3番乗り場で、また会いましょう

ネコ野疾歩

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ep.7

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「アル坊、お久ぁ。なかなか会いに来てくれないから、寂しかった~。」
「ジーナさん、久しぶり。確かに最近来てなかったね、今度からちょくちょく顔出すようにするよ。」
「そうしてぇ、稼いでんだから売り上げに貢献してちょーだい~。」


 ジーナのバールに入り、いつものカウンター席に座るとそう言ってくるジーナさん。文字通り現金なところは変わってないなぁ、と苦笑いした。アペロール食前酒の一種と何かつまめるものちょうだい、とオーダーしてから一息つく。最近は確かに感情がすごく揺れ動いていて、つい早寝しては早起きしている健康すぎる生活をしていて、こういうところへはあまり来なかったなぁとぼんやり振り返っていた。
 はいどーぞ、つまみは待っててねと差し出されたグラスを受け取り、口を付ける。


「ねぇ、アル坊。恋してる気分はどーお?」
「っげほッ、ごほッごほッ……。」


 ジーナさんがつまみのサラダだろうか、何やら野菜をボウルに盛りながら何となしに言われた言葉に思わず、飲んでいるアペロールで噎せた。やだぁ汚ーいと言いながらタオルを差し出してくれるジーナさんは、根はやさしい人である。急にアルフレッド自身が気にしている話題を振るあたり天然か愉快犯か。


「なに噎せてんだよ、アルさん。」
「恋してる気分はどーお、って聞いただけよ?」
「そらぁ良いタイミングだ、俺も聞きたかったからな。」

「とりあえず、恋はしてないよ?」


 やっとメルクリオが来たかと思えば、はァっ!?と叫ぶ2人に思わず耳をふさぐ。信じられない、といった視線をもらうが恋していないのは事実なのだから仕方ないと思う。訝しげに首をかしげつつ、メルクリオはアルフレッドの隣にドカッと豪快に座った。そして、ジーナのオススメくれ、と適当にオーダーをしてこちらに顔を向けてくる。ついでに、ジーナの視線も貰いたじろぐ。


「朝、恋してるって……。」
「花屋のおばあちゃんに言われただけだよ。」
「いやいやぁ、常連さん達がアル坊に春が来たって飲みまくってたわよぉ?」
「そんなこと言われても、違うんだけどなぁ……。」


 アルフレッドも首を傾げた。なんか周りに流されて色々と意識してしまったが、そもそもの前提が間違っているように思う。なぜこうなったんだっけ、と未だに納得しきれていなさそうな2人に尋ねてみる。


「そもそも、僕そんなに、なんていうか……変だった?」

「「変!」」

「だって最近のアルさんすげーテンション高かったし、イイ事あったのかと思ってた。」
「アル坊が浮かれまくってるってぇ、花屋のおばあちゃんだけじゃなくて東4番街のおじいちゃんとかぁ、アル坊の魔車の常連客が皆あたしに言ってくるも~ん。勘違いじゃないわよぉ。」
「うっ……、なんか言い返せない。」


 色々と言われて、どうやら自分自身の様子がいつもと違うのは明白であったこと自体は自覚しなければならなかった。といっても、自分としては機嫌よく過ごしてたかもなぁといった程度の認識であり、なぜそれが恋をしているという結論に至るのかはよくわからなかった。しかし、次のメルクリオの言葉にガツンと衝撃を受けた。


「そもそも、アルさんってお客さんの名前に興味ないだろ。知ってるのって花屋のおばあちゃんくらいで、あれも覚えろって言われたからでさ。

――アルさんが自分から、ピーチ・フロイラインの本名知りたいって言った時、めっちゃ驚いたけど?」


 思えばあの時に違和感はあったんだよなぁ、でもアルさんだからさ……等とメルクリオとジーナが話し続けていたが、アルフレッドはそれどころではなかった。確かに、指摘はごもっともで、どうしてピーチ・フロイラインの名前を知りたいと思ったのかは自分でも分からなかったのだから。
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