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広尾デリヴァランス
広尾デリヴァランス(1)
しおりを挟む4. 広尾デリヴァランス
モジャコは左手のグーを右手に叩きつけた。
「セキュリティ解除コード……どうやら核心に近づいてきたみたいじゃん」
「ふふっ! まさにそのとおり!」
「……!」
振り返れば、いつの間にかコルヴェナが背後に立っていた。
——生乾きの状態で。
ローズレッドの制服からも縦巻きロールの髪からも水が滴り落ちていた……。
濡れたままの左腕を伸ばして、ばばん、とモジャコに指を突きつける。
「今度こそチェックメイトね、モヨコさん!!」
(微妙に名前覚えてもらえた)
(めげないなあ……)
と、ハルは、スマホの画面の中で、地図の範囲が自動で変わっていることに気がついた。
(次の場所だ……)
「さあ、張り切っていきましょうね!!」
コルヴェナは突っ込んできた。
モジャコは体勢を整える——が、予想に反し、コルヴェナはモジャコの間合いを擦り抜けた。
「え……あ! しまった!!」
モジャコはすぐに意図を理解したが——遅い。
コルヴェナはハルに向かって脚を振り上げた。
「きゃっ!」
ハルは身をすくめることしかできない。
コルヴェナのハイキックはハルの手をかすめ、スマホとメモリーカードは空中に舞った。
同時に——鈍い金属音が響いたかと思えば、高速で向かってきたデッサのパンチをリグナが両手で受け止めていた。
装甲が焼け焦げたように黒ずんでいる以外、デッサに特段の異常はないようだ。
ただ、心なしか目が血走っているようにも見えた。
2人はそのまま建物の上へ跳び上がった。
コルヴェナは、空中でスマホとメモリーカードをキャッチした。
「ずばり策士! アイルを完成させるためなら手段を選ばず!」
得意満面——だったのだが、その表情はあからさまにフリーズした。
何か口を滑らせたらしい。
「い、いまのはナシで!!」
(アイル?)
攻撃の手を休めないままにモジャコは反芻した。
コルヴェナはモジャコの攻撃を躱しながら雑踏の中を逃げていく。
公園へ続く狭い通りだ。
「速力アップで逃げ切らせてもらうわ!」
(だからいわなきゃいいのに)
半透明のガントレットとブーツが右腕と左脚に実体化し、ブーツは紅い電撃をまとって火花を——散らさない。
「ええっ!? なんで!?」
(水没したからだろ……)
コルヴェナの動きが一瞬もたつく。すかさずモジャコは前へ出た。
「ふふん! この剛腕のガントレットに敵うと思って——って、あらら!?」
(それはリグナに破壊された)
モジャコは遠慮なく腕をとってコルヴェナを投げ飛ばした。
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