新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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銀座ステレーション

銀座ステレーション(7)

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 銀座線の電車はカーブを曲がって終点の浅草駅に到着した。

 案内に従い、ホームの上野寄りから続く、狭い通路を歩いて階段を下る。
 こまがたばし方面と表示された小さな改札口を通り、連絡通路を抜ければ、都営浅草線の改札口はすぐそこだった。

 自動改札機でリグナはまたシャットアウト。
 パスモをじぃっと見つめ、なんじゃら……おおっ、とタッチして通過。


 ちょっと慣れてきたのかなー、とハルは思う。

 なお駅の構造上、2番線に到着した場合、浅草線へ乗り換えようとするとけっこう遠回りになるので、1番線に到着する電車がお勧め。
 電車の行先表示でもわざわざ案内しているのはそういう理由。

 浅草線の改札口はかみなりもん方面改札。
 名前のとおりに、都営浅草線ではかみなりもんにいちばん近い改札口で、これから浅草観光に向かう人たちと、羽田空港へ向かうらしいキャリーバッグを転がす人たちが行き交っていた。

 ホームに入ってきた電車はほどほどの混み具合で、ハルとモジャコ、そしてリグナは、ちょうど空いていた席に並んで座った。


「——実のところ、〈追憶のカケラ〉に関しては、わからないことが多いのでござる」
「あ、ちょい待ち」

 神妙な雰囲気で話しはじめたジシェを、モジャコは頭の上で持ち上げた。
 前後をひっくり返してから、おでこに垂れ下がった尻尾をお腹の下にしまう。

「ぬ?」
「気にしないで続けてくれ」

 大量のハテナマークが浮かび上がったものの、ともかく窓に向かってジシェは話を続けた。

「——はっきりしているのは、もしも予期しない事態に陥ったのなら、次の可能性のために〈追憶のカケラ〉を残すだろう、とオーラ殿がいい残したこと。
 50年前、異変を察知したオーラ殿は急ぎ、この星にやってきたのだ。
 だが、おそらくそのときにはもう、ルジェによって円環ロンドは形成されようとしていたのであろう。
 オーラ殿はコアを強制停止させたのだ。
 結果として、転移がはじまる寸前に円環ロンドを消滅させることには成功したが、強引に止めたがために、次元が不安定になって、時間と空間に矛盾が生じた……」

「それが時空の背反……?」ハルは独り言のように聞き返す。
「さよう」ジシェはうなずく。

「自身の存在がこの空間から失われていくなかで、オーラ殿は〈追憶のカケラ〉を残したのだ。おそらくは、暗号化された円環ロンドコアのセキュリティ解除コードと、その復号キー。コアにアクセスできれば、機能を完全に停止できるのだ」

「逆にいえば、それがあればコアをもう一度、動かすことができる……。だから、コルヴェナたちも探しているってことか……。何個あるのかもわかってないのか?」

 モジャコの質問にジシェは黙ってうなずいた。
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