新宿アイル

一ノ宮ガユウ

文字の大きさ
11 / 116
秋葉原バックストリート

秋葉原バックストリート(11)

しおりを挟む

 コルヴェナとデッサは再びモジャコに向かってくる。

 少しずつ動きを修正しているのか、2人の息はだんだんと合ってくる。
 とはいえ、そのぶんモジャコも加速する。

 たまらないのは頭の上のジシェで、悲鳴を上げる。

「モモモ、モジャコ殿~!? ぬわぁ~」

 モジャコは聞いていない。
 デッサの攻撃をあしらい、そのままコルヴェナの間合いに入り込んだ。

「飛んで火にいるなんちゃらほいっ!」

 コルヴェナは嬉々として高い位置に前蹴りを放ってくる。

かわしてそのまま投げ飛ばす!)

 しかし、ふとハルの声が聞こえる。いわく——。

「モジャコってばねー、ジシェのこと忘れてない!?」

 ジシェはグロッキーになって、モジャコの頭にへばりついていた。

「忘れてた……!」

 とっさに、ジシェを守ろうと注意がそれ、バランスを崩す。
 そして、まずい——と、思ったときにはもう、モジャコはデッサに組み伏せられていた。

「モジャコ!!」

 ハルは悲鳴を上げた。
 同時に、ずしん、とアスファルトを震わせ、何かが近くに降り立った。

「え……?」

 振り返れば、そこにはデッサと同じような少女が立っていた。

 武器は装備していないが、全身を覆うのは、青みがかったグレーの装甲スーツ。
 露出した肌は、生きているかのようにみずみずしいのに、透明にあおく印象的なインディゴライトの瞳に、表情はなく、まばたきもしない。

 左耳の通信機のような装置と一体化した額の装身具は、後ろまで回り込み、大きめのバレッタのように髪をまとめる。
 淡いおんの髪は、先端に近づくにつれ、わずかにその色を強めていた。


(ヒト型機械兵……!!)

 地面に押し付けられ、身動きの取れないままモジャコはみする。

 新たにやってきた機械兵は、無表情に冷たくモジャコを見下ろした。
 装身具の中央部分がかすかにあおく明滅し、それがデッサのものと同期する。

「次世代型ルドゥフレーデ試作機——味方機と識別」
「ルドゥフレーデ? ずいぶん古いわね」
「半世紀前の残存機です。識別名称はリグナ——」

 リグナと呼ばれたそのヒト型機械兵の少女は、不意に身を翻し、デッサを蹴り飛ばした。

「!!」

 デッサはビルの外壁に背中から激突した。
 彼女を中心に亀裂が四方へ広がる。

「な……!」

 コルヴェナは呆気にとられるしかない。
 解放されたモジャコは、間髪をいれず、立ち上がってその間合いに入った。

「え、わ……っ!」

(悪いけど手加減してる余裕はないな……)

 そのまま腕を取って足をかけ、モジャコはコルヴェナを勢いよく引き倒した。
 コルヴェナは後頭部をアスファルトに強打した。

「もぎゃ……!!」

「逃げるぞ、ミコッ!」
「え、あ、うんっ!」

 コルヴェナは泡を吹いて失神している。
 気の毒だが構ってもいられない。
 ハルはモジャコのあとを追った。

 リグナもついてくる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

処理中です...