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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
1-26.良識ある大人のちょっとしたオチャメ
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結局、あのあとはユハによる学園という場所の紹介になった。そのあと、どうせだからと俺とユハ、ケニーの3人でお互いに補足しながら、万葉殿へ常識講座となった。特に、恋愛観はとても違うから、たぶん一番驚くと思う。ついつい、転生してどう思ったかという点も踏まえて、色々と語ってしまった。
そして、ようやく両陛下からの返答が来た。が、ろくでもなかった。
「はぁっ!? 誰だよコレ言い出したの! 絶対、王妃陛下だ! こんな無茶ぶり、あの人が言ってアガタ殿が乗っかったんだろ! 俺に何の恨みがあるんだ! ちゃんと指示に従ったし、今回はファインプレーだっただろ!」
「レーメ様、落ち着けって。いや、俺も動揺しているけど」
「……あの、ユーハンさん。『ねやのオトモ』って何ですか?」
「私の口からはちょっと……。かといって、誰かに説明させるのも憚られますね……」
視界の端で、ユハと万葉殿がこそこそ話していたのは分かったが、そんなこと言ってられない! 何の恨みがあるんだ、こんな酷い指示はなかなかないぞ! ないとは言ってないけど、過去にもエグいのあったけど。
何をこんなに怒っているかって、根回しとかそういうのが圧倒的に時間が足りない。ということで、日中はなんとかするにしても、夜は客室を確保して使用人から話が漏れるのも困る。だから、婚約者兼侍従として俺の傍に居るケニーがいるのをいいことに、俺の寝室は厳戒態勢を敷くことになったのだ。理由は、ユハとケニー、パウリーネを連れ込んで閨の御供という名の婚約者との触れ合いの練習。ユハとパウが居れば、王族の俺も含めて身分が高い者がいっぱい集まったから、警備を厳しくしてもおかしくないよね、ということであるらしい。しかも、対応が決まるまでは連日皆で仲良くお泊りである。そして、手が回りきらないとしても、基本的にケニーに寝室を整えるのは任せる、というものである。
こんな阿呆な考え、あるかー!
「何でパウまで……。というか、12歳の女の子を寝室へ連れ込むのは、いいの?」
「いや、でも連絡しちゃったみたいだから、飛んでくると思うけど。リンドフォーシュ様だし」
「そもそも、ユハもパウも、何で保護者の許可が下りたんだよ! おかしいでしょ、内定しているとはいえまだ対外的には婚約者と周知してないじゃん」
「いや、リンドフォーシュ様は前から婚約者じゃね?」
「いやいやいや、俺はパウを大切にしたいんだよ! 傍から見たら、幼い女の子を男どもが囲む図だからね!?」
「そうは言っても、実際は殿下以外はみんな雌だしなぁ……」
宰相アガタ殿の腹心が、暫定的な決定を言い渡して、帰った後。ぎゃーぎゃーと騒いでいたが、本当にどうしてくれよう。俺、好きな子に囲まれて寝られる気がしないけど? 対外的には閨の御供だって? 何の罰ゲーム、誰に手を出しても地獄、手を出さないのも地獄、救いは無いのか……。
もうやだ、とベッドの隅に移動して丸まった。小さい頃からの俺の現実逃避スタイルである。恥も外聞もあるか、俺は逃げたい……。
そして、そんな俺の姿を見て思うところがあるようで。
「あの、ケネス殿。殿下は……?」
「小さい頃からの殿下の癖です。許容範囲を超えると、不貞腐れて丸まってしばらく動きません。ちなみに、殿下の元々の喋り方は、さっきみたいにちょっとゆるい感じでして。王妃陛下に威厳がない、と矯正されたのですが、今でもたまに戻ってしまうようです。一人称も、プライベートでは俺と言いますし」
「なるほど? だから、時折俺と言うことがあったのですね」
「アルマジロみたいだな……。ケネスさん、あの状態で放っておいて大丈夫なんですか?」
「そのうち浮上して、甘えてきます。今日は、誰に甘えるんでしょうかね?」
放っておいてお茶にしましょう、って聞こえてるんだからな、君たち! 甘えるって思われてたのも恥ずかしいし、そう言われたら誰のところにも行けないよ!
更に不貞腐れたくさくさした気持ちになりながら、ぶつぶつ文句を垂れて小さくなる。本当に、俺のヘタレ童貞な理性だって、グッバイしてしまったらどうするつもりなんだ。手を出すのは、一応ダメなのに。いや、絶対だめだ。やらかして会えなくなる方が嫌だ。あと、一番の問題の万葉殿、別に俺が保護するために婚約者になるって話になってるだけで、手を出しちゃダメな人がいるところで、変なこと出来ないし。
しばらく、この状態だったのだが。現状を打破する、いや悪化させる存在が来たことで俺のアルマジロ状態は解除せざるを得なくなった。
「レーメ様、お呼びと伺いパウリーネが参りましたわ! ……あら?」
「ああ、リンドフォーシュ嬢、こちらへ。状況を説明します」
ばーんっ、と扉を開いて飛び込んできたパウリーネは、一瞬俺の姿が見えなかったせいか、見知らぬ人がいるからか戸惑った声をしていた。素早くパウリーネを誘導するユハに、さっさと扉を閉めてしまったケニー。見事な連携である。
ちなみに、勢いよく現れた美少女に驚いたのか、万葉殿は固まっているようだった。
ユハが、現状を話している間にケニーが近寄ってきて、俺の身体をゆさぶってくる。ころりと少し体を転がされ、横向きにされて不貞腐れた表情を見られてしまった。ちょっと気まずい、が表情もとりつくろえない。
「レーメ様、リンドフォーシュ様が来たから流石に起きてください。年下に見せる姿でもないです」
「……うるさい、俺の葛藤を何で分からないんだ」
「はいはい、エロいことが好きなレーメ様にはツラいな」
「わかった。ケニーに悪戯してやるっ、そんで放置する」
「やめろ、俺を巻き込むな」
「……仲、いいんだな」
ぽつり、と零れ落ちた万葉殿の感想に、思わずケニーと顔を見合わせた。
そして、ようやく両陛下からの返答が来た。が、ろくでもなかった。
「はぁっ!? 誰だよコレ言い出したの! 絶対、王妃陛下だ! こんな無茶ぶり、あの人が言ってアガタ殿が乗っかったんだろ! 俺に何の恨みがあるんだ! ちゃんと指示に従ったし、今回はファインプレーだっただろ!」
「レーメ様、落ち着けって。いや、俺も動揺しているけど」
「……あの、ユーハンさん。『ねやのオトモ』って何ですか?」
「私の口からはちょっと……。かといって、誰かに説明させるのも憚られますね……」
視界の端で、ユハと万葉殿がこそこそ話していたのは分かったが、そんなこと言ってられない! 何の恨みがあるんだ、こんな酷い指示はなかなかないぞ! ないとは言ってないけど、過去にもエグいのあったけど。
何をこんなに怒っているかって、根回しとかそういうのが圧倒的に時間が足りない。ということで、日中はなんとかするにしても、夜は客室を確保して使用人から話が漏れるのも困る。だから、婚約者兼侍従として俺の傍に居るケニーがいるのをいいことに、俺の寝室は厳戒態勢を敷くことになったのだ。理由は、ユハとケニー、パウリーネを連れ込んで閨の御供という名の婚約者との触れ合いの練習。ユハとパウが居れば、王族の俺も含めて身分が高い者がいっぱい集まったから、警備を厳しくしてもおかしくないよね、ということであるらしい。しかも、対応が決まるまでは連日皆で仲良くお泊りである。そして、手が回りきらないとしても、基本的にケニーに寝室を整えるのは任せる、というものである。
こんな阿呆な考え、あるかー!
「何でパウまで……。というか、12歳の女の子を寝室へ連れ込むのは、いいの?」
「いや、でも連絡しちゃったみたいだから、飛んでくると思うけど。リンドフォーシュ様だし」
「そもそも、ユハもパウも、何で保護者の許可が下りたんだよ! おかしいでしょ、内定しているとはいえまだ対外的には婚約者と周知してないじゃん」
「いや、リンドフォーシュ様は前から婚約者じゃね?」
「いやいやいや、俺はパウを大切にしたいんだよ! 傍から見たら、幼い女の子を男どもが囲む図だからね!?」
「そうは言っても、実際は殿下以外はみんな雌だしなぁ……」
宰相アガタ殿の腹心が、暫定的な決定を言い渡して、帰った後。ぎゃーぎゃーと騒いでいたが、本当にどうしてくれよう。俺、好きな子に囲まれて寝られる気がしないけど? 対外的には閨の御供だって? 何の罰ゲーム、誰に手を出しても地獄、手を出さないのも地獄、救いは無いのか……。
もうやだ、とベッドの隅に移動して丸まった。小さい頃からの俺の現実逃避スタイルである。恥も外聞もあるか、俺は逃げたい……。
そして、そんな俺の姿を見て思うところがあるようで。
「あの、ケネス殿。殿下は……?」
「小さい頃からの殿下の癖です。許容範囲を超えると、不貞腐れて丸まってしばらく動きません。ちなみに、殿下の元々の喋り方は、さっきみたいにちょっとゆるい感じでして。王妃陛下に威厳がない、と矯正されたのですが、今でもたまに戻ってしまうようです。一人称も、プライベートでは俺と言いますし」
「なるほど? だから、時折俺と言うことがあったのですね」
「アルマジロみたいだな……。ケネスさん、あの状態で放っておいて大丈夫なんですか?」
「そのうち浮上して、甘えてきます。今日は、誰に甘えるんでしょうかね?」
放っておいてお茶にしましょう、って聞こえてるんだからな、君たち! 甘えるって思われてたのも恥ずかしいし、そう言われたら誰のところにも行けないよ!
更に不貞腐れたくさくさした気持ちになりながら、ぶつぶつ文句を垂れて小さくなる。本当に、俺のヘタレ童貞な理性だって、グッバイしてしまったらどうするつもりなんだ。手を出すのは、一応ダメなのに。いや、絶対だめだ。やらかして会えなくなる方が嫌だ。あと、一番の問題の万葉殿、別に俺が保護するために婚約者になるって話になってるだけで、手を出しちゃダメな人がいるところで、変なこと出来ないし。
しばらく、この状態だったのだが。現状を打破する、いや悪化させる存在が来たことで俺のアルマジロ状態は解除せざるを得なくなった。
「レーメ様、お呼びと伺いパウリーネが参りましたわ! ……あら?」
「ああ、リンドフォーシュ嬢、こちらへ。状況を説明します」
ばーんっ、と扉を開いて飛び込んできたパウリーネは、一瞬俺の姿が見えなかったせいか、見知らぬ人がいるからか戸惑った声をしていた。素早くパウリーネを誘導するユハに、さっさと扉を閉めてしまったケニー。見事な連携である。
ちなみに、勢いよく現れた美少女に驚いたのか、万葉殿は固まっているようだった。
ユハが、現状を話している間にケニーが近寄ってきて、俺の身体をゆさぶってくる。ころりと少し体を転がされ、横向きにされて不貞腐れた表情を見られてしまった。ちょっと気まずい、が表情もとりつくろえない。
「レーメ様、リンドフォーシュ様が来たから流石に起きてください。年下に見せる姿でもないです」
「……うるさい、俺の葛藤を何で分からないんだ」
「はいはい、エロいことが好きなレーメ様にはツラいな」
「わかった。ケニーに悪戯してやるっ、そんで放置する」
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ぽつり、と零れ落ちた万葉殿の感想に、思わずケニーと顔を見合わせた。
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