3番乗り場で、また会いましょう

ネコ野疾歩

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ep.9

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『あら、運転手さん。お休みですか?』
『あ、えっと……。』
『お嬢様、そろそろ……。』
『分かっているわ。では運転手さん、御機嫌ごきげんよう。』

『あ、はい。ごきげんよう……。』


 アルフレッドは、桃色髪の彼女との会話を思い返していた。本当に情けないことに、全然答えられなかったが、それ以上に彼女に認識されいたことが嬉しかった。最近は「どうぞ」の一言しか聞けていないことが多かったので、それ以上の言葉を掛けられたことも嬉しかったのだ。つまり、幸せな気分であったのがやはり一緒に居れる時間が少ないのは憂鬱であった。どうしたらいいかなぁ、とジーナに愚痴ぐちと嘆いていた。


「そもそも仕事でしょお?しっかり働きなさいよぉ。」
「いつも以上に気を遣って運行してるよ!失礼な……。」
「……それで、よく恋してないって言えるわねぇ。」


 ジーナに呆れたように言われたが、それは違うと思うのだ。だって、ただのビジネスライクの関係でしかないのだ。きっと、というか絶対にピーチ・フロイラインはアルフレッドの名前を知らないし、そもそもアルフレッドは桃色髪の彼女のことを名前や可憐な声であることくらいしか知らない。知らない相手を、好きになるなんてあるのだろうか。


「そんなアル坊に朗報ぉ。このジーナさん、ロザディッチ嬢のことちょっと情報集めてみましたあ。」
「えっ、あの子のこと知ってるの!?」
「そりゃあ、こういう仕事してると聞こえてくるモノもあるのよう。」


 ガタッと音が鳴るくらいに、前のめりにジーナに詰め寄る。これはもう好きでしょお、と顔が引き攣っているジーナだが、構わず迫る。だって、なんだかんだ言いながらアルフレッドは桃色髪の彼女のことが気になって仕方なかったのだ。あの可愛らしい見た目、鈴が鳴る様な綺麗な声、男としては彼女のことが気になっても可笑しくないと思うのだ。そう、男なら桃色髪の彼女のことを気になっても仕方ないと思うのだ。


「やっぱ良いや、知らない方が良いこともあると思う。」
「えぇー、何でよう。気持ちが乱高下するわねぇ。」


 ジーナに断るとなんかゴチャゴチャ言われるが、そもそも彼女は貴族なのだ。婚約者が居てもおかしくない。そんなの聞きたくなかった。なんで聞きたくないのかは、アルフレッド自信も分からなかったけど。
 入口から、カランカランと音が鳴る。お客さんが来たようでジーナが入口に目を遣っているのを横目に、手許にあるサンブカ食後酒の一種の残りをぐいっと呷った。


「おお、アルさん今日居るんだ。」
「18時くらいからずっと居るわよお。」
「はあ?何時間居るんだよ。」


 アルフレッドの隣にドカッと座る、メルクリオ。コイツか、と思いつつジーナにおかわりを要求するがチェイサーを渡された。視線で理由を問うが、飲みすぎとだけ返って来た。何故か苛々して、チェイサーもぐいっと呷った。
 ジーナとメルクリオが何か話しているが、頭に入ってこない。アルフレッドとしては、桃色髪の彼女のことを考えていては気が気ではなかった。そもそも彼女は年頃の女の子、枯れ果てているアルフレッドとは違うのだ。確か、ゼリーヴァ魔術院学校に通っているので市井の人間が多いので、彼女の身分と釣り合わないかとは思うが身分差の恋もあるかもしれない。それとも水上乗合魔車には気になる人が居るのだろうか、それとも水上乗合魔車から見える景色に気になる人が居るのだろうか。考えれば考えるほどに深みにハマっていく気がした。


「なぁ、ジーナ。アルさんどうしたんだよ?」
「ロザディッチのお嬢さんに恋煩いよお。」
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