屋のおばあちゃんといつのもやり取りをしていると、後ろに2人並んでいることに気が付いた。視線を向けると落ち着いた色合いの、しかし気品のある深緑色のローブを羽織った少女と付き従う侍女の2人組が、2人分の乗車料である10タッロを差し出して来る。一瞬、面食らったアルフレッドであったが、プロ意識か生来ののほほんとした穏やかな性格ゆえか、すぐ笑みを浮かべると彼女達の乗車の手伝いをすべく手を差し出した。
(珍しいお客さんが乗ってきたなぁ)
乗車規定などないので誰が乗っても構わないけど、とアルフレッドは内心で思う。乗り込んできた彼女が羽織っている深緑色のローブは、ゼリーヴァ王国立魔学術院の生徒ということに他ならない。深緑色の中でも比較的明るい碧色が学部生、暗い深碧色が研究院生であるため、明るめの碧色ローブを羽織っている彼女は学部生だろう。そして、侍女らしき女性を従えていることからも彼女が貴族であることが伺える。
水上乗合魔車は、基本的に庶民が乗るものであるという共通認識がどこかあるので、アルフレッドはもちろん、周りの乗客も驚いたという訳である。ただ、珍しいというだけで絶対にない訳ではないので、乗客達は少しだけ声を潜めて元のお喋りに戻った。
アルフレッドは安全確認と称して、彼女の方をチラっと盗み見る。淡い桃色の髪を2つのお下げにしていて、瞳はたぶんピンクオパール、手前の席で本を開き読んでいた。魔学術院の生徒ということは魔術師のタマゴで、見た目に属性が現れることが多いので火属性の魔力を持つことが分かる。代表的な貴族家だと、ロッソィーノ侯爵家やロザディッチ男爵家だろうか。ロッソィーノの姫様は王国立魔術院学園で間違いないだろうから、たぶんロザディッチ男爵家のお嬢様だろう、と当たりをつけた。
ただまあ、とアルフレッドは思う。自分のやるべきことは変わらないし、でもやっぱりなんで来たんだろうなぁ、と野次馬根性たっぷりに時折、彼女達の方を振り返っては盗み見るのだった。
「おおっと、次は、蒼碧外4番乗り場~。次は、4番乗り場~。お下りの方はご支度くださあ~い。」
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