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秋葉原バックストリート
秋葉原バックストリート(9)
しおりを挟むそれはともかく、気になるのはもうひとりのほうだ。
異質——一言でいえば。
その少女は、コルヴェナの後ろで、身じろぎひとつせず控えていた。
身を固めるのは、硬質の素材で出来たカーキ色の装甲。
肩口には複数の銃口も見える。
両手両足は、無骨な黒いブーツとグローブ、背中にはロケットランチャー。
ブロンドのショートヘアーは、濃いオリーブ色の装身具で押さえられている。
ただ、何よりも特異に感じるのは、アクアマリンのように透明な双眸に、まるで感情が見えないことだった。
「ふっ」
コルヴェナは満足そうに口許で笑い、軽く瞼を閉じた。
「驚いて? ガルバルデ——ヒト型機械兵、コードネームはデッサ!」
(機械兵……ロボットってこと……?)
(武器はぜんぶ本物ってことか……?)
ハルとモジャコは視線を交わした。
「ま、そういうわけだから」
コルヴェナは、カッ、と両目を見開いた。
紅の眉を尖らせ、ガーネット色の双眸を鋭く滾らせる。
そして人さし指を、ハルの手にあるスマホに突きつけた。
「そのデバイス、もらい受けますわ!」
またまた決まってしまった——と、コルヴェナは悦に入る。
向かうところ敵なし、というのが当人の想定。
モジャコは首をぐるぐると回し、左の手のひらに右手のグーを打ち付けた。
「なにが『そういうわけ』なのか知らないけど、喧嘩なら買うぞ」
——と、コルヴェナは「あ、ご指摘はごもっともね!」と片手で制した。
……。
ハルもモジャコも、特に何も指摘していない……。
「確かに仕様上、ヒトへの火器使用は禁止されているし、直接攻撃もかなり制約されているわ。でも並の戦闘員を凌駕する能力は健在、抵抗しないことね! ああっと!」
残った手を額に当て、コルヴェナはうつむき加減に首を振る。
ああ、素人はそう思っちゃうわよね——といった感じに。
「この星に来たのは、あたしとお兄さまだけど、お兄さまはここにはいないの。だから、交渉相手を変えようとしても無駄! 諦めることね!!」
整理すると、
・ヒト型機械兵ガルバルデのデッサは、人間に対して火器を使用できない。
・同じく直接攻撃も限定される。
・彼女の兄は、すぐに駆けつけられるようなところにはいないので、加勢される心配もない。
——ということ。
「ち・な・み・に!」
人さし指を、つん、つん、つん、つん。
「あたしから手の内を読もうと思っても無駄! 口が堅いのでスーパー有名なんだからっ!」
ご満悦のコルヴェナは瞳を輝かせ、もう一度、ずばびーん、と人さし指を突きつけた。
(ああ……いろいろ残念な人だ……)
ハルとモジャコの共通の感想である……。
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