【完結】運命の番より俺を愛すると誓え

劣情祝詞

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前編

7 ※モブ姦未遂

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 それから、何度も何度も、蒼井に対する見せしめの暴力は行われた。
 殴打音、呻き、悲鳴、男たちの下卑た笑い声。
 俺は黙って、耳を塞いでいることしかできなかった。
 正義のヒーローみたいに、蒼井の前に立ちはだかって、もうやめろと叫びたかった。
 しかし、できなかった。
 裏切り者として制裁を受け、自分が殺されるかもしれない。
 母親は……?
 うちまで乗り込んできて、暴れられて、母親まで殺されたら?

 その不安に飲まれて、俺は何も行動に移せなかったのだ。
 自分が恥ずかしい、無力だ。
 そんな生活は、もう3日も続いていた。


「今日は次のフェーズに入る」

 拠点の一室に現れるなり、団長はそう宣言した。
 床に転がる蒼井を囲んだ五人ほどの団員が団長を見る。
 俺は、少し離れたところに座り込んで様子を見ていた。
 団長は、団員たちにスマホの画面を見せつけた。

「見ろ、大騒ぎだ。昨日のニュースや情報番組でも特集が組まれていた、全国規模だ。これまで以上の反響に、国も動かざるを得ないだろう」

 スマホの画面は、SNSだった。
 頭に紙袋を被せられ、首輪で止められた蒼井が、縛り付けられ、殴る蹴るの酷い暴行を受けている10数秒の映像が数本投稿されいた。
 コメントやスタンプがたくさんつけられ、拡散されているものの、それはスクリーンショットの画像のようだった。
 団員の一人がのんきに尋ねる。

「なんでスクショなんすか?」
「SNSのアカウントは昨晩凍結したからな。しかし何度でも作り直し、投稿を続ける。そこでだ、そろそろ同じような暴行の映像ではインパクトに欠ける。次の段階に移るぞ」
「次の段階って……一体何を」

 団長は、蒼井の方までスタスタと歩き、しゃがみこんだかと思うと、蒼井の前髪を乱暴に掴んで、無理やり顔を上げさせて言った。

「レイプだ。」

 蒼井は、キッと口をつぐんで、冷ややかな目で団長の方を睨み返した。

「お高く止まったαども。自分は蹂躙され辱められる危険はないと、のうのうと生きている。そういうのはΩの役割だ、とでも言うかのようだ。……だからコイツを犯す。痛みと、屈辱と、恐怖を、αどもに与えてやるんだ。自分も尊厳を傷つけられ、辱められるかもしれないという恐怖と常に隣り合わせでこれから生きていくんだよ、てめえらは」
「君は……主語がでかい男だな。αが全員差別主義者だとでも?……まるで、αが全員強姦魔だとでもいうようじゃないか」
「Ωが一生抱えて生きる不安を、てめえらも同じく味わえと言っているだけだ。それに、多くの差別主義者を変えるには、多少の犠牲は必要だろ?」

 団長は、悪趣味な笑みを浮かべた。
 蒼井は明らかに不快だという顔をしながら、なおも喋りを止めることはなかった。

「君と同じくβはどうなんだ。βは同じ不安を背負う必要はないのか?君が言うことが本心なら、αもβもΩも、等しく不安を抱えて生きる存在にならなければおかしい。……君は、そんな社会にしたいとでも?」

 きっと蒼井は、会話をしたいのだろう。
 言葉で、人を救えると信じている男だ。
 自分が危機に瀕しても、我を忘れたりせず、自分の信じた道を貫き通す人間だ。
 しかし、その言葉は聞き届けられることはなかった。
 団長は、掴んでいた蒼井の頭を勢いよく床に叩きつけた。

「団長やめろっ!」

 俺はとっさに叫んでいた。

「文句あんのか?」
「……死にますよ、そいつ。まだ使うんでしょ」

 俺はあくまで、組織にとって冷静な判断をしているようなふりをする。
 団長は苛立った顔をしたが、軽く舌打ちをしてから、周りの団員に顔を向けた。

「……やれ、お前ら」

 一人の男が、三脚に設置されたビデオの撮影を開始する。
 他の男が、蒼井の頭に、いつもの紙袋をかぶせる。
 男たちが蒼井に群がる。
 身を捩って逃げようとする蒼井。
 しかし、抵抗は叶わない。
 たくさんの下衆な手が蒼井に伸びる。

「おら、暴れんな」

 一人の団員が、蒼井の肩を掴む。
 他の団員が、ナイフで服を切り裂き、脱がそうとする。

 やめろ。

 足首を掴んで脚を開かせようとする。
 上半身を後ろから抱えて、抵抗できないようにする。

 やめろ。

 脚を持ち上げられて、上に高く上げた蒼井のつま先は震えていた。
 はぁ、と紙袋の中でくぐもった悲鳴は震えていた。
 嫌がっている、怖がっている。

 そいつは、てめえらみたいな汚ねえ手で触れていい人間じゃねえんだよ。
 
 俺は団員たちに気づかれないように右手を、自身の喉奥に突っ込んだ。
 そして、

「待てよ」

 俺は通る声で、そう言った。
 座っていた木箱から腰を上げる。
 団員たちは手を止め、一斉に俺を見た。
 横で見ていた団長が、俺を睨みつけた。
 
 全身が震える。
 しかし、悟られるわけにはいかない。
 俺は、今にも崩れ落ちてしまいそうな脚を奮い立たせて、蒼井のそばまで近づいて、蒼井を見下ろして言った。

「……俺がやります」
「……ほう?」

 団長は、顎に手を当てて、興味深そうな声をあげた。
 きっと怪しまれているだろう。
 しかし、俺が初めて、この活動に能動的に参加しようとするのを見て、いい気になったのか、機嫌を良くした。

「でも、不特定多数に触られるのはキモいんで、俺一人でやります」
「……いいだろう、手酷く犯せよ。手加減するな」

 蒼井は、ピタリと動きを止めていた。
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