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秋葉原バックストリート
秋葉原バックストリート(10)
しおりを挟む「では!」
コルヴェナはモジャコに向かってきた。
「お名前を伺っておこうかしら!?」
「楙蓙琥珀!」
中央通りのすぐ西側に並行する秋葉原のバックストリート。
一方通行の狭い通りに、パソコンのパーツや周辺機器、工具、中古品を扱う小規模なショップが並ぶ。
商品は軒先はおろか、道路にまではみ出しているからなおさら狭く、そこを、掘り出し物を物色する人やら、すでに大きな紙袋を下げた人やらが行き交っている。
そんななかでストリートファイト。
コルヴェナは矢継ぎ早にキックを飛ばしてくる。
モジャコはガードしながら後退していく。
「ふふっ、手も足も出ないって感じかしら!?」
コルヴェナは反転して回し蹴りを繰り出した。
——が、モジャコはそれを躱すと、流れのままに反撃へ転じた。
「なっ!?」
無駄のない動きはとにかく速い。
たまらず、コルヴェナは力任せに攻撃を振り切った。
バランスを崩す。
「あわっ、わっ、わっ……と!!」
一瞬、踏みとどまったものの、コルヴェナは、ビルの壁に真正面から、びたーん、と激突した。
「ふんぎゃ!!」
(ふんぎゃって……)とハル。
鼻を押さえながら向き直り、コルヴェナは口許で笑った。
空いているほうの人さし指を、ずばんっ、と突きつける。
「ふふっ、やるわね、あなた!!」
(へこたれない人だなあ)
あと頑丈。
それはともかく——と、どうやらモジャコは、ジシェが頭の上に乗っかっていることを忘れているようなので、どうしたものかと、ハルは思案した。
モジャコ当人は問題ないとして、乗っけられているほうはたまったものではない。
ジシェは悲鳴を上げていたが、その声はモジャコには届いていなかった……。
(集中すると何も聞こえなくなるんだよね……)
コルヴェナはデッサに目配せした。
「これならどうかしら!?」
コルヴェナとデッサは2人がかりで向かってきた。
「ぬわぁ~! モ、モジャコ殿~!!」
「……」
「ふふっ」
コルヴェナはほくそ笑む——が、モジャコは2人の攻撃をすべて躱す。
ストリートファイトでは、2対1の対戦で、2人組のほうが絶対的に有利であるとは限らない。
特に1人のほうがものすごく速い場合。
(といっても、相手の1人はロボットだし……)
デッサの真後ろからの攻撃を受け流そうとして、モジャコはやめた。
身を反らして躱す——と、デッサのハイキックはコルヴェナの顔面にクリティカルヒットした。
「うぎゃ!!」
(うぎゃって……)
「コルヴェナさま!」
「ぜんぜん平気っ!」
コルヴェナは爽やかに立ち上がって、モジャコとハルを順に指さした。
「ふふ、デッサの実力、よくわかって!?」
(セーブされている状態でもパワーは半端ない——と。よくわかりました……)
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