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ep.8
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アルフレッドは、自分の心臓がばくばくと忙しなく鼓動を打っていて五月蠅いくらいだと詮無きことを考えていた。頬が熱いくらいな気がするが、こんなに早く酔うことがあるかなぁ、と首をかしげるフリをした。
「ちなみにぃ、アル坊が好きな人って誰なのぉ?」
「ピーチ・フロイラインだろ?」
「え、それ誰ぇ?」
「……メルティー・ロザディッチ嬢のあだ名。」
アルフレッドは、小さな声で呟く様に答えた。なんだか頭を抱えて呻きたくなる気分だ。というか、気がついたら実際にそうしていた。
「ロザディッチ男爵様のとこの、お嬢さんねぇ。5人きょうだいの次女だったかしらぁ。」
「まぁ、アルさんなら大丈夫だろ。」
「――ダメだよ、一般市民だもの。」
まあ、そういう意味ではダメか、なんて外野がやいのやいの言っているが、本当にそうなのだ。自分はただの一市民でしかなくて、貴族である桃色髪の彼女とは天と地の差がある。例え、現国王様が貴族と平民の差を縮めようとしても搾取する側と搾取される側には変わりがない。もちろんこの言い方には語弊があるし、きちんと役目を果たす貴族もいるのは確かだが、やはり好きにはなれなかった。桃色髪の彼女のことが嫌いという訳ではないが、むしろ好ましく思っている部類だが、やはり壁があると感じてしまう。
結局この日は、メルクリオとジーナと何を話したかあまり思い出せない程度にぼんやりと過ごして、帰り道の記憶もあまりないまま寝た。
***
「えっと、欠員ですか?」
「ああ、中番の欠員が出てな。アルフレッドなら中堅だし大丈夫だろうと思ってな。」
「それは……、全然構わないですけど。」
「明日と明後日は休みだろ?明々後日から中番で頼む。」
じゃあよろしく頼む、とだけ言い残して去る上司。別に仕事だし、構わないのだけれど、と何かモヤモヤしたものを抱えていた。
「あれ、アルさんもう出勤してるんだ。早いな。」
「違う違う。中番なんだよ。」
「はぁ?中番かぁ、そりゃ残念だな。」
メルクリオに言われて何がだよ、と思いつつも何を指しているかはわかっていた。実際、アルフレッドは桃色髪の彼女を見ることがないのかぁと憂鬱な気分になっていた。
そして、その色々な気分をそのままジーナにぶつけていた。
「──アル坊ぅ、それで恋してないっておかしくなぁい?恋しいんでしょお?」
「……恋しい、っていうかせめて姿を見たくて休憩時間ちょっと散歩がてら3番乗り場ウロウロしてた。」
それ、不審者じゃなぁい?とジーナに言われているが、まったくその通りだと思う。どうしても一目みたくて、彷徨いた。でも、不審者だろうと収穫はあったのだ。
「でもね、ピーチ・フロイラインとお話出来て……。」
「えぇっ!?お嬢さんとお話したのぉ?」
「というか、『あら、運転手さん。お休みですか?』って一言もらった。」
たぶん上着脱いでたから、休憩時間だと気付かれなかったのだろう。でも、認識されているのが嬉しかったのだ。桃色髪の彼女に、運転手さんと、あの鈴が鳴るような可憐な声で話しかけてくれたのだ。
なんか、むしろ中番で良かった気がしてきたアルフレッドなのであった。それをジーナは胡乱げな目で見ていたのであった。
「ちなみにぃ、アル坊が好きな人って誰なのぉ?」
「ピーチ・フロイラインだろ?」
「え、それ誰ぇ?」
「……メルティー・ロザディッチ嬢のあだ名。」
アルフレッドは、小さな声で呟く様に答えた。なんだか頭を抱えて呻きたくなる気分だ。というか、気がついたら実際にそうしていた。
「ロザディッチ男爵様のとこの、お嬢さんねぇ。5人きょうだいの次女だったかしらぁ。」
「まぁ、アルさんなら大丈夫だろ。」
「――ダメだよ、一般市民だもの。」
まあ、そういう意味ではダメか、なんて外野がやいのやいの言っているが、本当にそうなのだ。自分はただの一市民でしかなくて、貴族である桃色髪の彼女とは天と地の差がある。例え、現国王様が貴族と平民の差を縮めようとしても搾取する側と搾取される側には変わりがない。もちろんこの言い方には語弊があるし、きちんと役目を果たす貴族もいるのは確かだが、やはり好きにはなれなかった。桃色髪の彼女のことが嫌いという訳ではないが、むしろ好ましく思っている部類だが、やはり壁があると感じてしまう。
結局この日は、メルクリオとジーナと何を話したかあまり思い出せない程度にぼんやりと過ごして、帰り道の記憶もあまりないまま寝た。
***
「えっと、欠員ですか?」
「ああ、中番の欠員が出てな。アルフレッドなら中堅だし大丈夫だろうと思ってな。」
「それは……、全然構わないですけど。」
「明日と明後日は休みだろ?明々後日から中番で頼む。」
じゃあよろしく頼む、とだけ言い残して去る上司。別に仕事だし、構わないのだけれど、と何かモヤモヤしたものを抱えていた。
「あれ、アルさんもう出勤してるんだ。早いな。」
「違う違う。中番なんだよ。」
「はぁ?中番かぁ、そりゃ残念だな。」
メルクリオに言われて何がだよ、と思いつつも何を指しているかはわかっていた。実際、アルフレッドは桃色髪の彼女を見ることがないのかぁと憂鬱な気分になっていた。
そして、その色々な気分をそのままジーナにぶつけていた。
「──アル坊ぅ、それで恋してないっておかしくなぁい?恋しいんでしょお?」
「……恋しい、っていうかせめて姿を見たくて休憩時間ちょっと散歩がてら3番乗り場ウロウロしてた。」
それ、不審者じゃなぁい?とジーナに言われているが、まったくその通りだと思う。どうしても一目みたくて、彷徨いた。でも、不審者だろうと収穫はあったのだ。
「でもね、ピーチ・フロイラインとお話出来て……。」
「えぇっ!?お嬢さんとお話したのぉ?」
「というか、『あら、運転手さん。お休みですか?』って一言もらった。」
たぶん上着脱いでたから、休憩時間だと気付かれなかったのだろう。でも、認識されているのが嬉しかったのだ。桃色髪の彼女に、運転手さんと、あの鈴が鳴るような可憐な声で話しかけてくれたのだ。
なんか、むしろ中番で良かった気がしてきたアルフレッドなのであった。それをジーナは胡乱げな目で見ていたのであった。
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