新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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銀座ステレーション

銀座ステレーション(2)

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「テヴェとルジェは、いまでこそ2つに分かれているが、もとは〝ロート〟という、一族であったという。そのロートの遺産として伝わるのが〈ロートの追憶〉」

 広い歩道を、ハルたちは光点の場所へ歩いていく。

「しかし、もっとも古い記録でさえ伝承の伝承で、実際のところ、それがどのようなものであるのかさえ、わかっていない。
 究極の至宝とも、ありふれた、取るに足らないものともいわれる。
 ただ、ひとつはっきりしているのは、それを手にしたものには絶大な力が与えられるとされること。
 物理的な特徴から、古代の強力な兵器か、ばくだいなエネルギーを蓄積したなにかであると、ルジェは考えているようでござる」

「それが東京の地下にある……?」
「そしてルジェが〈ロートの追憶〉を強奪するために使ったのが円環ロンド? それってどういうものなの?」

 自分の頭の上に向かってモジャコは質問する。ハルも続ける。

「その内に封じることによって対象を転移させる、環状の装置でござる。
 〈ロートの追憶〉の観測される質量と予測されるポテンシャルから、円環ロンドの直径は、真円であると仮定するのなら、10キロメートルほどになるであろうか」

「ちょ、ちょっと待って! それって……ものすごい大きさじゃない……!?」
「滅茶苦茶な大きなだな……。具体的にはわからんけど」

 ハルは驚いて目を見開く。
 モジャコのほうはあまりピンとは来ていない。

円環ロンドの原理そのものは、せっしゃがこの星にやってくるために利用した、イクリューエル・ヴォラント・クアトエーシュ転移と、基本的に同じでござる」
「イクリューエル・ヴォラント・クアトエーシュ転移?」

 聞き返したハルにジシェはうなずく。
 そのジシェを頭に乗せているモジャコは、口をヘの字に曲げた。

(イクリュ……。1回聞いただけでよくいい返せるな……)

 で、簡単にいうなれば——と、ジシェが解説したところによれば——

イクリューエル・ヴォラント・クアトエーシュ転移または単にイクリューエル転移とはヴォーユ・ア・ヴォエレの点と呼ばれる一種の無限遠点を利用した射影によって2地点の座標を入れ替える方法でありごく単純化して説明すると2地点が数学的な意味でいう点であればヴォーユ・ア・ヴォエレ座標系における単調で収束しない非線形変換に過ぎない

——とのことである。

 という言葉の意味はいつから変わったのだろうか?
 モジャコは思い悩む。

「へえー! 面白いねっ!!」

 そしてこの目をキラキラさせたスーヲタ。
 少なくとも面白くはない。
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