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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
【閑話07】パウリーネ02.舞い降りた夜の帝王に思いを馳せる
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「あの、これってこの世界の王子様としては普通なんですか……?」
「ええ。わたくしも実際に見るのは初めてですが、レーメ様のこのお姿は王族として立派なはずですわ。ねぇ、リリー様?」
「左様でございます、パウリーネお嬢様。殿下は練習なさった時、それは気恥ずかしそうにされていたものですが。表情もしっかり作れておりまして、ご立派ですねぇ」
王宮にあるレーメ様の寝室。レーメ様の諜報員アッサールの手引きにより、ズハ様とレーメ様の乳母リリー様と一緒に、レーメ様のご様子をライブ中継をしてもらい見ています。アッサール自身は、万が一に備えて現場で待機するということですが、きっと臨場感たっぷりな現場と艶やかなレーメ様を近くで見たいだけだと思いますわ。アッサールもわたくしの同士、レーメ様をこよなく愛している仲間ですから。
そういえば、リリー様がこの場に居るとは思わず、ご子息の濡れ場なのによろしいのですか、と思わず問いかけてしまいました。そんな無粋なわたくしの問いに、「息子がきちんと第十側妃候補として、お役目を果たせるかどうかの方が大切」とのお答えでした。乳母であるリリー様にとって、第十側妃となる乳兄弟はケネス様の姉君も該当するので、ご姉弟でどちらがそのお役目を果たせるのか、きちんと見極めたいとの仰せでした。
残念ながら、ケネス様の姉君もわたくしの方で調査済ですが、あの方はわたくし達の同士足り得ません。あの方は上昇志向が強いですからね、第十側妃の意義をきちんと理解できないと思います。それは、現在17歳で学園に通うその態度からもはっきりと分かります。情勢とは変わるものと今回のことで学びましたから、調査を再開しましたが、あの方の本質は変わらないように思います。ただの伯爵令嬢であれば、あの程度はどこにでもいますが、レーメ様の乳姉弟としては品格が足りません。そもそも、セドだからとレーメ様から離れていくその感性が理解できません。
だから、このままケネス様が第十側妃を担っていただくのが一番です。そのお役目通り、レーメ様のお心に一番近く既にご寵愛が深いですからね。少しばかり、ケネス様とレーメ様の絆に、嫉妬してしまいます。
さて、そうこう雑談している間に、レーメ様が壮絶に妖艶な笑みを浮かべられました。嗚呼、なんて美しい姿なのでしょう。侍女が持っていた大衆小説に書いてあるキュンキュンする、というのはこの胸の高鳴りではないでしょうか。
「あんなにぎこちなくあの椅子に座っていらしたレーメ様が、ご立派になられて……」
「いやいや、あんなエロい顔するのも王族の仕事なんですか!? この世界生まれ、怖ぇ……」
「あら、ユーハン様とケネス様がレーメ様の傍にいらっしゃいましたわ。……ああ、うらやましい。年下とはいえわたくしだって、あのくらいの教育は受けておりますのに……」
「えぇっ……婚約者ってあんなことしなくちゃなんですか……」
「ズハ様は神子様であらせられますから、気乗りしなければああする必要はございませんよ」
ズハ様は、レーメ様の仮婚約者ということになっておりますが、たぶんそのまま婚約続行されるのではと思っております。二人目の神子様として紹介された時は、とても驚いたものです。レーメ様がリモになると聞いた時に調査した一人目の神子様と、双子とはいえ全く違う性質に更に驚愕したものですが問題ありません。この双子には何やら深い溝があるようですがそれに関わらず、あの方たちが今後表に出ることはないでしょうから、ズハ様が望まない限りお会いすることはありません。きょうだいとは得てして不思議な隣人ですので、それはそれでいいのでは、とわたくしは思っております。ズハ様が望むのなら、復讐でも嫌がらせでも、恋の相談だって協力するのはやぶさかではございませんけれど。
そう、ズハ様は明言されておりませんが、明らかにレーメ様を意識なさっておいでです。だから、少し気が早いですが、ズハ様も我らの同士であると思っておりますの。ズハ様の元居た世界が一夫一妻制であるらしく、最低でも10人の妃を娶らなければならないレーメ様に思うところがおありのようですが。それでも、他の男に嫁ぐくらいならここがいいな、とぽつりと零していたとアッサールより聞き及んでいます。……何でアッサールがそのことを知っているのか考えると、呆れてしまいますけれど。どうせ、わたくしの弱みも何か握っているのでしょう。アッサールのレーメ様に対する執着はかなりのもので、一から十まで知らねば満足できない性質のようですので。一番の被害者はケネス様です、間違いなく。レーメ様のご寵愛が深いから致し方ありませんが。
レーメ様の下に集う者達の癖の強さは、なかなかのものです。爵位だけでなく、その性質という意味でも。そして、それを受け入れる度量の広さも、レーメ様の魅力の一つなのですけれど。
「ちょ、これ僕達が見て良いヤツですか!?」
「あらあら、なかなか頑張っているわねぇ。手の迷いのなさは、やはり寵愛を受けているからかしら?」
「実践をこの目で見れるなんて、とてもいい機会ですわね。レーメ様の好みを少しでも把握せねばなりません」
「……女性が興味津々に見るものでもないと思うんだけど。この世界こわい……」
「まあ! ズハ様は殿下の感じ入る姿、興味ございませんの? きっと殿下もまだ不慣れですから、表情のコントロールまではしきれないでしょう。貴重な機会ですわよ?」
「なっ、ぼ、僕は……」
中継画面では、ユーハン様とケネス様がレーメ様にご奉仕しております。ケネス様は、レーメ様のスラックスに手をかけたので、これから本格的にご奉仕していくのではないでしょうか。一応、画面の端には帝国の公爵子息も映っておりますが、そんなことよりレーメ様のご様子の方が大切です。食い入るように、じっと画面越しに一挙手一投足を観察します。ああ、やはりレーメ様はどんなご表情も所作も素敵ですわ。
ズハ様はリリー様からの問いに、ごにょごにょと言葉を濁しておられます。まだレーメ様を好ましいと伝えるのはご抵抗があるご様子。わたくしもレーメ様の婚約者ですので、他のいい人の前で言うのって……とおっしゃっていた通り、そちらの意味でもご抵抗があるのでしょう。堕ちてしまえば、レーメ様は受け止めてくださいますのに。わたくしやアッサールのように、丸ごと受け入れてくださるのです。ケネス様は最初から堕ちていますので、レーメ様はご自分の所有物のように思っていらっしゃるご様子。ユーハン様も、そろそろ堕ちきるでしょう。レーメ様が、手ぐすね引いて待っておられますのでその日も近いです。
王室で十妃ともなると、余計な争いがつきものですが。半数近くが既に手を組んでいる現状、嫁いでからもとても愉しい日々が待っていると言って間違いないでしょう。レーメ様が居ないからと、緩む頬を隠すように両手を頬に当ててはにかみました。
――レーメ様、パウリーネは貴方様を信じて本当にようございました。これからも可愛がってくださいまし。そう心で呟きながら。
「ええ。わたくしも実際に見るのは初めてですが、レーメ様のこのお姿は王族として立派なはずですわ。ねぇ、リリー様?」
「左様でございます、パウリーネお嬢様。殿下は練習なさった時、それは気恥ずかしそうにされていたものですが。表情もしっかり作れておりまして、ご立派ですねぇ」
王宮にあるレーメ様の寝室。レーメ様の諜報員アッサールの手引きにより、ズハ様とレーメ様の乳母リリー様と一緒に、レーメ様のご様子をライブ中継をしてもらい見ています。アッサール自身は、万が一に備えて現場で待機するということですが、きっと臨場感たっぷりな現場と艶やかなレーメ様を近くで見たいだけだと思いますわ。アッサールもわたくしの同士、レーメ様をこよなく愛している仲間ですから。
そういえば、リリー様がこの場に居るとは思わず、ご子息の濡れ場なのによろしいのですか、と思わず問いかけてしまいました。そんな無粋なわたくしの問いに、「息子がきちんと第十側妃候補として、お役目を果たせるかどうかの方が大切」とのお答えでした。乳母であるリリー様にとって、第十側妃となる乳兄弟はケネス様の姉君も該当するので、ご姉弟でどちらがそのお役目を果たせるのか、きちんと見極めたいとの仰せでした。
残念ながら、ケネス様の姉君もわたくしの方で調査済ですが、あの方はわたくし達の同士足り得ません。あの方は上昇志向が強いですからね、第十側妃の意義をきちんと理解できないと思います。それは、現在17歳で学園に通うその態度からもはっきりと分かります。情勢とは変わるものと今回のことで学びましたから、調査を再開しましたが、あの方の本質は変わらないように思います。ただの伯爵令嬢であれば、あの程度はどこにでもいますが、レーメ様の乳姉弟としては品格が足りません。そもそも、セドだからとレーメ様から離れていくその感性が理解できません。
だから、このままケネス様が第十側妃を担っていただくのが一番です。そのお役目通り、レーメ様のお心に一番近く既にご寵愛が深いですからね。少しばかり、ケネス様とレーメ様の絆に、嫉妬してしまいます。
さて、そうこう雑談している間に、レーメ様が壮絶に妖艶な笑みを浮かべられました。嗚呼、なんて美しい姿なのでしょう。侍女が持っていた大衆小説に書いてあるキュンキュンする、というのはこの胸の高鳴りではないでしょうか。
「あんなにぎこちなくあの椅子に座っていらしたレーメ様が、ご立派になられて……」
「いやいや、あんなエロい顔するのも王族の仕事なんですか!? この世界生まれ、怖ぇ……」
「あら、ユーハン様とケネス様がレーメ様の傍にいらっしゃいましたわ。……ああ、うらやましい。年下とはいえわたくしだって、あのくらいの教育は受けておりますのに……」
「えぇっ……婚約者ってあんなことしなくちゃなんですか……」
「ズハ様は神子様であらせられますから、気乗りしなければああする必要はございませんよ」
ズハ様は、レーメ様の仮婚約者ということになっておりますが、たぶんそのまま婚約続行されるのではと思っております。二人目の神子様として紹介された時は、とても驚いたものです。レーメ様がリモになると聞いた時に調査した一人目の神子様と、双子とはいえ全く違う性質に更に驚愕したものですが問題ありません。この双子には何やら深い溝があるようですがそれに関わらず、あの方たちが今後表に出ることはないでしょうから、ズハ様が望まない限りお会いすることはありません。きょうだいとは得てして不思議な隣人ですので、それはそれでいいのでは、とわたくしは思っております。ズハ様が望むのなら、復讐でも嫌がらせでも、恋の相談だって協力するのはやぶさかではございませんけれど。
そう、ズハ様は明言されておりませんが、明らかにレーメ様を意識なさっておいでです。だから、少し気が早いですが、ズハ様も我らの同士であると思っておりますの。ズハ様の元居た世界が一夫一妻制であるらしく、最低でも10人の妃を娶らなければならないレーメ様に思うところがおありのようですが。それでも、他の男に嫁ぐくらいならここがいいな、とぽつりと零していたとアッサールより聞き及んでいます。……何でアッサールがそのことを知っているのか考えると、呆れてしまいますけれど。どうせ、わたくしの弱みも何か握っているのでしょう。アッサールのレーメ様に対する執着はかなりのもので、一から十まで知らねば満足できない性質のようですので。一番の被害者はケネス様です、間違いなく。レーメ様のご寵愛が深いから致し方ありませんが。
レーメ様の下に集う者達の癖の強さは、なかなかのものです。爵位だけでなく、その性質という意味でも。そして、それを受け入れる度量の広さも、レーメ様の魅力の一つなのですけれど。
「ちょ、これ僕達が見て良いヤツですか!?」
「あらあら、なかなか頑張っているわねぇ。手の迷いのなさは、やはり寵愛を受けているからかしら?」
「実践をこの目で見れるなんて、とてもいい機会ですわね。レーメ様の好みを少しでも把握せねばなりません」
「……女性が興味津々に見るものでもないと思うんだけど。この世界こわい……」
「まあ! ズハ様は殿下の感じ入る姿、興味ございませんの? きっと殿下もまだ不慣れですから、表情のコントロールまではしきれないでしょう。貴重な機会ですわよ?」
「なっ、ぼ、僕は……」
中継画面では、ユーハン様とケネス様がレーメ様にご奉仕しております。ケネス様は、レーメ様のスラックスに手をかけたので、これから本格的にご奉仕していくのではないでしょうか。一応、画面の端には帝国の公爵子息も映っておりますが、そんなことよりレーメ様のご様子の方が大切です。食い入るように、じっと画面越しに一挙手一投足を観察します。ああ、やはりレーメ様はどんなご表情も所作も素敵ですわ。
ズハ様はリリー様からの問いに、ごにょごにょと言葉を濁しておられます。まだレーメ様を好ましいと伝えるのはご抵抗があるご様子。わたくしもレーメ様の婚約者ですので、他のいい人の前で言うのって……とおっしゃっていた通り、そちらの意味でもご抵抗があるのでしょう。堕ちてしまえば、レーメ様は受け止めてくださいますのに。わたくしやアッサールのように、丸ごと受け入れてくださるのです。ケネス様は最初から堕ちていますので、レーメ様はご自分の所有物のように思っていらっしゃるご様子。ユーハン様も、そろそろ堕ちきるでしょう。レーメ様が、手ぐすね引いて待っておられますのでその日も近いです。
王室で十妃ともなると、余計な争いがつきものですが。半数近くが既に手を組んでいる現状、嫁いでからもとても愉しい日々が待っていると言って間違いないでしょう。レーメ様が居ないからと、緩む頬を隠すように両手を頬に当ててはにかみました。
――レーメ様、パウリーネは貴方様を信じて本当にようございました。これからも可愛がってくださいまし。そう心で呟きながら。
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