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久しぶりにアールがウーヴェを殺しにきた。いつものごとくザカリアスとシュテファンが対峙するが、いつもと様子がおかしい。すでに何個も爆弾が仕掛けられA国の敷地内はぐちゃぐちゃの状態だった。いつもはこんなことしなかった。
「シュティ、なんかこれおかしくないか?」
「ああ、俺らでも手におえないかも。」
自分も死にかねないような位置に爆弾を置いたり、やたらめったら剣を振り回したり、常人のそれではない。そして何よりも、アールはずっと泣きそうな目をしていた。操られる体に抵抗できない心が泣いているようだった。
ザカリアスはこのままでは二人揃ってやられる、と感づいていた。
「カミル。」
「ギル。あんた、何を。」
手枷と足枷をつけられたカミルの前にギルベルトが立っている。
「お前に謀反の疑いがかかっている、いや、スパイか。」
「……。」
「正直に話せ。そして、お前が知っていることをすべて話せ。」
「ギル。」
「これは拷問だ。お前は罪人だ。気安く名前を呼ぶな。」
ギルベルトの目はとてつもなく悲しく、狂気を孕んでいた。
「分かったザック。報告ありがとう。手遅れになる前に他の兵士も連れて引け。」
テオバルトはがちゃんと電話を切った。ザカリアスからの報告を受けて考えを巡らせる。ザックとシュティでもどうしようもできないものを俺が行ってどうにかできるのか、いや、どうにかするしかない。
「テオ、一人で考え詰めないで。」
ウーヴェはテオバルトに声をかける。
「この前言っただろ。俺はウーヴェに生きてて欲しい。お前を行かせるわけにはいかないんだ。」
「…俺はアールに生きてて欲しい。守りたい。」
「……!!」
「だから、俺が行かないといけないんだ。」
俺やザック、シュティではなくアールを守りたい、ならば、俺たちにはどうすることもできない。
「…分かった。だけど危なくなったらすぐ逃げろ。」
「分かってるよ。」
「ザックとシュティが一室に閉じ込めたらしいからそこに行け。鍵もちゃんと閉めろ。発狂した奴なんか外に出したら、下手すりゃ皆殺しだ。」
「オーケイ。」
「死ぬのはお前だけで十分だ。」
そう言ってテオバルトは笑った。死ぬなと言いながらも死んでもいいと言っているのだ。ウーヴェはその意味を理解して、アールの元へ向かった。
「俺がっ、俺が忠誠を誓ってるのはあんただけだ!!あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
痛みで悲痛な叫びをあげる、ボロボロにされたカミル。
「黙れ裏切り者。ほら、ちゃんと吐けよ。なあ。」
「俺はあんたのためだけに…。」
「ほら、早くしないと死ぬぞ。」
「はあっ、あんたのためだったら死ぬのも本望だ。」
「黙れ。」
「がっ、あ゛っ、かはっ、あ゛あ゛あ゛」
永遠に続く拷問。
部屋の扉は閉じられた。外から鍵をかけさせた。これで逃げられない。俺も、アールも。
「ふふ、ふふふふ。獲物の方から来た。」
「久しぶり、アールくん。」
「死ね。」
「ほら、ちょっと落ち着いてさ、お茶でもしない?」
「黙れ、死ね。お前が死ねば終わる。全部終わるんだ!!」
「…。」
アールが剣を持って何回もウーヴェを襲う。避けるだけで精一杯のウーヴェは何も武器を持っていなかった。
アールの剣がウーヴェの肩を貫いた。その瞬間にウーヴェはアールを抱きしめた。小柄なその体が身動きを取れないほど強く、きつく。
「離せ!!離せよ!!」
「アールくん聞いて。」
暴れるアールの耳元で。アール、ルノーとの出会いを、約束を、そして自分の犯した過ちをすべて囁いた。聞きながらアールは抵抗をやめ、ウーヴェの腕の中で冷たい涙を流して震えていた。
「ごめんな。ずっと謝りたかった。今更遅いけど、でも言いたかった。初めて出会ったあの日からずっと好きだった。」
「あっ、ウーヴェ…。僕は、」
えぐえぐと泣きじゃくるアール。その瞬間、アールは頭を抱える。
「うぐああああああ!!!」
「アールッ!大丈夫か!アール!」
ウーヴェの元から飛び離れる。
「あ゛あ゛あ゛、う゛う゛う゛う゛」
「ルノー…?」
「コロさ、ないと。僕の、意味。僕の、存在、意義。」
「…。」
「はーっ、はーっ。僕は…対、要人用……殺人、兵器。」
「ルノー。」
「殺せ、殺せ、殺さないと。僕の生きる意味が、」
ウーヴェはアールに近づいて抱きしめる。肩口からぼたぼたと流れる血がアールとウーヴェを赤く濡らす。
「ルノーっ!お前が俺を殺したいんなら、それでもいい。殺せばいい。でも、そうじゃないなら、もう苦しまなくていいんだ。誰かの指示とか、どうでもいい。お前は心を持った一人の人間。」
「ああ、あ…あああ。」
「自分の意思で自由に生きればいいんだ!それが人間だから!」
「シュティ、なんかこれおかしくないか?」
「ああ、俺らでも手におえないかも。」
自分も死にかねないような位置に爆弾を置いたり、やたらめったら剣を振り回したり、常人のそれではない。そして何よりも、アールはずっと泣きそうな目をしていた。操られる体に抵抗できない心が泣いているようだった。
ザカリアスはこのままでは二人揃ってやられる、と感づいていた。
「カミル。」
「ギル。あんた、何を。」
手枷と足枷をつけられたカミルの前にギルベルトが立っている。
「お前に謀反の疑いがかかっている、いや、スパイか。」
「……。」
「正直に話せ。そして、お前が知っていることをすべて話せ。」
「ギル。」
「これは拷問だ。お前は罪人だ。気安く名前を呼ぶな。」
ギルベルトの目はとてつもなく悲しく、狂気を孕んでいた。
「分かったザック。報告ありがとう。手遅れになる前に他の兵士も連れて引け。」
テオバルトはがちゃんと電話を切った。ザカリアスからの報告を受けて考えを巡らせる。ザックとシュティでもどうしようもできないものを俺が行ってどうにかできるのか、いや、どうにかするしかない。
「テオ、一人で考え詰めないで。」
ウーヴェはテオバルトに声をかける。
「この前言っただろ。俺はウーヴェに生きてて欲しい。お前を行かせるわけにはいかないんだ。」
「…俺はアールに生きてて欲しい。守りたい。」
「……!!」
「だから、俺が行かないといけないんだ。」
俺やザック、シュティではなくアールを守りたい、ならば、俺たちにはどうすることもできない。
「…分かった。だけど危なくなったらすぐ逃げろ。」
「分かってるよ。」
「ザックとシュティが一室に閉じ込めたらしいからそこに行け。鍵もちゃんと閉めろ。発狂した奴なんか外に出したら、下手すりゃ皆殺しだ。」
「オーケイ。」
「死ぬのはお前だけで十分だ。」
そう言ってテオバルトは笑った。死ぬなと言いながらも死んでもいいと言っているのだ。ウーヴェはその意味を理解して、アールの元へ向かった。
「俺がっ、俺が忠誠を誓ってるのはあんただけだ!!あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
痛みで悲痛な叫びをあげる、ボロボロにされたカミル。
「黙れ裏切り者。ほら、ちゃんと吐けよ。なあ。」
「俺はあんたのためだけに…。」
「ほら、早くしないと死ぬぞ。」
「はあっ、あんたのためだったら死ぬのも本望だ。」
「黙れ。」
「がっ、あ゛っ、かはっ、あ゛あ゛あ゛」
永遠に続く拷問。
部屋の扉は閉じられた。外から鍵をかけさせた。これで逃げられない。俺も、アールも。
「ふふ、ふふふふ。獲物の方から来た。」
「久しぶり、アールくん。」
「死ね。」
「ほら、ちょっと落ち着いてさ、お茶でもしない?」
「黙れ、死ね。お前が死ねば終わる。全部終わるんだ!!」
「…。」
アールが剣を持って何回もウーヴェを襲う。避けるだけで精一杯のウーヴェは何も武器を持っていなかった。
アールの剣がウーヴェの肩を貫いた。その瞬間にウーヴェはアールを抱きしめた。小柄なその体が身動きを取れないほど強く、きつく。
「離せ!!離せよ!!」
「アールくん聞いて。」
暴れるアールの耳元で。アール、ルノーとの出会いを、約束を、そして自分の犯した過ちをすべて囁いた。聞きながらアールは抵抗をやめ、ウーヴェの腕の中で冷たい涙を流して震えていた。
「ごめんな。ずっと謝りたかった。今更遅いけど、でも言いたかった。初めて出会ったあの日からずっと好きだった。」
「あっ、ウーヴェ…。僕は、」
えぐえぐと泣きじゃくるアール。その瞬間、アールは頭を抱える。
「うぐああああああ!!!」
「アールッ!大丈夫か!アール!」
ウーヴェの元から飛び離れる。
「あ゛あ゛あ゛、う゛う゛う゛う゛」
「ルノー…?」
「コロさ、ないと。僕の、意味。僕の、存在、意義。」
「…。」
「はーっ、はーっ。僕は…対、要人用……殺人、兵器。」
「ルノー。」
「殺せ、殺せ、殺さないと。僕の生きる意味が、」
ウーヴェはアールに近づいて抱きしめる。肩口からぼたぼたと流れる血がアールとウーヴェを赤く濡らす。
「ルノーっ!お前が俺を殺したいんなら、それでもいい。殺せばいい。でも、そうじゃないなら、もう苦しまなくていいんだ。誰かの指示とか、どうでもいい。お前は心を持った一人の人間。」
「ああ、あ…あああ。」
「自分の意思で自由に生きればいいんだ!それが人間だから!」
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