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秋葉原バックストリート
秋葉原バックストリート(11)
しおりを挟むコルヴェナとデッサは再びモジャコに向かってくる。
少しずつ動きを修正しているのか、2人の息はだんだんと合ってくる。
とはいえ、そのぶんモジャコも加速する。
たまらないのは頭の上のジシェで、悲鳴を上げる。
「モモモ、モジャコ殿~!? ぬわぁ~」
モジャコは聞いていない。
デッサの攻撃をあしらい、そのままコルヴェナの間合いに入り込んだ。
「飛んで火にいるなんちゃらほいっ!」
コルヴェナは嬉々として高い位置に前蹴りを放ってくる。
(躱してそのまま投げ飛ばす!)
しかし、ふとハルの声が聞こえる。いわく——。
「モジャコってばねー、ジシェのこと忘れてない!?」
ジシェはグロッキーになって、モジャコの頭にへばりついていた。
「忘れてた……!」
とっさに、ジシェを守ろうと注意がそれ、バランスを崩す。
そして、まずい——と、思ったときにはもう、モジャコはデッサに組み伏せられていた。
「モジャコ!!」
ハルは悲鳴を上げた。
同時に、ずしん、とアスファルトを震わせ、何かが近くに降り立った。
「え……?」
振り返れば、そこにはデッサと同じような少女が立っていた。
武器は装備していないが、全身を覆うのは、青みがかったグレーの装甲スーツ。
露出した肌は、生きているかのように瑞々しいのに、透明に碧く印象的なインディゴライトの瞳に、表情はなく、まばたきもしない。
左耳の通信機のような装置と一体化した額の装身具は、後ろまで回り込み、大きめのバレッタのように髪をまとめる。
淡い紫苑の髪は、先端に近づくにつれ、わずかにその色を強めていた。
(ヒト型機械兵……!!)
地面に押し付けられ、身動きの取れないままモジャコは歯噛みする。
新たにやってきた機械兵は、無表情に冷たくモジャコを見下ろした。
装身具の中央部分がかすかに碧く明滅し、それがデッサのものと同期する。
「次世代型ルドゥフレーデ試作機——味方機と識別」
「ルドゥフレーデ? ずいぶん古いわね」
「半世紀前の残存機です。識別名称はリグナ——」
リグナと呼ばれたそのヒト型機械兵の少女は、不意に身を翻し、デッサを蹴り飛ばした。
「!!」
デッサはビルの外壁に背中から激突した。
彼女を中心に亀裂が四方へ広がる。
「な……!」
コルヴェナは呆気にとられるしかない。
解放されたモジャコは、間髪をいれず、立ち上がってその間合いに入った。
「え、わ……っ!」
(悪いけど手加減してる余裕はないな……)
そのまま腕を取って足をかけ、モジャコはコルヴェナを勢いよく引き倒した。
コルヴェナは後頭部をアスファルトに強打した。
「もぎゃ……!!」
「逃げるぞ、ミコッ!」
「え、あ、うんっ!」
コルヴェナは泡を吹いて失神している。
気の毒だが構ってもいられない。
ハルはモジャコのあとを追った。
リグナもついてくる。
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