新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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浜町トゥインクルスパークル

浜町トゥインクルスパークル(6)

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 デッサが急接近してくる。
 リグナはビルの上に跳び上がり、デッサの攻撃を引きつける。
 頭上を再び光弾が乱れ飛ぶ。

 モジャコはしびれたままの左腕を気遣った。

「助かったけど、リグナ、仕留めるチャンスだったんじゃないのかな……?」
「え……?」

 ハルは言葉を失った。

 確かに、直前に聞こえたのは、デッサがれきを払いのけるような音だった。
 ということは、リグナが吹っ飛ばし、そこまで追い込んでいたことになる。

(本当なら追いつめることができたのに、リグナはモジャコを救ってくれた……?)


 低いビルを跳び移り、リグナとデッサは交戦しながら、はまちょう公園の方向へ移動していく。

 デッサが放つ光弾は、ほとんどリグナを捕らえることができない。
 たまに当たりそうになっても、リグナは受け流して角度を変える。

 そのまま、リグナはデッサに急激に迫った。

 見えない何かに阻まれ、弾き返される。
 瞬間的に現れた鏡面が周囲の風景を反射する。

 デッサはライフルを戻し、ロットランチャーを肩に担いだ。

 何とか地面に着地したリグナは、向かってきた光弾を不十分な体勢から蹴り返した。
 背後には——驚いた母親と男の子が立ちすくんでいた。

(守った……?)

 ——わからない。

 それさえ、だますための演技かもしれない。
 半世紀前、オーラによって救われた——だから、ハルたちを助けているのだとしても、その言葉が真実であるという証はどこにもない。
 味方であると確かに言い切れる根拠がまったくない。

 だけど——。

 いま目の前で必死に闘うリグナに嘘があるとは思えない。

 すべてはあざむくためのことなのか?
 わからない——わからないけれど。

 気合いを込めるように、ハルは両手で自分の頬を叩いた。

(信じられずに後悔するくらいなら、だまされあざむかれて後悔したほうがいい)

 裏の裏を考えてもまだ裏はあるのかもしれない。
 そんなことをウダウダと考えて足踏みをしているくらいなら、さっさと走りはじめたほうがマシだ。
 
 それに——。


 リグナを信じたい。


 ——これだけは嘘偽りのない本当の気持ちだ。

 ハルはモジャコに3枚のカードを見せた。

「これをリグナちゃんの背中にあるコンソールにセットしてくれる?」
「わかった」

 何も聞き返さずにモジャコは受け取った。

「だけど、けっこう難しいね。リグナにこっちの意図を知らせたいけど、デッサには知られたくない。どうする——?」
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