【完結】殺人兵器は愛情の夢を見るか

劣情祝詞

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ルノーとオリヴ

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「よし、終了だ。」

オリヴはそうルノーに告げた。毎朝の健康診断。主に脳に関するチェック。ルノーには何をしているのかさっぱりわからなかったが、毎朝医務室に通うのは日課だ。

「ありがとうオリヴ 。」

オリヴは常に微笑を浮かべている。張り付いたような笑顔は時には怖くもある、何かを見透かしているのではないか。そう思った時もあった。B国にいた時のオリヴは微笑を浮かべながらもどこか警戒心を拭えないような顔をしていた。しかし、A国に来てからは柔らかくなったように感じる。その笑顔も今ではそんなに怖くない。

「脳に異常はない。が、以前ヒートを起こしたことがあったから何か異常を感じたらすぐ誰かに知らせるか、俺のところに来い。」
「わかった。」
「記憶の方はどうだ?」
「……まだ、あまり。少しずつは思い出して来たんだけど。」
「そうか。」
「ウーヴェのことはまだ全然。」
「まあそもそも人間の脳の代わりをAIがやるって方がおかしい話だ。研究者としては矛盾した発言だが。」
「僕もまだ人間って実感わかないけど、僕の脳に機械が入ってるって思うとちょっと変な気持ちになるよ。」

オリヴは答えずに少し表情を歪めた。しばしの沈黙が走った。ルノーは首を傾げる。

「……実験体にしたことは悪かった。」
「え。」
「別に俺はマッドサイエンティストじゃない。本来は被験者の同意がなければ実験体にはしない。」

ルノーは何と答えればいいかわからなかった。

「まあ、何にせよ診断は終わりだ。外でシュテファンたちと遊んでこい。」
「ありがとう。」

ルノーは医務室から退出しようとした。しかし、扉の前で立ち止まって背中を向けたまま言った。

「……僕は、オリヴに出会えて良かったと思ってるよ。僕の頭は撃たれてそのままじゃ死んでいた。僕の失った部分を作ってくれたんでしょ。」
「……。」
「今が幸せなんだ、お前が拾ってくれなかったら僕は絶望の中死んでいた。この幸せも手に入らなかった。」
「……。」
「僕の命を助けてくれてありがとう。」
「……。」

ルノーは一度もオリヴの方に顔を向けずに、そのまま扉から出た。出た瞬間に走り出した。なぜか涙が止まらなくなって、ボロボロ泣きながら走った。誰にも見られないように。
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